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「聖域なき構造改革」で事業撤退や運賃値上げを断行 西日本鉄道


週刊経済2021年8月31日発行

林田新社長トップインタビュー抜粋

西日本鉄道㈱(福岡市博多区博多駅前)の新社長に就任した林田浩一社長は、本誌9月号「地場主要企業トップインタビュー」に応え、就任の抱負や業績の立て直しに向けた構造改革などについて語った。以下、インタビューを抜粋。
―4月1日付で社長に就任した。就任直後の率直な感想は。
林田 55歳での社長就任は、前身を含む当社の歴史で4番目の若さであり、まさかこのタイミングで自分にバトンが回ってくるとは思っておらず晴天の霹靂だった。コロナ禍の影響で経営環境がかつてない程に厳しい状況なので、重責に身が引き締まる思い。だが、逆にこうした危機的な状況だからこそ、普段手を加えられなかったような領域を含めた改革を推し進めることができると前向きに捉え、全身全霊をかけて西鉄を新しく生まれ変わらせていく。
―新社長としてどのようなカラーを打ち出していくか。
林田 中期経営計画の策定など、グループ全体を見据えた計画や企画を取りまとめる役割を担ってきた。その経験を糧に、経営に関わるさまざまな「バランス」をとる役割を自身に課していきたい。会社が目指す理想とコストの兼ね合いや多様な価値観などを見極め、バランスのよい経営のかじ取りに努めていきたい。
―前期決算は過去最大の赤字だった。
林田 鉄道、バスを中心とした運輸業やホテル事業、レジャー・サービス業が大きな痛手を受けた。ただ、投資や費用の多くを凍結し、社員はできる限りの努力を重ねてくれた。また、前期中にコロナ禍での戦略を洗い直し、〝修正”第15次中期経営計画を策定できたのは大きな成果だった。
―修正中計のポイントは。
林田 「聖域なき構造改革」と「ニューノーマル下での成長戦略」に両輪で取り組んでいく。すでに構造改革の面では、今まで手を付けられなかった面まで切り込んだコストカット策を発表している。かしいかえんの閉園、西新パレスボウルの閉鎖、西鉄イン心斎橋の売却などにメスを入れた。地域の公共交通ネットワークを守るためにも、今こそ長年の課題に決着をつけるべきだと判断した。
―100円バスの値上げなど運賃の見直しも進めている。
林田 100円バスは20年以上、福岡市中心部などで親しまれてきた象徴的な運賃だが、かなり前から採算的には苦しくなっていた。まさに聖域と呼べる領域だったが、ポストコロナ社会においてもサービスを維持していくために、値上げにご理解をいただきたい。
―成長戦略ではどのような分野を伸ばしていく。
林田 まず重要なのが都市開発。代表的なのが福ビル街区の建替えプロジェクトだが、昨年11月に感染症に対応した設計変更や設備の充実に向け、約50億円の追加投資を決定した。テナント誘致にも取り組んでおり、外資系企業や成長企業に的を絞り、こちらから進出を働き掛けていきたい。
そのほか集客に頼らないグループ事業、住宅・流通・国際物流・海外事業なども収益拡大を図っていく。国際物流では、来年9月に東那珂に新たな物流拠点が開設する。コールドチェーンを構築して貨物取扱の拡大に結び付けていく。