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天神ビッグバン加速、「100棟建替え」の見通しに 高島宗一郎福岡市長


週刊経済2023年10月31日発行号

「表紙の人」インタビュー抜粋

高島宗一郎福岡市長は本誌11月号「表紙の人」のインタビューに応え、4期目滑り出しの手応え、都心部開発プロジェクトに関する新たな展望などを話した。以下、インタビューを抜粋。
―昨年11月の市長選を大差で制し、市政4期目がスタートした。滑り出しの1年の手応えは。
高島 今回の選挙では、「子育て支援に力を入れる」ということは言ったものの、具体的な支援策についてはあえて言及しなかった。というのも、昨今の選挙戦では「〇〇を無償化します」とか「〇〇料を引き下げます」といったバラマキ、バラ色公約を掲げる候補者が多いことを問題視していたから。公約の実現可能性を精査していないばかりか、当選後に反故にしてしまうことも多く、「言ったもん勝ち」な状況を常々疑問に思っていた。だから今回の選挙戦ではあえて、そうした公約を封印し、福岡市が目指すべきビジョンと方針に共感いただけるかどうかを、市民の皆さまに問いかけた形。
―結果的に史上最多得票を更新した。
高島 だからこそ、今回の選挙で受けた信任は非常に重い。大枠の方針に共感と信頼をいただけた以上、次は具体的な施策の中で成果を示していく必要がある。今回の選挙戦で訴えた「子育て支援を充実させる」については、2月に発表した2023年度の当初予算案で、政令市初の「第2子以降(0~2歳)の保育料無償化」を所得制限なしで盛り込んだ。そのほか、障がい福祉サービスの利用料を未就学児は無償化、学齢期は負担上限を月3千円に引き下げたほか、子ども医療費の自己負担をひと月上限500円とする「ふくおか安心ワンコイン」の対象を高校生世代まで拡大するなど、あえて選挙では封印した子育て支援策を、相次ぎ具体化した。中でも0~2歳児の子育て世帯を対象に、おむつなどの育児用品をお届けする制度「おむつと安心定期便」は、スタートから僅か1カ月で対象者の7割にご登録いただき、市民のニーズが非常に高かったことを実感している。
―天神ビッグバンの開発・企業誘致は、脱コロナが鮮明になってさらに加速している印象がある。
高島 コロナ禍におけるニーズを素早くプロジェクトに反映したことで、開発するオフィスビルの付加価値をさらに引き上げることに成功した。コロナ禍が本格化した2020年の時点で、「感染症対応シティ」という新たなコンセプトを打ち出し、換気や非接触などに配慮した建替えプロジェクトには、追加のインセンティブを付与する方針を打ち出した。その結果、新規のプロジェクトはもちろん、既存の計画でも設計変更などの動きが見られ、空調や非接触など、感染症への備えを万全に整えたビルの建設を促すことができた。時代に対応したハイスペックなオフィスビルが集積することで、高付加価値なビジネスの誘致におけるアドバンテージを確立することができた。
また、この優遇措置を発表した際、複数街区にまたがる、段階的および連鎖的な建替え計画に限っては、2022年末までに計画概要書を市に提出すれば、2026年末以降のビル竣工でも、天神ビッグバンボーナスの適用が可能となるようにルールを見直した。これが後に大きな成果につながり、2022年秋ごろから相次いで、複数街区を対象とした大規模プロジェクトが発表された。パルコや新天町商店街が立地するエリアを対象とした「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」や、福岡中央郵便局およびイオンショッパーズ福岡の「段階連鎖建替えプロジェクト」、水鏡天満宮周辺の「(仮称)天神一丁目15・16番街区計画」がそれに当たる。
―大きな開発の呼び水になったと。
高島 これらの大規模開発が天神ビッグバン全体に与える影響は非常に大きく、今まで「天神ビッグバンで2026年までに約70棟が建て替わる」という言い方をしてきたが、これらすべてが完成する頃には、約100棟が建て替わる見込みとなり、文字通りまちが生まれ変わることになる。