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コロナ禍、半導体不足の逆境で「三菱車」が業績けん引 KMGホールディングス
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週刊経済2022年4月26日発行
「表紙の人」インタビュー抜粋
三菱、スズキのディーラーを展開するKMGホールディングス㈱(福岡市中央区薬院)の城戸㟢建二会長兼社長は、本誌5月号「表紙の人」のインタビューに応え、創立70周年の抱負や今後の成長戦略について語った。以下、インタビューを抜粋。
―昨年創立70周年を迎えた。
城戸﨑 無事に周年の節目を迎えることができ、ホッとしているというのが正直な感想。ここ2年はコロナ禍や半導体不足が自動車業界にさまざまな形で影響を及ぼしていたが、グループ一丸となった社員の頑張りと、ここ数年で取り組んできたさまざまな新たな取り組みの成果もあり、何とか節目の1年を増収増益という形で終えることができた。
―昨年2月に新本社ビルも完成した。
城戸﨑 新本社ビル「Yakuin3」(ヤクインスリー)は、「薬院地区のランドマーク」をコンセプトに、エリアを象徴するようなシンボリックなデザインと最先端の機能を目指した。外観のデザインやショールームのレイアウトなど、一般的なディーラーの本社ビルとは大きく趣が異なる、独自性豊かな本社ビルに仕上がったと自負している。
―ビルの概要について。
城戸﨑 敷地面積は1880㎡、8階建てで延べ床面積は約1万400㎡の規模。ディーラーのショールームを2階に配している点が異例で、1階には地域のコミュニティにつながるカフェレストラン&バーとコミュニティ広場を設けた。2階の九州三菱自動車のショールームは、外からも分かりやすいよう外観のデザインにも工夫を施し、ガラス面に沿ってゆとりある車両展示スペースを設けた。当初から「女性が活躍するショールーム」を目指してデザインしており、実際にオープン後は女性を中心としたチームが運営を担当している。3階は本社事務所。初めてフリーアドレスを採用し、働く場所を自由に選択できるオフィスに刷新した。4階から8階はテナントが入る貸しオフィスで、オープン時から満室で稼働している。事前に開設していた本社別館の工事も合わせ、総投資額は約70億円になった。
―22年3月期決算について。
城戸﨑 売上高は約414億円で前年比約3%増、経常利益は約7億円で約2%増の増収増益だった。コロナ禍に半導体不足が重なる形で、自動車業界の需給バランスは著しく不安定な状況だったが、周年の節目ということもあり、グループの社員全員が本当によく頑張ってくれた。特に三菱車の販売が好調で、半導体不足に伴う納期の遅れがほぼ全てのメーカーで発生していた中、比較的短納期で対応できていた。秋に発売した新型アウトランダーに想定外の受注が舞い込んできたことも、増収増益につながる追い風になった。
―事業多角化も進めている。
城戸﨑 当社のノウハウや資産を生かした事業の多角化を推進してきたが、黒字化を達成した事業も増え始め、着実に業容のすそ野が広がってきている。2020年に瑞穂交差点にオープンした6階7層の「KMGスカイパーキング」は、立体駐車場とレンタカー店舗の運営がいずれも大変好調で、大きな収益源に成長しています。また、同施設の外壁にデジタルサイネージを設置したことを皮切りに、屋外広告業にも参入した。また2017年には中古車買い取り販売店「カーセブン」のフランチャイズに参入したが、昨年には黒字化(速報値)を達成した。新車と並行して中古車も積極的に案内するように努める「新中併売」や、中古車販売店で新車も提案する「中新併売」に取り組んだことで、販売の間口が広がり、多様化するニーズへの対応力が強化できた。
―これから着手する新規事業の計画は。
城戸﨑 車を降りてからの移動手段、当社業界にとっての「ラストワンマイル」に当たる新たな市場を、他のディーラーに先駆けて開拓していく。4月1日からは、電動キックボードの販売事業をスタートした。地元ではどこのディーラーも参入していない領域に、いち早く先鞭をつけることこそが重要だと考え、事業化に踏み切った。また昨年10月からは、ベンチャー企業のWHILL㈱が開発した次世代型電動車椅子「WHILL」(ウィル)の販売をスタートした。大人の早歩きくらいのスピードが出るモビリティで、免許不要で歩道でも走行できる。足が不自由な方や高齢世代の方向けの「ラストワンマイル」として、地元九州での浸透を図っていくつもり。