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サーキュラーエコノミー創出事業に着手 福岡酸素


週刊経済2025年1月15日発行号

魚残渣を液肥に、平戸で実証実験に成功

産業・医療用ガスなど製造供給事業の福岡酸素㈱(久留米市東町、本間雄一社長)は、金型製造のKTX㈱(愛知県江南市、野田太一社長)などと連携し、魚残渣を農業用の液体肥料に変える実証実験に成功し、アミノ酸液肥を活用したサーキュラーエコノミー(資源を循環的に利用する経済システム)創出事業に着手する。

これまで廃棄するしかなかった魚のアラを特殊な機械に通して液体肥料に変え野菜栽培に活用する事業で、実証実験は2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言する長崎県平戸市で開始。21年に同市に進出したKTXとの3者間連携により、産廃処理していた魚の残渣や売れ残りなどの液肥原材料の回収から装置への投入、液肥化までの仕組みを整えた。有機物処理装置はKTXが製造する「あぜりあ」。処理能力は1日300㎏で液肥化速度が高く、人畜無害な有機物のアミノ酸液肥の製造を可能にしているという。完成した液体肥料はその効果を確かめるため、長崎県北松農業高校とBepccs(ビーパックス)農法により野菜を栽培。栄養価の高さも数値から検証できたとし、1年3カ月で約3・3トンのCO2削減につながったという。昨年10月、平戸市と3者間協定を結び、KTXは今後装置の改良を実施しながら製造体制を構築。一方、福岡酸素では今春から既存顧客を中心に装置を販売、環境に優しい循環型社会を構築するシステムを提案していく。同社では「魚の残渣由来から普通液肥に登録できたのは国内初。エネルギー事業に携わる企業として社会課題に目を向け、地域貢献と経済性を両立した循環型ビジネスモデルへ挑戦し、社会に求められる企業としてさらなる発展を目指す」と話している。

同社は1919年11月設立、資本金4億円。従業員数約390人。