NEWS

  • 地域

フィリピンに日本向け看護師養成校建設   (医)三喜会理事長・伊藤氏 年内にも第1期生派遣


 医療法人三喜会(福岡市中央区天神5丁目)理事長・医師の伊藤実喜氏は、フィリピンに日本への派遣を目的とした看護・介護スタッフ養成学校5棟を建設する。総工費は約1億6,000万円。8月に着工し、10月に1棟目、2年以内に残りの4棟を完成させる。
 日本国内の医療現場での人手不足を背景に、同養成学校を卒業したフィリピン人看護・介護スタッフを日本へ派遣することが目的。場所は同国中部、首都マニラの南方に位置するミンドロ島内。約3万2,374ヘクタールのリゾート施設敷地内で、約9,900平方メートルの敷地を養成学校に割り当てる。名称は「プロナーススクールイトウ」。建物は平屋建ての5棟で、延べ床面積は合計で1,414平方メートル。建設費は、国内医療機関から募る施設協力寄付金などでまかなう。完成後、伊藤氏は現地スクールの理事長もしくは理事に就任する。
 同校は、現地の4年生大学卒業者を対象に、無料で日本語と文化、日本での介護システムなどの講習を6カ月単位で実施する。看護スタッフの場合、月間30人・年間360人を、介護スタッフの場合はそれ以上を順次卒業させる考え。同時に、日本国内の優良な医療機関の情報を提供し、日本への派遣を目指す。早ければ、年内にも数十人規模の第1期卒業生が日本へ派遣される予定。
 日本に来たフィリピン人スタッフは、医療関係人材登録機関を通して国内各地の医療機関へ派遣される。国の取り決めで、看護スタッフの場合は3年、介護スタッフの場合は4年まで日本で就労でき、その後国家資格を取得すれば引き続き就労が認められる。三喜会では、日本滞在中のスタッフの住居や精神面でのケアなど生活のサポートにも取り組む考え。
 国内では、医療現場での人手不足が叫ばれており、三喜会によれば、介護士の場合で、現時点で6万人が足りない状況という。一方、日本―フィリピンの政府間では、昨年9月に日比経済連携協定が締結。フィリピン人看護師と介護士が2年間で1,000人受け入れられる見通し。今回の伊藤氏と三喜会の養成学校建設とフィリピン人スタッフの日本への受け入れが本格化すれば民間では全国でも先駆けとなる。
 三喜会は1998年設立。資本金は1,000万円。現在では、訪問介護診療を主に手掛ける。
 伊藤氏は、福岡県小郡市出身、51年5月24日生まれの55歳。福岡大学医学部大学院卒。マジックで、93年には世界大会で優勝。医療現場にマジックと“笑い”を取り入れることで知られている。99年からフィリピンで医療活動と文化交流活動(NGO)を始め、00年には同国ディ・オカンポ医大で客員教授に就任している。