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東アジア文化都市事業など今年も多数の大型イベント  北橋健治北九州市長


「SDGs」を都市成長のキーワードに

北九州市の北橋健治市長は、ふくおか経済新年号のインタビューに応じ、「門司港駅や小倉城のリニューアルなど再整備が複数完了し賑わいが増した」と2019年を振り返る。今年は「東アジア文化都市事業」の開催都市として、1年間文化を通じた交流拠点となる。北橋市長に新年の抱負を聞いた。
—2019年を振り返って。
北橋 北九州市都心部のにぎわい創出に手応えを感じた1年だった。中でも、JR門司港駅舎は約6年半におよぶ保存修理事業が完了し、連日多くの人でにぎわう観光名所に。天守閣再建60周年を迎えた小倉城は、天守閣内部の展示と内装を約30年ぶりに一新。流鏑馬などができる体験型の要素を取り入れ、集客機能を増強した。さらに広場には「しろテラス」という抹茶カフェを備えた観光案内施設をオープンし、ユニークベニューの会場としても活用してもらっている。11月に勝山公園で開いた九州初上陸の「平成中村座小倉城公演」は1カ月で約4万人を動員した。今後も小倉城を活用した観光コンテンツの創出を期待している。
—今年は東京オリンピック、パラリンピックの事前キャンプ地としての活動がある。
北橋 市民や子どもたちとアスリートの交流プログラムを組むことで、それぞれの大会レガシーを残したい。事前キャンプはオリンピックがタイとコロンビア、パラリンピックが、イギリスとドイツを受け入れ各国の選手たちをサポートする。
—日本、中国、韓国の文化交流を担う「東アジア文化都市事業」において、日本の開催都市としての役割が期待される。
北橋 3月28日の開幕式を皮切りに12月まで、「伝統文化」や「ART for SDGs」、「メディア芸術」、「文学」の4つの中心的事業を始め、国際音楽祭や障害者芸術祭、官民連携の企画など市内各所で多彩な文化芸術事業を開催する予定。締めは3カ国の文化大臣会合を北九州市で開催する予定となっている。
今年の「東アジア文化都市事業」は北九州市の事業でも大きな目玉となる。2020年は日本でスポーツが盛り上がる1年になりそうだが、本市は文化のオリンピアードでも盛り上げていく。
秋には、スイスの独立系シンクタンク・HORASIS(ホラシス)が北九州市でアジアミーティングを開催することで内定。これは、アジアの経済交流をテーマに2016年に始まった国際会議で、日本で初めて開かれる。中国やインド、東南アジアなどアジア地域の経営者や投資家らが集まり、環境技術やESG(環境・社会・企業統治)投資などについて話合われる。この会議を通じ環境分野での北九州市の取り組みを投資家などにアピールし、環境ビジネスにおいて新たな展開や、市内の環境関連企業の国際展開促進を支援したい。
—まちづくりでは、「北九州市民の台所」・旦過市場の区画整理事業に向け関係団体と協力協定を結び、再整備が始まる。
北橋 隣接する神獄川を含め、建物、河川の老朽化が長年の懸案でした。そこで、地元の方と何度も話し合いようやくソフト、ハード両面での協力協定を締結し、本格的に再整備を進めていくことになった。来年度には国から区画整理事業の認可を受け、2021年度から着工予定。区画整理完了は27年度を見込んでいるが、工事期間短縮の要望もあるので、調整しているところ。市場内には約110店舗があるが、工事期間中も営業が続けられるよう、地区内で段階的に整備する計画になる。デザインは真新しいものではなく、現在の市場の雰囲気をどのように残すべきか、市場の皆様が検討を続けている。
—そのほか、今後のまちづくり構想は。
北橋 門司港地域には、老朽化が進み、近い将来建て替えが必要な公共施設がある。公共施設のマネジメントのモデル事業として、門司港駅近くで市民ホール、図書館、区役所などを集約した複合公共施設の事業を推進している。また、九州旅客鉄道の旧本社建物が残っているが、民間の事業者ホテルとして活用する動きもあり、その場所を観光資源にしようという話しも出ている。
—2020年以降、北九州市をどのようなまちにしていきたいか。
北橋 北九州市が他の都市と比較して注目、評価されている点はやはり環境。まずは「環境SDGs」の世界トップランナーに成長することを目指す。そうすれば、まち全体で外部から相当な投資が見込めてくると思う。
SDGsは世界の投資や国づくりに大きな影響を与えており、その重要性は年々増しています。市民が暮らしやすいまちという意味でもありますので、市の経済成長の基盤にしたい。「東アジア文化都市2020北九州」開催で目いっぱいポテンシャルを発揮し、「エコ」と「アート」の2分野で都市の魅力を高め、社会増減をプラスにし、地方創生の成功モデル都市を目指す。
そして、経済成長や都市成長に直結する戦略を重点的に進める。これまで北九州市は地元のものづくり企業が近代化を牽引してきたが、ロボット化が進む昨今、今後はロボット分野でも安定した職場をどのように作っていくかが課題。その宿命を背負った都市でもあると考えている。

2020年1月7日発行