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新型コロナウイルス治療薬が国の事業に正式採択 県とボナック


週刊経済2021年5月18日発行

3年5ヵ月で50億円の支援

福岡県とバイオベンチャー・㈱ボナック(久留米市、林宏剛社長)は4月30日、共同開発を進めてきた新型コロナウイルスの治療薬が国の医療研究開発革新基盤創成事業に採択されたと発表した。  県と㈱ボナックは、昨年5月に覚書を締結し、ウイルイス感染症に対して大きな効果が期待でき、副作用も少ないといわれる次世代医薬「核酸医薬」による共同開発を開始。昨年8月には県環境研究所が保有する新型コロナウイルス株を用いた試験管内試験で、少量でも効果がある候補薬の絞り込みに成功、今年1月にはフランスでの有効性確認試験で明確な効果を確認することができたという。今回、国立研究開発法人・日本医療開発機構(AMED)が公募していた事業の採択を受けたことで、実用化に向けた開発がさらに加速することが期待される。国からの支援額は3年5ヵ月で50億円。今後、ボナック、県保健環境研究所に加え、核酸医薬研究に強みを持つ東京医科大学、ウイルス感染症研究に強みを持つ長崎大学熱帯医学研究所も研究に参加し、22年度中の臨床試験を目指す。㈱ボナックが開発する核酸医薬は、ウイルスがヒトの体内で増殖するために必要となる成分(タンパク質や酵素など)の働きを阻害する従来の医薬品と異なり、ウイルスに直接作用することで、ウイルスの増殖を阻止する働きを持つもので、難病やウイルス感染症に大きな効果が期待されている。共同開発中の新薬は吸入薬として開発され、患部である肺に直接作用する。注射薬や経口薬と異なり、血液を介さないことから、成分が全身に回らず、副作用の恐れが少ないとされている。
正式採択に合わせて開かれた記者会見で服部誠太郎知事は「核酸医薬による治療薬開発は進行感染症といわれる新型コロナウイルス感染症の治療や人獣感染症への対策、いわゆるワンヘルスの推進に大きな意味を持つ。来年度には人による治験が始まる。早期実用化に向けて全力で取り組みたい」、㈱ボナックの林社長は「国の事業に正式採択されたことで、実用化に向けた開発が大きく加速する。新薬は吸入薬として開発を進め、副作用の恐れが少ないなどの特徴がある。引き続き産学官で連携し、開発を進めていきたい」などと話した。