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環境の変化に合わせたソリューション提案をスピーディに 西日本FH・村上社長


週刊経済2023年12月19日発行号

11月に新本店ビルを着工

㈱西日本フィナンシャルホールディングス(福岡市博多区博多駅前1丁目)の村上英之社長は、ふくおか経済新年号インタビューに応じ、2023年について、「世界経済全体は減速した一方で、日本経済は緩やかな回復傾向だった」とした上で、4月にスタートした新中期経営計画については「滑り出しとしては企図した方向に進んでいると感じている」と述べた。主なやり取りは次の通り。
―23年を振り返って。
村上 地政学的なリスクが顕在化し、世界的に不透明感が強まった。経済を見ると、米国では引き締め的な金融政策が継続する中、想定以上に強かった実体経済にも、一部弱目の指標が見え始めた。欧州は景気の減速が明らかになり、中国は不動産セクターの不況が長期化するなど、各国や地域ではバラツキが見られ、世界経済全体は減速した。一方、日本はペントアップ需要の顕在化やインバウンドの回復を受けた個人消費に加え、生産や設備投資の回復もあいまって、緩やかな回復基調が続いた。中でも九州は半導体関連御設備投資や部品の供給制約が緩和された自動車の生産回復、各県における中心都市での再開発もあり、特に活況を呈している。
―4月に新中期経営計画がスタートした。
村上 まだ始まったばかりで、評価には早いと思うが、滑り出しとしては企図した方向に進んでいると感じている。中間決算時点で貸出金残高の伸びや、注力している法人向け手数料については良い結果を残せている。
―そのほか、実績が出ているものは。
村上 現中計の大きなテーマは、お客さまとの接点を強化し、グループが持つ多様なソリューション機能をいかに提供していくかという「リレーションシップ・マネジメントの強化」。さまざまな施策を進めている中、現時点で効果が大きいのは営業店に対する本部のサポート体制を強化したこと。営業店からの相談件数は法人分野で5倍、個人分野では3倍まで顕著に伸びている。
―10月には福岡市西区に伊都支店をオープンした。
村上 九大学研都市周辺での初の銀行出店であり、かつ西日本シティ銀行創立初の新規出店となる。九大学研都市駅の開業や九大伊都キャンパス移転などの影響で、現役世代を中心に人口が増加している地域であるため、出店を決定した。中計に掲げた「コンサルティング中心の場」として、相談ブースを5つ設定するなど、お客さま一人ひとりに、最適なソリューションをヒューマンタッチで提供していきたい。また、大学発ベンチャーの支援や九大生向けの金融リテラシー教育などに取り組むとともに、支店内には九大コーナーなども設置し、地域のみなさんに大学に関する情報を発信していきたい。
―博多駅前に建設する新本店ビルについて。
村上 11月17日に起工式を実施した。計画を公表したのが19年12月だったので、4年をかけてここまでこぎつけることができた。竣工は26年1月。新本店ビルは、地上14階、地下4階建てで、延べ床面積は約7万5千㎡。旧本店ビルに比べて、約2・9倍の広さ。また、地上で500㎡、地下で300㎡の大規模立体広場・コネクティッドコアを設け、来街者の方々の回遊性向上にもつなげていきたい。
―九州・福岡の地域経済をどのように見ているか。
村上 「天神ビッグバン」、「博多コネクティッド」など大規模開発の進展や半導体産業の集積、インバウンドの本格回復などにより、引き続き活気のある1年になるとみている。一方で、原材料価格高騰や人手不足が与える影響など不確実性が高まっている点には留意が必要になってくる。
―熊本に進出する台湾のTSMCをはじめ、半導体関連の話題は特に注目されている。金融機関としてのメリットは。
村上 新工場建設や生産ライン増強などに伴う設備投資をはじめ、生産が拡大すれば運転資金なども必要になるため、資金需要としては大きなプラスになると期待している。これまで内部留保が厚い企業が多いこともあり、銀行の融資にはなかなかつながっていなかったが、足元では大手の設備投資に対する意欲が地場の中小企業にも波及しつつある。建設コスト上昇や人手不足といった懸念材料はあるものの、資金需要のニーズは高まっていくと見ているし、しっかり応えていきたい。
―24年はどのような1年でありたいと思っているか。
村上 何よりも地政学的な緊張が落ち着いてほしいと願っている。人道的見地はもちろん、経済的にも、資源や穀物価格の高騰が収束の方向に向かい、世界的なインフレが落ち着く流れになってほしい。また、24年は日米の金融政策が変更される可能性が高まっている。金融政策の変更は、金利はもちろん、為替レート水準などお客さまに与える影響も大きい。市場の動向を注視しながら、環境の変化に合わせたソリューション提案をスピーディに展開していきたい。