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売上高5千億円突破へ、「手持ち工事消化できれば底堅い」 九電工


週刊経済2024年8月28日発行号

石橋社長インタビュー

㈱九電工(福岡市南区那の川)の石橋和幸社長は、本誌9月号「地場主要企業トップインタビュー」に応え、2024年問題への対応や近づく本社移転について話した。以下、インタビューを抜粋。
―時間外労働に上限規制を課される「2024年問題」の適用が、今年度からスタートしたが、現在までの対応状況は。
石橋 まさに「待ったなし」の状況を迎えており、事前の準備に基づき、今のところしっかり対応できていると認識している。時間外労働の発生を抑えるために、昨年4月に社長直轄の「働き方改革推進室」を設置し、社員全体の意識改革をはじめ、さまざまな対策を講じてきた。例えば個々の社員において、月の残業時間が規定に近づいてくるとアラートで警告するシステムを導入したり、書類の作成や照度測定などのさまざまな業務をDXで自動化したりなど、テクニカルな面から打てる工夫は、十分に手を尽くしてきた。さらに、事務系の社員を大型現場や支店・営業所の技術部門に配属して、業務の支援や移管を進める施策も、各所で機能し始めている。
―実際に、残業を従来に比べて抑えることができているか。
石橋 しっかり上限の範囲内に収められている状況。もちろん、我々の努力だけでこれを成し遂げるのは不可能で、施主やゼネコン・サブコン、外注の協力会社などのご理解と緊密な連携があってこそ。これこそが、「2024年問題」に取り組む上で、将来に資する財産になると考えており、業界全体が変革する、いいきっかけになっていると感じている。
しかし、なかなか気は抜けない。業界の人手不足は依然として深刻であり、労務管理を徹底した上での人員配置や工期を守るためのやりくりで、現場からは相当苦慮しているとの声が聞こえている。まさに「正念場」であると社員には檄を飛ばすとともに、各現場で絶えず、効率化の工夫に知恵を絞ってほしいと呼びかけている。社員一丸でこの苦境を乗り切り、「時間外労働の削減」と「業績の向上」は決して二律背反の関係ではないことを証明していくつもり。
―2024年3月期連結決算は、売上高、主要な利益指標はともに過去最高だった。
石橋 概ね計画通りに推移した。従前から取り組んできた価格転嫁が円滑に進んだことや、2024年問題にも通ずるさまざまな効率化の取り組みが奏功したこともあるが、何より旺盛な受注環境に支えられた面が大きい。半導体関連工場やデータセンターなどの旺盛な設備投資をはじめ、福岡市都心部のオフィスビル再開発など、九州における設備投資需要は非常に活発で、首都圏・関西圏からの受注も好調だった。少なくとも2026年頃までは、現在の受注環境が続くものと見ている。ただ受注高はほぼ横ばいで、時間外労働の削減を含めた適切な労務管理を前提に、施工戦力を勘案して仕事量を抑えた側面もある。
―今期業績の見通しについて、売上高は5千億円の大台を初めて超える見通し。
石橋 現在の手持ち工事を順調に消化していくことができれば、大台の突破は底堅い。あとは施工戦力の問題をどのようにクリアしていくかに尽きる。
―建設中の「ONE FUKUOKA BLDG.」への本社移転について、7月に概要が発表された。
石橋 入居するのは13階の全フロアと14階の一部で、約7千㎡のオフィスとなる。移転予定人数は約900人で、本社機能・人員ほぼは全て移管する。現在の延床面積と比べ約3割減となる計画で、執務エリアは全面的にフリーアドレスを導入するほか、移転を機に本格的にペーパーレスなどを推し進めることで、従来よりも物理的なスペースを抑えることができると判断した。特徴的な機能としては、イノベーションを生み出すためのライブラリーやフランクな交流を促すリフレッシュエリアなど、いわゆるフリースペースを充実させており、応接には不燃間伐材を用いたほか、会議室には九州の祭りを表現した意匠を盛り込むなど、さまざまな「こだわり」を詰め込んでいる。
オフィスの先進性もさることながら、何より「天神のど真ん中」で働けるという社員の利便性とモチベーションへのプラス効果には、大いに期待を寄せており、採用面での訴求力も非常に高いはず。移転は順調にいけば、来年5月頃に完了する予定。
―本社跡地の活用については。
石橋 本社と別館跡地に加え、福岡支店の敷地が隣接する飯塚信用金庫さんと連携して再開発を進める計画で、敷地面積は約5900㎡。用途は未定だが、このエリアの特色である「働く場所」と「暮らす場所」が混在する利点を活かした、ワーク&ライフが相互に絡み合う環境づくりを志していくつもり。スケジュールとしては、1年後を目安に建物の解体を始め、その後建築に着手することを目標としている。