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「エッセンシャルワーカー」の使命感で感染対策徹底  九州電力


池辺社長新年インタビュー抜粋

九州電力㈱(福岡市中央区渡辺通)の池辺和弘社長は本誌1月号「新年トップインタビュー」のインタビューに応え、コロナ禍における感染対策や長期ビジョンの進捗状況について話した。以下、インタビューを抜粋。
―今年1年間を振り返っての感想は。
池辺 新型コロナウイルス感染の動向に神経を使った1年だった。電力の安定供給という使命を背負った「エッセンシャルワーカー」に位置付けられるので、それを担う部分で感染者が発生することは避けなければならず、その緊張感は相当なものだった。徹底した感染予防・拡大防止対策はもちろんのこと、予備人員の確保などさまざまなリスクを想定した準備を進めてきた。11月まで感染者0を保ってきたが、残念ながら同月に鹿児島支店で感染者が発生してしまった。電力の安定供給に直接携わるスタッフでなかったのは幸いだった。
―テレワークもかなりの規模で導入したとか。
池辺 本店や支店などで積極的にテレワークを実施し、ピーク時には約3千人が在宅で勤務した。結果として、当初の予想よりも業務は円滑に回っていた印象で、通勤時間を削ることができるで社員にも好評を得ていた。現在も約500人規模でテレワークを続けているが、もっと規模を拡大していいのではないかと考えているところ。
―2019年6月に公表した「九電グループ経営ビジョン2030」の進捗は。
池辺 さまざまな角度から具体的な取り組みが動き出し、いいスタートを切ることができた。とりわけ大きかったのは、地域共生機能と営業機能のシナジーを発揮するため、九州域内の支社と営業センターを「支店」として統合したこと。また九州域外では、九電みらいエナジーによる関東エリアを中心とした電力販売が非常に好調で、契約件数は11月末時点で約2・9万件に達し、新電力の販売電力量ランキングでは、過去最高の全国5位(9月末公表)を獲得している。そのほか、ICTサービスや都市開発事業、不動産事業、空港運営事業、海外事業、さらには新規事業・サービスの創出など、多様な分野で収益拡大に向けた取り組みが加速した。
―「特重施設」の建設で運転停止状態だった川内原子力1、2号機が、11月に1カ月以上前倒しで1号機の特重施設設置が完了し、19日から運転が再開した。
池辺 ひとえに、建設現場における工程管理や効率化の細かい努力の積み重ねが実を結んだ結果。感染対策に気を配った上で、できる限りスケジュールを繰り上げる努力を重ねてくれた現場のスタッフに感謝したい。川内原子力2号機も1カ月前倒しで12月末頃に運転再開する計画。今期業績の利益面に与える効果は極めて大きい。
―第2四半期決算は増収増益だった。
池辺 増収については再エネ買取の増加に伴い、再エネ関係の交付金が増加したことが大きく、大幅に増加した利益については、減価償却方法の変更による費用減が大きく影響している。それでも、新型コロナウイルスの影響や特重設置工事に伴う川内原子力発電所の運転停止の影響など、さまざまな収支悪化要因がある中で、グループ一体となった営業活動の推進や経費削減が、大手電力会社で唯一の中間期の増収増益に結びついた。通期でも増収増益を目指していく。
―都市開発の動きも活発だ。
池辺 7月に、都市開発・不動産・社会インフラの3事業を統合した都市開発事業部を新設し、体制を強化した。九州域内・域外を問わず具体的な動きが活発になっており、都市開発分野では、福岡市青果市場跡地の商業機能を中核としたまちづくり事業や、米国アトランタの賃貸不動産開発、中央区舞鶴でのオフィスビルの開発事業などが現在進展している。

2020年12月22日発行