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(株)アキラ水産
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100年続いた「顧客第一」、これからも貫く
鮮魚仲卸地場トップの㈱アキラ水産が昨秋、社内向けにグループ百年史を編纂。ルーツとなった「明市場」(大正7年)から始まる歴史とこれから目指す理念をまとめた。最も伝えたいのは創業以来息づくDNA「顧客第一主義」「薄利多売」の姿。それはこれからも変わらずに続いていく。
グループ百年史編纂、地元紙に自社歴史の連載も
鮮魚仲卸地場トップの㈱アキラ水産を軸に、仲卸、塩干もの販売、加工など6社で構成するアキラ水産グループ。創業以来、100年にわたって受け継がれてきたDNAである「顧客第一主義」「薄利多売」を改めて感じてほしい——。安部泰宏社長のそんな思いから、昨年秋、グループ百年史「アキラG−BOOK」を編纂した。
同社のルーツは、博多の台所として知られる柳橋連合市場の前身「明市場」(1918年開設)。安部社長の祖父・栄次郎氏が創業し、連日、多くの客でごった返していた。喧噪の中、客は風呂敷を差し出して、栄次郎氏たちはトロ箱から魚をスコップですくい、それを直接風呂敷に移す。「はい、〇〇銭!」と言われた客は代金を支払い風呂敷を受け取る。実に豪快なやり取りで、店内には瞬く間にカラのトロ箱が積みあがっていった。原価に近い値段の魚は、客からも大好評だった。これは、“箱儲け”(積みあがったカラ箱の買取賃分だけの儲け)として、その後も息づいていく。実はこれがアキラ水産グループのDNA「顧客第一主義」「薄利多売」の始まりでもあった。
「明市場」はその後「明百貨店」に発展。しかし、戦争とともに閉鎖。戦後、父の篤助氏が天神で営んでいた鮮魚店を経て、60年に仲卸業に転向してから、安部社長(当時専務)による舵取りが始まった。業界はちょうどその頃から劇的に環境が変化しているが、その中でも同社の「顧客第一主義」は変わらない。というのも、安部社長は「すぐにでもスーパーの時代がやってくる」と新たな顧客ニーズを察知。即座に量販店向けの品揃えに変更し、売り上げを拡大させていった。2000年代に入ってからは、取引先小売店の加工作業軽減のために同社で専用工場を設けて加工分野にも業容を拡大。同時に、安心・安全のニーズに応えるべく、鮮魚仲卸として全国で初めて06年にISO認証を取得。このほか今ではHACCPにも対応するほか、MSC認証を取得した水産物を適切に管理するためのCoC認証も取得した。
グループ百年史「アキラG−BOOK」には、これら時代のニーズにあわせた「顧客第一主義」の歴史から、安部社長が唱えるグループの理念までを網羅。社内の人材育成につなげたい考えだ。
加えて、この春には地元紙の西日本新聞にも「明市場」から始まるグループの歴史と安部社長の歩みについて連載があり、業界内外に広く知られるようになった。
アキラグループ百年史「アキラG−BOOK」 |
「魚食普及」の市場開放、累計約130万人来場
生産者の後継者不足による漁獲高減少や市場の取扱高の減少など、昨今の業界環境は厳しさを増す。そんな時代だからこそ、安部社長が本業とともに力を入れるのが「魚食普及」。その最たるものが市民に長浜鮮魚市場を開放する「市民感謝デー」だ。
08年7月の初開催以来、毎月第2土曜日に催し、今年4月で130回を迎える。安部社長はほぼ全回にわたって会場を訪れ、魚のさばき方を教えたりするなどして来場者と触れ合っている。「市民感謝デー」には今でも毎回1万人程度が訪れ、すっかり市民に定着した。「大変な面もあるが、長く続けることが大事。多くの人に魚に親しんでもらえれば」と安部社長。
顧客を第一に考え、おいしい魚を届けたい。昔も今も、これからも、その思いひとつで走り続ける。
安部 泰宏 社長
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【DATA】
所在地/〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
T E L/092-711-6601
F A X/092-715-3293
創 業/1918(大正7)年
設 立/1947年4月
資本金/4,850万円
事業内容/(福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸全般
年 商/103億円(グループ)
従業員/81人(グループ)
関連会社/ ㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、 ㈱四季海魚魚 魚、㈱アキラ・トータルプラ ンニング
U R L/https://www.akirasuisan.co.jp
(ふくおか経済EX2019年)