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九州と台湾の交流深化に大きな成果 台北駐福岡経済文化弁事処・戎処長


訪問自治体は60カ所以上

台湾の総領事館に相当する台北駐福岡経済文化弁事処(福岡市中央区桜坂3丁目)の戎義俊処長は7月の退任を前に本誌インタビューに応じ、就任から今日までの交流活動の成果などを語った。インタビューの内容は次の通り。
―就任直後から各地を訪問し、交流活動を続けている。
戎 鹿児島県に120回、熊本県に130回、宮崎県には約100回、大分県に80回、長崎県と佐賀県をそれぞれ70回、山口県は60回ほど訪れた。公用車の走行距離は13万キロを超え、表敬訪問した人口1万人以上の自治体は60カ所以上に及ぶ。どこを何回訪れても東京のような大都市部では味わえない温かい人情味を感じ、友情を深めることができた。まさに九州・山口の醍醐味だと思う。
―5年間で印象的な仕事は。
戎 3つある。まず14年秋に太宰府市の九州国立博物館で「台北国立故宮博物院特別展」を約1カ月にわたって開催した。東京に次ぐ開催地が九州になったことは、長年にわたる信頼関係の証。開催期間中の来場者数は27万5000人と大盛況で、開催から3年半が経つが、経済、文化、映画、音楽、ガラス工芸など幅広い分野で交流が盛んになった。
2つ目は青少年交流の定着・拡大。「日本精神」のトップランナーを走る「日本語族」や「湾生」がともに高齢化となり、交流の希薄化が危惧されていたが、次の世代を託すべく進めてきた高校生の修学旅行が盛り上がりを見せ始めている。私は福岡と大分で3回の修学旅行セミナーを主催し、九州一円の高校にこの意義を説いてきた。この成果もあり、14年が12校1200人、15年は19校2200人、16年は30校5000人、17年は40校7000人と順調に増え続けている。
3番目は昨年10月10日に九州大学で台湾研究講座がスタートしたこと。日本の文部科学省に相当する教育部が力を入れて支援をしている。この講座が日本における台湾研究の拠点として、必ずや日台の歴史や文化の相互理解を進め、日本人の台湾に対する思考停止の軛(くびき)を解いてくれるものと期待している。
総領事としての5年間は、思ったことの何分の一しかできなかったかもしれない。しかし、台日関係に新しい種をまき、芽が出かかるところまで来ることができたことは、ひとえに九州の皆さまのおかげであると感謝したい。
―福岡市と台湾との関係も強固になっている。福岡市が力を入れているスタートアップ支援、MICEの分野でMOUを締結する動きもあった。
戎 さらなる交流を進める上で大きな原動力になる。スタートアップ関連では、昨年2月に台北市とMOU(覚書)が締結された。成長を続ける中国経済の架け橋となる台湾とタッグを組んで、新しい起業の輪が広がることを期待したい。コンベンションについては、日本のジェトロに相当する台湾貿易センターと福岡コンベンションビューローがMOUを通じ、MICEの分野で相互協力を推進していくことを確認した。台湾も福岡市もMICEに力を入れており、双方がメリットを享受できる関係を作り上げていきたい。
―定年後に取り組みたいことは。
戎 九州のある県から「観光大使になってください」とオファーをいただいているが、まだ決めていない。いずれにしても民間人の立場で台湾と九州の架け橋を果たしていきたい。この5年間、九州・山口の行政、教育、文化など各界の皆さんと交流を重ねてきた。福岡弁事処の処長の任期は平均3年。しかし、10代目となる私は5年4カ月と歴代最長になる。実は35年前、当時の鹿児島県金峰町にホームステイを経験した。それ以来、九州は日本の中でも特に思い入れの強い地域であり、まさか弁事処の処長として、こんなに九州と関わりを持つとは思わなかった。「縁は異なもの、味なもの」とつくづく感じている。

2018年4月24日、5月1日合併号