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5月金融経済概況「緩やかに回復」 日本銀行福岡支店


週刊経済2024年5月29日発行号

景気判断、前月から据え置き

日本銀行福岡支店(福岡市中央区天神4丁目、大山慎介支店長)は5月21日、九州・沖縄の金融経済概況(5月)を発表した。景気全体の判断は「一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している」として、2カ月連続で判断を据え置いた。
需要項目別の景気判断も、全項目が前月から据え置き。個人消費は、百貨店売上高でインバウンド客の増加が見られた一方で国内客の需要がやや落ち着いたものの、高額品や化粧品を中心に堅調な需要が継続していること、スーパーで物価上昇による買い上げ点数減少などが続く中でも、主力の食料品を中心に底堅く推移していること。乗用車については、一部メーカーの認証不正問題を受けた工場稼働停止の影響もあり、登録台数減少が継続したが、3月比では改善したことなどを踏まえ、個人消費全体では「物価上昇などの影響を受けつつも、堅調に推移している」と判断した。個人消費関連のうち旅行・観光については、特に海外旅行で物価・燃料高や円安の進行などを背景に需要に一服感が見られたことから、前月までの「増加している」から「ペースは鈍化しているが、増加している」と判断を引き下げた。生産(鉱工業生産)については「このところ弱めの動きとなっている」という判断を据え置いたが、生産水準引き上げの動きが見られる汎用・生産用・業務用機械は判断を引き上げた。
大山支店長は、全体判断について「マクロ的に見ると、企業ではコスト上昇分を販売価格に転嫁しつつも、数量が一定程度確保されており、好調な収益となっている。家計消費についても、将来の所得増加への期待感が下支えとなり、全体としては堅調な動き」と見ており、先行きについては「直近で判断を変更するほどではないが、家計の支出行動の勢いに陰りが見られる。6~7月以降、ベアが大部分の給与に反映されるので、そこで実質賃金がプラスとなるが、円安のさらなる進行など下振れのリスクも排除できない」と話した。設備投資については「建築物着工床面積や工事費予定額が、短観を含めた各種アンケートの結果に比べてやや弱い動きとなっているが、機械投資やソフトウエア投資、既存の建屋を利用した能力増強投資など統計に反映されない動きがあることや、人手不足で着工に遅れが生じている点が統計とのかい離を生んでいる」と分析。「人手不足への対応は喫緊の課題となっており、基本的には高水準の設備投資が続く可能性が高い。また、半導体関連の能増投資は24年度の設備投資計画をけん引するエンジンの一つなので、関連事業者の受注動向には引き続き注目していきたい」と話した。