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3号タンクの必要性強調、「収支合えば迷わず実行」 西部ガスホールディングス


週刊経済2024年8月7日発行号

加藤新社長インタビュー抜粋

4月に就任した、西部ガスホールディングス㈱(福岡市博多区千代)の加藤卓二社長は、本誌9月号「地場主要企業トップインタビュー」で就任の抱負や目標、今後の大型設備投資への意気込みなどを語った。以下、インタビューを抜粋。
―4月1日付で社長に就任した。これまで社長業に当たられての感想は。
加藤 挨拶回りをはじめ、来客対応、打ち合わせ、社内コミュニケーションの活性化など、こなすべきタスクが膨大で頭も体も自転車操業状態だった。目先の仕事への対応を優先し、中長期的な視野が狭くなる「計画のグレシャム化」に陥らないように注意してはいるが、かなり苦戦している。それでも、どうにか一つ一つ、目の前の課題をクリアしてこられたので、そろそろ時間管理と運用の質を「スピードアップ、ブラッシュアップ、アップデート」していきたい。道永会長からは「肩の力を抜け」「俺がどう思うかなど考えずに動け」など、私が煮詰まった時などベストタイミングで声掛けしていただき、とても感謝している。
―改めて、新社長としての抱負や目標は。
加藤 多角化と事業拡大を目指し、ガスエネルギー事業以外に少し強めに当てていたスポットを、やや原点回帰して、ガスエネルギー事業の競争力を強化したいと考えている。そのうえで、グループ経営の成長ドライバーと位置付けている「不動産事業」「電力事業」に成長投資を継続していくつもり。この二つの事業を収益の柱に育てつつ、コロナ禍を脱した「食関連事業」もM&Aの検討を進めるなど力を入れ、さらにはBtoC事業である「住まい、生活、健康、介護」の領域からもう一本、収益の柱を立ち上げられると、より安定感が増すだろうとイメージしている。
―社長就任以降、刷新した部分は。
加藤 社員とのコミュニケーションの面は特に重視し、新たな試みを始めている。社長の考えや会社の方向性や情報を正しく伝えたいという思いから、グループ報WEBサイト「卓二の部屋」(社内イントラ)を開設した。また、西部ガスグループ会社間の「つながり」をより強固にするため、北九州、熊本、長崎、佐世保の4地区にて、地域の交流組織「繋がりの会」を発足した。さらに、先日開催した社員と直接意見を交わす「対話集会」では約1千人の社員が参加したほか、常務執行役員以上が参加する「役員研修・役員合宿」も開催するなど、階層別に経営トップとしての想いや将来ビジョンを自らの口で伝える場を設けてきた。
―就任後に打ち出した、ひびきLNG基地の「3号タンクの増設」を含むガスインフラの検討状況は。
加藤 まさに、グループの存続を賭けた検討であり、人口・世帯減少等による市場の収縮が顕著になる前に、もう一段ガス需要を持ち上げることで、減少幅を緩やかにしたいという狙いがある。2026年にはひびき火力発電所への天然ガス供給も始まり、今の設備のままでは早晩需要拡大ができなくなる。タンク増設により、安価で安定的なLNG調達戦略の展開、海外産出国を含めた不測の事態への備え、ひびき基地の弾力運用、配船の円滑化、シェールガス受け入れやe‐メタンを視野に入れた将来への布石など、多くのメリットが挙げられる。
これが実現すれば、私が掲げた「ガスエネルギー事業への原点回帰」を象徴する事業となるだけでなく、今まで私たちが諦めていた分野の需要開拓の足掛かりとなるはず。収支バランスを見て、シミュレーションが水面下であれば見送る可能性もありますが、水面上に浮上すれば、迷わず実行していく気構えでいる。