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旧大名小跡地事業の複合高層ビルが着工 積水ハウスや西日本鉄道など5社


総事業費は500億円

旧大名小学校跡地(福岡市中央区大名2丁目)の再開発を担う積水ハウス㈱(東京都、仲井嘉浩社長)や西日本鉄道㈱(福岡市博多区博多駅前3丁目、倉富純男社長)など5社(※)で組織する大名プロジェクト特定目的会社(藤本周二取締役)は7月8日、同地で建設する地上25階・地下1階建ての複合高層ビルを着工した。総事業費は約500億円。完成は2022年冬ごろの予定。建物の名称は未定。
国家戦略特区による航空法高さ制限などの規制緩和を活用し、民間ビル30棟の建て替えを目指す福岡市の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の一環。
ビッグバンで西のゲートとなる同地では、すでに南側を除いた土地で70年間の定期借地権を福岡市と交わしている。
同日は起工式と会見が開かれ、開発の詳細が明らかになった。建物は敷地面積約1万1900㎡、建築面積約5600㎡、延べ床面積は約9万400㎡(容積対象床面積約8万㎡)。ビルの高さは、制限緩和となる高さ115mに近い約111mになる計画。1、2階は商業フロアで、飲食店や国内初進出の商業店舗を誘致する。3階、5階から16階まではオフィス。総面積は約3万㎡で、1フロアの専有面積は九州最大級の約2500㎡と自由度の高い広さを確保するほか、高いBCP機能を備えることで、世界的なグローバル企業も呼び込めるハイグレードオフィスとして整備する。また、MICE機能も備える計画で、大規模国際会議などの誘致を目指すという。

中核に「ザ・リッツ・カールトン」

17階から24階には、米国の高級ホテル運営会社であるマリオット・インターナショナル(ビル・マリオット会長)のラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン」がオープンする。東京、大阪、京都に次ぐ国内7番目となる同ブランドのホテルは、九州で初めて。客室数は162室で、1部屋あたり50㎡の広さを誇り、6つのレストランやバー、ウェデング向けのチャペルやスパなど、多数のハイクオリティサービスを提供する。価格帯は未定。また、施設の外には約3000㎡の広場を設け、イベント、市民の防災拠点として活用する。
一方、敷地西側には地上11階建て「コミュニティ棟」を建設する。地域住民のための公民館、多目的空間のほか、創業支援施設やオフィス、保育施設、レジデンス機能を持たせるなどさまざまな人が交流できる施設になり、南側のえのき通りとの回遊性を高め、歩行者空間の魅力向上につなげたい考え。
供給開始後の経済波及効果は、初年度で約1500億円を見込み、施設内のオフィス空間では約3000人の雇用創出を想定している。
会見で仲井・積水ハウス社長は「当社としても大変誇らしいプロジェクトになる。オフィス棟ではベンチャービジネスの発信拠点、グローバル企業のアジア拠点の窓口になることを目指す。広場は周辺地域、市民、オフィスワーカー、インバウンドの人たちが交流できる空間にしたい」と意気込みを語った。
クレイグ・スミス・マリオット・インターナショナルアジア太平洋社長は「今年4月までにグループ全体で7000件を超える同社ブランドホテルが開業している。今年は世界で30件もの同社ブランドのラグジュアリーホテルが開業するが、多くはアジア太平洋地域で、アジア市場は同社グループ成長のキードライバーとなっている。中国からの観光客を中心にインバウンド客が増えている福岡でのザ・リッツ・カールトンの初進出は、アジア太平洋地域における経営戦略で重要な出来事で、ポテンシャルを感じている」とコメント。
高島宗一郎福岡市長は「国際的VIPが『リッツがあるなら、福岡で大きな国際会議をしよう』という流れが予測される。このプロジェクトは福岡の都市ブランド力を高めてくれる」と期待を込めた。
※2017年に福岡市の公募で計画を提案した5社で、積水ハウス、西日本鉄道のほか、西部瓦斯㈱(福岡市博多区千代1丁目、道永幸典社長)、㈱西日本新聞社(同市中央区天神1丁目、柴田建哉社長)、福岡商事㈱(同市大名2丁目、久保山英樹社長)

2019年7月17日発行