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移住促進、雇用環境改善で社会動態をプラスに  北九州市・北橋市長


旦過市場改修工事へ着工

北九州市の北橋健治市長は、ふくおか経済1月号の新年抱負インタビューで「コロナの印象が強い1年だったが、経済面では北九州市が長年追い求めてきた大きなプロジェクトが複数動きはじめた」などと経済面での一定の成果を振り返る。2021年は10月に世界体操競技、新体操選手権が市内で開催され、旦過市場の工事も年度内にスタートすることから「コロナ禍のピンチをチャンスに」と強調する。主な内容は次の通り。

―2020年を振り返って。

北橋 本来であれば「東アジア文化都市事業」などのイベント開催による多くの来訪者でにぎわうはずだったが、新型コロナウイルスという初めて経験する危機と向き合う1年に。世界中が大変な危機に直面しているが、北九州市でもコロナに打ち勝つため、地元各界で知恵を絞って頑張っていると感じている。  コロナの感染拡大でリモートワークが普及するなど、国内全体で働き方が変化した。その流れで、若者を中心に多くの人が地方へ目を向けるようになり、日本全体を見ても、東京から地方への移住が増加傾向にある。また、企業側もBCPの観点で地方に拠点を移す動きも広がったのでは。こうした世の中の変化に対し、北九州市はコロナ禍というピンチを移住促進、企業誘致の機運向上のチャンスに変えたい。

―長年進めてきた計画の状況は。

北橋 コロナの印象が強い1年だったが、経済面では北九州市が長年追い求めてきた大きなプロジェクトが複数動きはじめた。  北九州空港では、貨物拠点化空港としてさらに発展させるため、大型貨物専用機の長距離運航が可能となる2500mから3千mに延長する計画を進め、昨年は国から実現に向けた「調査費」が計上されることに。地方の国管理空港の滑走路延長が検討されるのは10数年振りで画期的な出来事。検討協議会も始まり、実現に向けて大きく前進した1年だった。

昨年5月には、北九州空港と韓国・仁川空港を結ぶ大韓航空の国際貨物定期路線が片道便から往復便に拡充された。これは、北九州空港が24時間使用できる空港という印象、評価が広がってきている証拠だと思う。便数拡充によって、アジア最大の仁川空港を経由する輸出入双方での利用が可能となるなど、海外と取引する際は、成田・関西空港以外にも北九州空港を選択できるという魅力が増した大きな出来事だと捉えている。

航空業界において、旅客は世界中で落ち込んでいるが、貨物需要は増えている。北九州空港の2019年国際航空貨物量は過去最高だったが、20年はそれを上回るペースだった。

―洋上風力発電事業の進ちょくは。

北橋 若松区の響灘東地区で整備している、主に洋上風車の積出拠点機能を担う港湾施設が、9月に国土交通大臣から港湾法に基づく「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)」に指定された。北九州港は西日本で唯一の基地港湾になる。この基地港湾の最初の利用者となる響灘洋上ウインドファーム事業は、2022年にも洋上風力発電の設置に向け着工する計画で、現在は環境アセスメントなど、風力発電所建設に向けた準備を進めている。

菅義偉首相が所信表明演説で国内の温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロを目指す方針を掲げたが、市でも20年に「ゼロ・カーボン(炭素)宣言」を出した。産業界にとってハードルの高い目標だが、力を入れている再生可能エネルギー等の活用、新たな環境技術開発によってこれから30年間、各産業と一体となりゼロ・カーボンを目指したい。

―移住促進、若者流出阻止へ今後の方針は。

北橋 市内への移住者、若者の定住者を増やすため、いかにその地域に自分のやりたい仕事があるかが重要だと考えている。特に市内の学生に行ったアンケート調査によると、IT企業への就職を希望する学生が多く、卒業後も市内に残って就職できる雇用環境づくりを目指している。  そこで力を入れるのが、IT企業を中心とした企業誘致です。中でも、ハード面の対策として、小倉駅前の商業施設・アイム(4月1日から「セントシティ」に名称変更)の活用を進める。19年2月のアイム内「コレット」閉館から大規模改装を順次手掛てきたが、これまでのショッピング需要を核とした施設からオフィス機能を持たせた複合施設への転換を図っており、主にIT企業の受け皿となる仕様に改修を進めている。  今年2月以降、オフィステナントとして、BPO事業、CRM事業に関するコンサルティングなどを手掛ける㈱マックスコム(東京都)のコールセンターや、コワーキングスペース事業を企画、運営する㈱アトミカ(宮崎市)のコワーキングスペースが入居予定。

―創業支援の状況は。

北橋 近年、「ファビット」や「コンパス小倉」といったコワーキングスペース、創業支援施設などを整備し、市内における創業への機運が高まってきた。昨年7月にはこれまでのスタートアップ企業の創出、育成への取り組みが評価され、内閣府の「スタートアップ・エコシステム推進拠点都市」に北九州市が選定された。今後も起業家たちがチャレンジしやすい環境を整えていきたい。

―若者を中心とした人口流出に歯止めが効きそうか。

北橋 長年の課題である人口減少の要因である転入と転出の差、いわゆる「社会動態」の減少は改善しており、プラスへあともう一歩のところまできている。企業誘致や創業支援で学生、若者たちに振り向いていただけるような環境をさらに作っていく必要があり、今後はより具体的な取り組みを進める。

―旦過市場の「土地区画整理事業最終計画案」がまとまった。

北橋 2度の浸水被害や老朽化を機に検討が始まり、数十年にもおよぶ約110店舗の商店主、地権者との協議がまとまり、いよいよ動き出す。市場横を流れる神嶽(かんたけ)川の改修工事も進める計画で、現在商売をしている人への配慮や、大正時代から続く古き良き時代の雰囲気を残しながら、年明けにも国の正式な認可を受け、2021年度中に着工、27年度の完成を目指す。

市場の建て替えで敷地の一部分に整備する複合商業施設には第一交通産業㈱と西部ガス㈱のJVが参入に名乗り上げた。地元と2社が一緒に4階建ての複合商業施設を運営する。1階は主に現商店が入居し、2階は商業フロアとして2社が飲食店を集め、新たなにぎわい創出を目指す。

―2021年、北九州市として力を入れたいことは。

北橋 まずは、新型コロナウイルス収束に向けた対策が大前提と考えている。徹底した対策をした上で、さまざまな取り組みを進める。今年10月には市内で「世界体操競技選手権」と「世界新体操選手権」を開催。両大会がひとつの都市で開催されるのは史上初の試み。世界から注目される大会であり、これだけの大規模国際スポーツ大会が北九州市で開かれるのは大変名誉なこと。大会成功に向けて全力で取り組んでいく。

2020年12月29日2021年1月5日発行