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ワクチン接種歴引継ぎで特例、「データ連携の一里塚に」  福岡市


週刊経済2021年12月28日発行

高島市長インタビュー抜粋

福岡市の高島宗一郎市長は本誌1月号、新年抱負インタビューに応え、自治体間のデータ連携の必要性などについて語った。以下、インタビューを抜粋。
―2021年を振り返って。
高島 今年もコロナの影響が大きい1年だった。第3次産業が9割を占め、古くから交流で発展してきた福岡市にとって人が集まることができない状況は大変な痛手。本当に手ごわい感染症だ。
―市としてはどのような対策を。
高島 基礎自治体が打てる最大の対策はワクチン接種。接種推進には相当力を入れており、介護従事者や保育士等への「市独自の優先接種」や深夜も対応する「24時間接種」の実施など、接種率の向上と迅速化に繋がる取り組みを、全国に先駆けて実施した。その結果、政令市トップのスピードで接種が進み、目標としてきた「0月末までの2回目接種率8割」を達成することができた。
―政府が今後のデジタル化の方向性を検討する「デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)」の有識者メンバーに選ばれた。11月の初会合では「ワクチン接種券」を軸に自治体間データ連携の必要性を訴えたが、この狙いは。
高島 ワクチン接種歴の情報は自治体間で引き継がれないため、転居した際には役所に2回接種が済んだことを申請しないと3回目の接種券が手元に届かない。データ連携の遅れが市民に負担を強いている象徴的な事例。この問題については政府も検討いただき、特例的に接種歴の引継ぎを可能とする方針が固まった。
ワクチンというテーマにこだわったのは、今国民にとって最も関心が高く分かりやすい事例を切り口に、「データ連携の遅れ」によって不都合が生じているという問題提起をし、国民的な議論のきっかけにしてほしかったから。ワクチン接種歴以外でも、支援が必要な子どもの情報が引き継がれず対応が後手に回るなど、一貫性のあるサービスを行政が提供できず、深刻な問題を引き起こすこともある。専門的な言葉を用いれば、「データのポータビリティ」の考え方が、全く根付いていない。だからこそ、今回のワクチン接種歴の特例措置は、今後のデータ連携の一里塚になるはず。
―今後はデータ連携の遅れが解消されていくのか。
高島 そうなると思う。「自治体間データ連携」という根本の問題について、デジタル臨調の正式なテーマとして検討を進めていく方針を牧島かれんデジタル大臣が明言された。私の問題提起をきっかけに市民サービスが改善されていくのであれば、これほど嬉しいことはない。