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「久留米版・ビックバン」着実に前進 大久保・久留米市長
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週刊経済2021年2月2日発行
西鉄久留米東口再整備など
久留米市の大久保勉市長はこのほど、ふくおか経済2月号インタビューに応じ、「21年は1期目最後の1年。ホップ・ステップ・ジャンプで取り組んできた3年間の政策課題の総仕上げに全力で取り組みたい」と話し、新型コロナウイルス感染症対策をはじめ、西鉄久留米駅東口再整備など懸案だった政策課題を着実に進めていくことを強調した。
―21年の抱負は。
大久保 1期目最後の1年となる。ホップ・ステップ・ジャンプで取り組んできた政策課題に全力で取り組んでいく。最優先課題は新型コロナウイルス感染症拡大への対応だ。これまで取り組んできたことを継続することは当然だが、ワクチンの接種をスムーズに実施していくことが新たな課題。“医療都市・久留米”として、多くの総合病院や医師会との密な連携によって、ワクチンの接種が実行できるよう最善を尽くしていきたい。
また、コロナ禍で大きな課題となっている中小企業の金融対策については、昨年12月1日から融資限度額を350万円から500万円まで引き上げた。貸付期間は10年以内で据え置き期間を5年以内とし、支払い負担を軽減させるため、最大5年間は実質無利子とする支援策。さらに融資に関する信用保証料は市が全額負担している。年度末にかけ、積極的に利用してほしい。
次に昨年から動き始めていたいくつかのプロジェクトをさらに前進させていきたい。西鉄久留米駅東口の再整備、都市条例改正で市内の各駅周辺で民間の宅地開発を誘導する取り組みなど。これらの施策を進めることで、久留米の成長力、魅力をさらに高めていきたい。
―西鉄久留米駅東口の再整備について。
大久保 長年、後ろ向きの案件が前向きな案件へと転換できる流れを作ることができた。2002(平成14)年に民事再生法を申請しながら、再建の見通しが困難だった第3セクター・久留米都市開発ビル㈱が運営する商業ビル「リベール」の2次破たんを回避することができた。第3セクターが市に支払うべき債権21億円を東京の不動産投資会社である㈱リオ・ホールディングス、医療法人・天神会で作るJV(共同企業体)に2億円で譲渡することが決定した。今後、JVがオフィスビルとしてリノベーションすることになる。市としてもオフィスの誘致活動を精力的に取り組んでいきたい。
―㈱リオ・ホールディングスがすでに閉店した岩田屋新館跡地を賃貸オフィスとしてリニューアルする。
大久保 3月までにリニューアルが完成する予定で、すでに複数のテナントの入居が決まっている。今後、リベールもオフィスとしてリノベーションされることになるが、これにより、立地に恵まれていた駅前でオフィスビルゼロの課題が大きく解消することになる。市にとっては大きなプラス。福岡・天神と特急を使えば30分で結ばれているため、天神ビッグバンが進む福岡市のオフィス不足解消に西鉄久留米駅前も機能できると思う。
加えて、福岡市・天神に比べると、賃料を含めたコストも相当安く抑えることができるため、福岡市との競争力も十分あると確信している。福岡県に進出を検討している企業への誘致活動をさらに強化していきたい。
―JR久留米駅周辺の活性化も引き続き大きなテーマとなる。3月は九州新幹線開業から10年という節目を迎える。
大久保 JR久留米駅は、新幹線開業に合わせて駅を橋上化するため、市は東西自由通路をはじめ、東西両駅前広場、市営駐車場を整備した。当時、市街地側の東口では第1街区として超高層マンションが建設されたが、道を挟んで向かいの第2街区でも6月からいよいよ再開発がスタートする。第1街区同様、組合方式で地上36階建て・地下1階の超高層マンションが建設される。完成予定は3年後の24年11月。一方、西口についてはさまざまな関係者と相談しながらビジョンを描いていきたい。
―都市開発条例の改正について。
大久保 市内にある西鉄、JR各駅周辺で宅地開発がスムーズにできるよう条例を改正した。すでに西鉄天神大牟田線の大善寺駅、宮の陣駅、JR鹿児島本線の荒木駅周辺では、民間事業者が土地を取得し、宅地分譲する動きも出始めている。
―市役所のデジタル化について。
大久保 「e―市役所」というキーワードで進めてきた。まず庁内における電子決裁化率は98%超で、福岡県ではトップクラスの実績だ。業務効率化や意思決定のスピード化を進めるため、全庁的に電子化を進めてきたが、昨年4月からはほとんどの決裁が職員の努力によって想定を上回って電子化することができた。市民サービスでも、市税に関してはPayPayやLINEPayで決済できるほか、マイナンバーカードを取得すれば、住民票や印鑑証明書をコンビニで取得することもできる。そのほか、昨年3月に取得した無料通信アプリ・最大手のLINEの公式アカウントを取得したが、現在の登録数は全人口の約1割強を占める約3万9千アカウントに上っている。
―1期目最後の1年となるが、市政のキーワードは。
大久保 「アフターコロナを見据えたコロナ対応」。コロナ禍で社会全体が大きく変わった。新しい生活様式、いわゆるニューノーマルが着実に定着している。コロナ以前に後戻りすることはないだろう。従ってDXの推進による働き方改革、企業誘致、市民との交流、市内外への情報発信などを従来とは違った方法へ転換する必要がある。コロナ禍というピンチをいかにチャンスに変えていくか。しっかりとした方向性を打ち出していきたい。