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学内に「食品微生物制御センター」を開設 九州産業大学


週刊経済2021年6月15日発行

微生物データ拡充と共有化図る

九州産業大学(福岡市東区松香台2丁目、北島己佐吉学長)は6月2日、学内に実用化支援研究施設「食品微生物制御センター」を開設し、レーザー光を利用して細菌や酵母などの微生物成分を特定、データベース構築を図る取り組みを始めた。
食品業界における食品事故の早期解決や賞味期限を延長し、「食品ロス」(食べられるのに期限が近いなどの理由で廃棄される食品)を低減するなど、微生物制御対策の一環として実施するもの。同センターでは成分分析法「MALDI|TOFMS」(飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化分析法の略)を採用。同分析法はマトリックスと呼ばれる混合物を加えた試料に窒素レーザーを照射し、気化・イオン化した成分の質量の違いによる電極までの飛行時間の差によって成分を特定できるという。遺伝子解析による分析法と比べて迅速な成分特定が可能であるほか、専門的な技術を必要としない利点が特徴。「食中毒や感染症検査などの医療分野での導入に続き、食品業界で10年ほど前から利用されはじめ、全国の医薬食品分野で現在約200台が稼働している」(総合企画部)としている。
同大学では2019年6月、企業間のデータ共有化を目的とした組織「MALDI|TOFMS微生物同定コンソーシアム」を設立。現在、調味料や菓子、冷凍食品、乳製品、飲料、食肉・水産加工品分野など14企業・団体で構成し、食品微生物データを共有している。今後、食品微生物制御センターを通じて菌株や成分データベースの拡充と同定精度の向上、コンソーシアム参加企業各社がデータベースを効率的に共有できるシステムを開発し、食品業界の横断的な微生物データベースの構築を目指す。また、福岡県工業技術センター生物食品研究所と協力し、食品産業の微生物制御支援を行う方針。なお、コンソーシアム参加企業・団体は次の通り。
キユーピー㈱、マルハニチロ㈱、㈱明治、カゴメ㈱、㈱やまやコミュニケーションズ、日本コカ・コーラ㈱、コカ・コーラ ボトラーズジャパン㈱、㈱ニチレイ、㈱日清製粉グループ本社、日本ハム㈱、東京都健康安全研究センター、一般財団法人日本食品分析センター、日本生活協同組合連合会、九州産業大学。