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行政課題の解決にDX積極活用 直方市の大塚市長
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週刊経済2022年6月7日発行
先進技術活用の中小企業支援など
1期目最終年度を迎える直方市の大塚進弘市長はこのほど、ふくおか経済インタビューに応じ、「コロナ禍で思うように動けなかった面は少なからずあった」としながらも、直面するさまざまな行政課題の解決策として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、IoTによる先進技術を活用した企業支援などに取り組み、「市民所得の向上に向けた施策をしっかりと進めてきた」と話した。
―1期目最終年度を迎えているが、これまでを振り返って。
大塚 コロナ禍で思うように動けなかった面は少なからずあった。ただ、そうはいっても、直面する課題解決にはしっかり取り組まなければならず、可能な限り市内外の方々と新しいネットワークを作ることに腐心し、精いっぱい頑張ってきた。その結果、九州大学をはじめ、いろんな機関とのコネクションを得ることができた点は良かった。
ご承知のように福岡都市圏に比べると、減少のスピードは加速化しており、抜本的な施策を打ち出す必要性を感じていた。出生率高めて少子化にストップをかけるかという施策と同時に、地元で学んだ学生が地元で就労する。あるいは進学や就職で市外に転出した若い世代がUターンやJターンで地元に戻り、結婚して家族を作り、安心して子育てできる環境を整える必要がある。そのためには、魅力ある職場づくりが必要ということで、さまざまな施策を打ち出してきた。中でもIT関連産業を街中に持ってくる施策、あるいは既存の地場企業の高度化を支援することで、若い人たちの定着を目指す取り組みは、スピード感としては遅い面もあるが、着実に進めている。
一方で、行政サービスそのもののDXの推進にも力を入れてきた。本市では昨年4月にDX推進本部を発足し、一般社団法人・日本デジタルトランスフォーメーション推進協議会の森戸裕一代表理事を最高情報責任者(CIO)補佐官兼広報戦略監に任命し、他の自治体に比べて周回遅れの現状を挽回しようと全力で取り組んでいる。コロナ禍でDXが加速する中、行政内部、あるいは市民サービスでデジタル化を進めているが、同時にDXのプラットホームを通じ、外部に発信することによって、市全体の情報化に対するプレゼンスの向上にも努めている。
―市内に本社を置く地場中小製造業の支援について。
大塚 就任直後から「成果を出さなければいけない」という思いで取り組んでいる。例えば市内の中小製造業の生産性向上を支援する施策としては、北九州に本社を置く安川電機㈱の津田会長や小笠原社長とも意見交換しながら、全国の中小企業のモデル工場になれるようなケースを作ることに力を入れてきた。コロナ禍で企業の売り上げが落ちるなど逆風が吹いている状況だが、先進的なIT技術の急速な進展による産業構造、および社会構造の変革に対応することを目的とした実証実験に取り組んだ。例えば20年度は、直方精機㈱で製造現場の工作機械にIoTを実装することで、作業効率向上を検証する事業、風力発電の機械などを手掛ける㈱石橋製作所では、データ通信を活用することで作業日報や収集にデータ通信を活用し、省力化を図るシステムの構築に取り組んだ。21年度については、㈱サイバネテックによる特定省力無線機を用いた車内幼児置き去り検知システム、㈱エバー・ウィステリアによる地域内のSNSを活用したマーケティング実験をはじめ、アドバンテック㈱によるAIやIoT基盤などの先進技術を活用した農作物の自動化プロジェクトなども実施している。従来のものづくり企業における生産性向上は、市内企業における競争力強化につながることが期待できるほか、コロナ禍を新たなビジネスチャンスととらえ、先進IT技術を活用した取り組みに積極的な企業の存在は、市内に新しい産業の芽を起こすという意味では大きな意義があると確信している。
―新産業団地の整備についてはどうか。
大塚 企業の受け皿となる産業団地が市内にまったくない実情を踏まえ、企業からのリクエストがあったときに、開発可能な土地をリストアップし、斡旋できるよう準備に努めてきた。しかし、抜本的な解決策にならなかったことから、隣接する鞍手町と連携し、県の事業として直方・鞍手新産業団地を今年1月に着手しました。折しも国の産業政策では、「デジタル田園都市」の実現、カーボンニュートラルの実現、国土強靭化・経済安全保障などの観点から、地方都市にデータセンターを配置する方針を示しているほか、福岡県も台湾の半導体関連企業・TSMCが熊本県に進出することを踏まえ、半導体関連産業の誘致・集積に向けた産業団地の造成に前向きな姿勢を示しており、良いタイミングだった。
―最後に人口減少対策と移住・定住促進について。
大塚 今回のコロナ禍を機に、婚姻件数や離婚件数のデータに着目したが、コロナ禍以降、出生数や婚姻数は減少基調が続いている。従って、このエリアで子育てしやすい状況を作っていくのかという行政課題は、県内どの市町村でも共通の命題ではないか。本市の出生率は県平均よりも高いとは思うが、いわゆる置換率でいう2・07に近づけるには至難の業だ。ただ、少しでも近づくための子育て支援策を打っていく必要がある。特に本市と縁が薄いIターンやJターンを増やしていくために何が必要なのかという点が重要。ある企業の人と話しているときに、住む地域を選ぶポイントが話題に挙がったが、幼稚園や保育園のレベルの問題に始まって、小中学校や高校のレベルといった教育水準を問われる点が大きいと感じた。特に子育て世代の親御さんも、教育水準を重視されている。こうした点を重視し、就学前教育の充実などに力を入れている。