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9社から23億5000万円の資金調達 QPS研究所


地球観測用小型衛星の開発向けに

九州大学発のベンチャー企業で、同大学の研究成果をもとに小型人工衛星の研究開発を手掛ける㈱QPS研究所(福岡市中央区天神5丁目、大西俊輔社長、以下QPS)は11月6日、第三者割当増資として、官民出資の投資ファンド㈱産業革新機構(東京都、勝又幹英社長)など9社から総額23億5000万円の資金を調達した。

主に同社が製造する地球観測用小型衛星の開発と、その打ち上げを含めた研究開発費に充てられる。今回出資した法人は産業革新機構のほか、ドーガン・ベータ、未来創世ファンド、リアルテックファンド、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、大分ベンチャーキャピタル。

QPSは九大が担っている小型衛星開発技術の実用化を目指して05年に創業。これまで九大や千葉大学などの宇宙研究機関向けに、地球観測で用いられる「超小型汎用人工衛星」の開発支援や、「小型衛星先端環境災害設備」の開発、製造などを手掛けてきた。

同社は昨冬、地球観測用小型衛星「SAR(サー)衛星」の開発に成功。従来のカメラではなく、レーダーを使い天候や昼夜関係なく宇宙から地上の撮影が可能となり、災害時の状況把握や、その際の人の動きなどのデータ分析が現状より細かく実現できるようになるという。この衛星は宇宙から展開するときにアンテナが開くと、独自の技術で傘のようにアンテナが開き直径3・6mとなるが、重量を世界で初めて100kg以下に抑え、製造費も1機1億円台と大型衛星の100分の1までコスト削減を実現した。今後QPSは20年までに2機の打ち上げを計画し、24年までに地球上のほぼ全地点を10分以内に観測できるとされる36機の衛星を飛ばすのが目標だという。どの国のロケットを使用するかは未定。

同社は2005年6月創業。昨年4月に法人化した。資本金550万円。従業員8人。

2017年11月14日発行