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林田社長「新領域事業を50年先のプレゼントに」 西日本鉄道


週刊経済2023年4月25日発行

「表紙の人」インタビュー抜粋

西日本鉄道㈱(福岡市博多区博多駅前)の林田浩一社長は、本誌5月号「表紙の人」の取材に応え、今年度から始動した新中期経営計画の重点戦略や、新領域事業の開拓に向けた思いを語った。以下、インタビューを抜粋。
―社長就任から丸2年が経った。
林田 1年目はコロナ禍の真っただ中ということもあり、全く気持ちに余裕がなかったが、2年目に入ると社長業の感覚が掴めてきた。昨年秋に発表した長期ビジョンは、ある意味では私の施政方針演説のようなものと位置付け、私の考えるグループ像や目指すべき方向性をしっかり詰め込めたと思う。その後に策定した第16次中期経営計画も、ポストコロナ社会でグループが成長軌道に乗っていくために必要なシナリオを、描くことができた。
―新中期経営計画のポイントは。
林田 計画のテーマは「サステナブルな成長への挑戦」。重点戦略として「構造改革の継続と事業基盤の整備・再構築」、「持続可能で活力あるまちづくりの推進」、「成長事業の拡充と新たな稼ぐ力の創出」、「サステナブル経営の強化」、「安全あんしんの追求」という5つの柱を設けた。
数値計画としては、2025年度の連結営業収益5千億円(23年3月期見込みは4975億円)、同事業利益は250億円(同230億円)を目指していく。また3カ年の投資総額は約3296億円を見込んでおり、そのうち設備投資の総額は1723億円の見込み。多くは成長投資(1148億円)に振り向ける見通しで、その内訳では不動産業への投資(849億円)が大部分を占める計画。
―重点施策を幾つかピックアップすると。
林田 「持続可能で活力あるまちづくりの推進」は都市開発事業の戦略で、まず天神のまちづくりが大きなテーマとなる。中でも現在進行中の福ビル街区建替えプロジェクトは、いよいよ25年春の開業まで2年を切った。今期は、商業・オフィス双方のリーシングやビルの運営体制の検討などを本格化させていくつもり。また、天神では福岡パルコや新天町商店街が立地するエリアの「(仮称)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」や、水鏡天満宮や西鉄イン福岡周辺の「(仮称)天神一丁目15・16番街区計画」にも参画している。市や地権者、他の事業者としっかり連携しながら、天神の発展に資する再開発を進めていきたい。
―「成長事業の拡充と新たな稼ぐ力の創出」については。
林田 これは今計画の大きなポイントになる戦略。既存事業に磨きをかけてさらなる成長事業へと発展させるための戦略が一つ、もう一つの大事な戦略が、新領域事業への挑戦。当社は運輸事業を主体に110年以上の歴史を持つ企業だが、コロナ禍で存在感を示した国際物流事業や不動産事業をはじめ、古くは50年以上前の先輩方が将来を見据えて立ち上げたグループ事業があったからこそ、ここまで成長してくることができた。我々も50年先の後輩たちへのプレゼントとして、新たな事業の種をまき、芽吹かせていかなければならない。
―どのような新規事業が出てきているのか。
林田 特に期待しているのが、再生可能エネルギーの電源開発事業。昨年4月に自然エネルギー発電事業を手掛ける自然電力㈱と合同で西鉄自然電力合同会社を設立し、グループ施設への再エネ設備の導入や遊休地に発電所を設けるなどの取り組みを進めている。2025年度までに30MWの再生可能エネルギー発電設備の完工を目指していく。また2015年からJA全農と共同で参入した農業事業で博多あまおうとトマトを生産しているが、さらに農産品目の拡大を目指していく考えで、新たに水産領域への進出も検討を進めている。そのほか、M&Aやアライアンスによる事業創出や、デジタルプラットフォームを活用した新規事業なども、積極的に模索していく。