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福岡城天守閣復元、「復元的整備」に活路 福岡商工会議所
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週刊経済2024年4月3日発行号
山中元文部科学事務次官ら集い懇談会
福岡商工会議所(福岡市博多区博多駅前、谷川浩道会頭)は3月5日、同会議所ビルで「福岡城天守の復元的整備を考える懇談会」を開催した。
従来から「難しい」と言われてきた福岡城天守の復元に向けた方策を探るための懇親会で、同会議所を中心とする「歴史・文化を活かしたまちづくり懇談会」は昨年9月、「『福岡・博多の歴史・文化を活かしたまちづくり』に関する15の提言」を公表し、その中で「『福岡城』天守復元の早急な検討を」という項目を設けていた。座長を元文部科学事務次官の山中伸一角川ドワンゴ学園理事長が務め、座長代理は「歴史・文化を活かしたまちづくり懇談会」座長の川原正孝副会頭が務めた。そのほか、福岡城に関する研究等で実績を持つ有識者などが一堂に会し、「天守閣」の復元に向けた活発な議論を交わした。
会の冒頭では、福岡城跡における復元の実現可能性などについて、詳細に説明がなされた。まず、「天守閣の存在」に関する根拠について、考古学的視点から見ると、天守台及び40個の礎石が確認されているが、これまで本格的な天守の発掘調査はされていないため、詳細は不明という状況。文献学的視点からは、黒田家の公式記録に天守に関する記載がないことはじめ、天守に関する地図、写真、模型なども正確には確認されていない。幕府の命令で藩が出した資料にも描かれていない等、「あった」とされる根拠が非常に乏しいのが実情。2014年に策定された「福岡城跡整備基本計画」によると、事業計画2014年度から15年間と定められ、最終年度まであと5年間が残っている状況ながら、天守については将来的にも復元の対象に定められていない。復元可能性の分類では「復元が極めて困難」とされている。
一方で、近年は新たな天守閣に関わる史料の存在も確認されている。黒田長政が家老宛に天守の棟上げを催促している書簡や、他藩の密偵が描いたとされるスケッチの中で確認できる天守の存在。また細川藩が保管してきた往復書簡の中にも、天守に関わる記述があるという。さらに、その形状を示す史料として、「天守閣の模型発見」という記事が大正11年、九州日報に大きく写真付きで掲載されている。
同会で天守閣を現代によみがえらせる手法のキーとして取り上げられたのが、文化庁が示した新たな基準「復元的整備」。2020年には、文化庁により「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」が示され、その中に「復元的整備」という基準が登場。「今は失われて原位置に存在しないが、当該史跡等の本質的価値を構成する要素として特定された歴史時代の建築物、その他の工作物を、遺跡の直上に再現する行為」と定義されている。さらに掘り下げると、「往時の歴史的建造物の規模、材料、内部・外部の意匠・構造等の一部について、学術的な調査を尽くしても史資料が十分に揃わない場合に、それらを多角的に検証して再現することで、史跡等全体の保存及び活用を推進する行為」も、復元的整備に該当するとされている。この「史資料が十分に揃わない場合に、それらを多角的に検証して再現する」ことを認めている文言が、史料の少ない福岡城天守閣にとって必要だった、国の「条件緩和」であると言える。
今後、同懇談会のメンバーをはじめとする地元有志は、この「復元的整備」を切り口に、全国からいち早く天守閣「再現」への道筋をつけ、「福岡モデル」を確立させていく構えを見せている。山中座長は「アジアの結節拠点・福岡を象徴する事業として、この天守閣の復元議論が進んでいってほしい」と期待を込め、川原座長代理は「天守復元のハードルが高いのは重々承知。前例にとらわれず、どうすれば課題を克服できるかを考え、全国の先進事例となる『福岡モデル』を作り上げていきたい」と天守閣復元に向けた意気込みを語った。