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「2024年問題」、人材確保が最大のテーマ 福岡運輸ホールディングス


週刊経済2024年2月27日発行号

「表紙の人」インタビュー抜粋

㈱福岡運輸ホールディングス(福岡市博多区空港前)の富永泰輔社長は、本誌「表紙の人」のインタビューに応え、ドライバーの労働時間に上限規制が課される「2024年問題」を目前に控えた対策や事業の再構築ついて語った。以下、インタビューを抜粋。
―ドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される、いわゆる「2024年問題」の適用が4月から始まる。法改正を前にした準備や対策について。
富永 上限規制を前提とした対策、事業の再構築等の準備は着実に進めてきた。ただ、これで万全かと問われると、蓋を開けてみないと分からない部分が多い。上限規制に対応する上では「人を増やす」ことが必要不可欠だが、業界の人手不足は深刻さを増しており、なかなか必要な準備を進めるのが難しい実情があった。それでも、ここ1年程で「2024年問題」や「物流の危機」といった警鐘が繰り返し報じられたことで、少なくとも取引先やお客さまの理解は広がった。
―具体的に、どのような対策を。
富永 従来型の働き方や仕事の流れの多くを見直す必要がある中で、当社最大のアドバンテージである豊富な「拠点網」を活用し、課題の解消に取り組んでいるところ。当社はグループ全体で全国に約90拠点、冷凍冷蔵倉庫を擁する営業所に絞っても24拠点のネットワークを有しており、これらを効率的に、フレキシブルに活用することで、ドライバーの労働時間削減に努めている。
ただ、いずれにしても、従来以上にドライバーの数が必要になり、2024年問題に向き合う上では、結局のところ「ドライバーの確保」が最大のテーマ。ドライバーの確保に向けた採用活動と待遇改善には、特に力を入れて取り組んでいるところ。中でも「賃上げ」には相当に力点を置いて取り組んでおり、トラックドライバーをはじめとする物流業界自体の魅力の底上げも、喫緊の課題だと捉えている。
―拠点網拡大に向けた設備投資計画は。
富永 2019年からの5年間で、全国で6カ所の冷凍冷蔵庫を開設した。現在建設中の拠点が2カ所、計画中の拠点も2カ所あり、投資総額では300億円くらいの規模に上ると思う。
―現在建設中の拠点について。
富永 九州・北海道と両端で建設を進めている。鳥栖市で進めている新「福岡支店」の第2期工事が間もなく完了する見通しで、今年6月頃に開業予定。完成後の総延床面積は約1万5千㎡となり、今後このエリアの中核拠点としての役割を担っていく。
もう一つ、現在建設を進めているのが、グループ会社である札幌定温運輸㈱が運営する本社及び新センターの設備投資。北海道地区の冷凍冷蔵倉庫としては10年ぶりの新築冷蔵庫となり、2025年6月に完成する予定。1万3千㎡の大型倉庫で、これに合わせて、札幌定温運輸の子会社である北海定温運輸㈱の本社も新センターへ移転予定している。計画中の拠点は、2拠点ともに関東の新拠点になる。
―今後、重点的に設備投資を計画するエリアは。
富永 マーケットは関東が非常に大きいが、だからといって関東だけで設備投資を強化すればいいわけではないのが、全国でサービスを提供する物流業の難しいところ。拠点と拠点を結ぶ連続性が非常に大事になるので、ネットワーク全体のバランスを考えながら、「止まらない物流」を目標に拠点網の拡大を進めていくつもり。