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九州―山陽・関西間の旅客流動が増大 九州新幹線開業10年の効果と影響


週刊経済2021年3月23日発行

九州経済調査協会など調べ

九州経済調査協会(髙木直人理事長)は、3月12日で全線開業10年を迎えた九州新幹線の開業効果と影響に関する調査結果を発表した。
新幹線沿線のシンクタンク、地方総合経済研究所(熊本市)と九州経済研究所(鹿児島市)との共同研究として企画、実施した調査によると、全線開業後の時間距離は博多―西鹿児島間で3時間47分、04年3月の新八代―鹿児島中央間で2時間10分に比べて、1時間16分まで大幅に短縮、南北間の時間距離が大幅に短縮したことや、山陽新幹線との相互乗り入れによって九州から山陽・関西へのアクセスが各段に向上したことを指摘。九州と山陽3県(岡山、広島、山口)、京阪神3府県(京都、大阪、兵庫)との旅客流動は、開業前の2010年度と直近の18年度との比較で熊本―京阪神で1・33倍、鹿児島―京阪神で1・40倍、熊本―山陽で2・12倍、鹿児島―山陽で2・27倍まで拡大したことで、両地域間における潜在的な需要の掘り起こしにつながったとしている。対関西における新幹線と航空機との競争では、大手航空2社が特割の予約・決済日を3日前から前日まで引き延ばしたことや、価格も新幹線と同等の水準に引き下げたことで、航空機の旅客もそれほど減少しておらず、熊本―大阪間では新幹線が開業前の2・5倍に増えたのに対し、航空機は微減に止まり、新幹線のシェアは50%前後で推移。鹿児島―大阪間では開業初年度に新幹線のシェアが29%まで伸びたものの、その後はやや落ち着き、20%前後で推移していることから、移動による選択肢の幅が広がったことも潜在需要の掘り起こしにつながったという。
また、企業活動の影響では時間短縮で支社、支店など営業拠点の統廃合や縮小が懸念されていたが、沿線3県に本社を置く企業1200社を対象にした調査(20年12月~1月、回答数321件、回収率26・8%)では、支所機能を強化について、「大いに影響した」が15・9%、「ある程度影響した」が12・4%、「少しは影響した」が15%、「影響していない」が56・6%、支所機能の縮小に対する回答は、「影響していない」の回答が85・5%を占め、縮小の事象は見られながらも、新幹線の影響は薄かったとしている。
そのほか、企業活動の強化については、新規顧客の開拓が63・4%、人材募集活動が41・6%、既存顧客の訪問が35・6%と主な回答を占めているほか、人材募集に関しては文部科学省の学校基本調査などの結果を踏まえ、高卒就職者の動向が10年間でいずれの件でも福岡県への就職が伸びている一方、新幹線が直通した山陽3県、京阪神3府県への就職については、新幹線開業の影響が起こり得る熊本、鹿児島で目立った動きはなく、鹿児島県から京阪神3府県への就職は減少傾向に転じていることなどが分かった。