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糸島市に先端半導体の研究施設2棟を着工  福岡県    総事業費は約44億円


 福岡県は世界をリードする先端半導体の開発拠点構築を目指す「シリコンシーベルト福岡プロジェクト」の一環として8月22日、糸島リサーチパーク(糸島市大字東)内に実装・試作拠点の「半導体先端実装研究センター(仮称)」と実証・評価拠点の「先端社会システム実証研究センター(仮称)」を着工する。総事業費は約44億円。完成予定は来年3月。
 2000年度に開始した同プロジェクトでは、04年に設計開発と人材育成の拠点「福岡システムLSI総合開発センター」(福岡市早良区)を開設。共同研究開発、企業技術者育成、ベンチャー企業支援、国内外との交流・連携を4本柱に総合的な取り組みを進め、現在では先端半導体関連企業211社が集積し、プロジェクト開始時の10倍と拠点化が進展していた。両センターが完成すれば、先端半導体の設計から実装・試作、実証実験・評価までを一貫して総合的に支援する国内初の体制が整う。今後、この支援体制を最大限に活用しながら、企業集積を促し先端半導体開発拠点の実現を目指す。
 半導体先端実装研究センターは先端半導体を用いた製品開発に向け、異種半導体の混載や多層化など高密度な三次元実装(積層化)の研究開発や試作などに取り組む。外部機関の機器利用も可能。総事業費は約30億円で、県が建物(約10億円)を整備、研究機器(約20億円)は独立行政法人科学技術振興機構が直接整備する。建物は2階建て延べ床面積3268平方m。部品内蔵基板試作ライン、クリーンルーム、各種評価室、実装設計室、共同研究員室、インキュベーションルームなどを設ける。
 先端社会システム実証研究センターは、先端システムLSI開発成果の製品化を加速するために、開発した先端半導体製品の評価・実証するための設備、ノウハウを提供する施設。総事業費は約14億円で、うち建物が約8億円、研究機器が約6億円。県が約5億円投じるほか、経済産業省の「産業技術研究開発施設整備費補助金」から約9億円の補助を受ける。建物は3階建て延べ床面積2516平方m。サーバー室や電波強度測定室、ネットワーク関連機器開発・評価・解析室、組み込みソフト開発室、インキュベーションルーム(研究開発ラボ)、セミナー室などを設ける。
 半導体の高集積化を図るには、半導体回路線幅などを微細化し、二次元的に高密化を図る方法と、複数の半導体を三次元的に実装(積層化)する方法の大きく2つの方法がある。二次元的な手法は、巨額の開発投資を必要とし、大きなリスクがあることから、世界でも限られた大企業でしか行うことができないといい、半導体先端実装研究センターでは、もう一つの半導体を三次元に実装(積層化)する技術の研究開発に取り組む。
 また、半導体は携帯電話やICカードを用いた電子マネーや社会保障カード構想などに代表されるように、新しい社会システムやサービスの構築に不可欠な存在となっている。先端社会システム実証研究センターでは、同プロジェクトなどで開発した先端半導体を用いた成果品と社会ニーズとの摺り合わせや堀り起こしを行う社会実証実験と、その結果の検証・評価を支援することで、新しい社会システムや社会ニーズに即した製品化を促進する。