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第一交通産業グループ
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半世紀の節目終えて次代に向け新たな一歩
(写真)北九州市小倉南区志井6丁目に開発している「グランドパレス ブランシェ企救丘」のパース(左)
春日原ゴルフ場跡地では51区画の用地を取得し、戸建住宅の販売を始めた(右)
京阪電鉄系のM&Aで7000台の大台に
昨年6月に創業50周年の節目を終え、新しい一歩を踏み出した第一交通産業㈱。昨年10月には京都市伏見区の京阪タクシー㈱など京阪電鉄系列のタクシー子会社6社の全株式を取得し、日本一の保有台数を誇る経営基盤をより強固なものとした。
この大型M&Aでタクシー保有台数は686台を加え、グループ全体では7000台の大台に乗せた。営業エリアは京都府、滋賀県、福井県が新たに増えて全国33都道府県に広がり、関西圏に磐石な営業基盤を築いている。特に大阪府では188台を加えて634台に増え、福岡県に次ぐ保有台数になった。
また、昨年9月にはJR九州と提携して「SUGOCA(スゴカ)」をはじめ相互利用の交通系電子マネーが利用できるようになった。全国で初めてクレジットカード、携帯iD、電子マネーの3つの決済方式に対応できる端末を導入し、福岡市、北九州市で合わせて千台でサービスを始めている。日本初のタクシー無線導入など、常に業界の近代化を導いてきた同社。08年4月には後払い電子マネー「携帯iD」を導入し、利用者の利便性向上でもいち早く対応した。さらに今回の展開で支払いの選択肢を広げ、業界をリードする。
北九州市に大型マンション開発
もう一方の経営の柱の不動産事業では、新たに大和ハウス工業と組んだ千早駅前の超高層ツインタワーマンションが昨秋に分譲開始。第一期分譲で172戸を完売し、その後も好調な販売を続けている。
同時に単独でも地元・北九州市で大型マンションの開発に乗り出した。創業50周年記念事業として開発を進めているもので、場所は小倉南区志井6丁目のモノレール始発駅・企救丘駅近く。通勤・通学に交通の利便性が高く、緑豊かな環境にも恵まれた立地で、総戸数は233戸。同社が単独開発したマンションでは2番目の規模を誇る。その規模や利便性もさることながら、随所に様々な工夫が見られる。特に「子育て支援マンション」としてマンション内に託児所を設置するなど、新たな試みが注目を集めている。
さらに、09年11月に設立した戸建住宅販売の第一ホーム㈱では、建設資材の大量仕入れでコストダウンを図り、各種工事ごとに分離発注する仕組みを確立。徹底したコスト削減でリーズナブルな価格設定を実現した。これまでミニ開発的な展開が中心だったが、春日市の春日原ゴルフ場跡地には51区画の用地を取得。エリアも規模も広がりを見せている。
北九州市小倉北区馬借2丁目の本社ビル |
逆風下でも乗務員を積極採用
08年秋のリーマンショック以降苦戦を続けてきた同社だが、今期に入り回復の兆しを見せている。2月に発表した2011年3月期の第3四半期連結決算状況は、売上高が前年比6.9%増の549億300万円、経常利益が同23.1%増の25億3400万円の増収増益。同時に通期予想も売上高730億円、経常利益30億円に上方修正した。
リーマンショック直後の08年12月、同社は「雇用プラン6000」のキャッチフレーズでタクシー乗務員の積極採用に踏み切った。結果的には3500人が異業種から入社し、今では団塊世代で定年退職した約千人と入れ替わり貴重な戦力になった。数的な効果だけでなく、「入社後のモチベーションが高く、社内に与えた影響も大きかった」(田中社長)と、タクシーの稼働率アップに貢献している。逆風下でも着実に手を打ってきた成果が、まさに実を結んできたといえよう。
DSKサービスが開発した「Natto(ナットー)」の案内表示 |
中国事業やアプリ開発など新展開も
こうしたなか、新しい展開も始まった。昨年5月には上海事務所を開設し、中国富裕層を対象とした医療・健康サービスに向け動き出している。今年6月をめどに母体となる現地法人を設立する計画で、「医者や弁護士などの富裕層でプライベートの社交クラブのような集まりを作り、レジャーや温泉などの情報に加えて日本での医療サービスを紹介する仕組みを考えている」と話す。すでに福岡市内のいくつかの病院と提携を進めており、実際に一部の病院には人間ドッグの視察を目的に中国から数人を送り込んだという。
一方、子会社の㈱DKSサービスでは4か国語に対応した訪日外国人向け多言語案内サービスのiPhone向けアプリケーション「Natto(ナットー)」を開発。2月に「App Store」でサービスを開始した。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、同社も宮城県と茨城県の営業所の建物と営業車両の一部に損壊被害を受けた。現状の調査では比較的軽微な被害に止まっているが、一部の従業員と連絡が取れていないため、予断を許さない。
また、現地ではライフラインの遮断、道路損壊、LPGなど燃料の供給状況から営業活動にも支障が出ている。鉄道をはじめ交通インフラのほとんどがマヒ状態の中で、被害地の足としてタクシーにかかる期待は大きい。現地では交通インフラの一翼を担うタクシー事業として、一日も早い通常業務体制への復旧に向けて取り組んでいる。
田中 亮一郎 社長 たなか・りょういちろう/1959年4月4日生まれの51歳、東京都出身、青山学院大学経済学部卒。82年4月全国朝日放送に入社。85年7月第一交通産業㈱非常勤取締役に。96年5月副社長を経て、97年2月から代表取締役副社長。2001年6月社長。2010年12月北九州商工会議所副会頭に就任。趣味はゴルフと中学時代から続けているテニス |
企業DATA
所在地 〒802-8515 北九州市小倉北区馬借2-6-8
TEL 093-511-8811
FAX 093-511-8812
創業 1960年6月
設立 1964年9月
資本金 20億2,755万円(グループ約48億円)
事業内容 タクシー事業、バス事業、不動産事業、金融事業他
年商 約706億円(連結10年3月期)
代表者 田中亮一郎
従業員 約14,300人(臨時従業員含む)
出先 (支社)福岡県、東京都(グループ事業所33都道府県)
関連会社 那覇バス㈱、琉球バス交通㈱、㈱第一ゼネラルサービス、第一OKパーキング㈱、第一ホーム㈱など125社
URL http://www.daiichi-koutsu.co.jp
採用情報
募集職種 ①総合職:業務、営業②一般職:事務
応募資格 2012年大学卒業見込み(全学部全学科)
問合せ先 TEL.093-511-8811
担当 総務部人事課 山川、古橋
(ふくおか経済EX2011年)