FEATURE

ふくおか経済EX 2010

新栄住宅㈱


創立40周年を機に総合不動産業に転進

(写真)2月5日に開かれた祝賀会の鏡開き(左から5人目が木庭社長)

創立40周年記念祝賀会を開催

地場大手マンション開発・新栄住宅㈱が創立40周年の節目を迎え、2月5日にホテルニューオータニ博多で記念祝賀会を開いた。
冒頭あいさつに立った木庭社長は、創業期の想い出などを交えながら次のように語った。「多くの方との出会いがあって本日を迎えられた。40周年の節目を機に、今後はマンション開発だけでなく、管理や賃貸などストック事業にも力を入れ、安定経営を進めていきたい」。その言葉には、バブル経済崩壊を乗り越えてきた老舗デベロッパーの誇りと、先行き不透明な経営環境のなかでも生き抜いていく決意が感じられた。
着席式の祝賀会には、取引先など約300人が出席。大関・琴欧洲など佐渡ケ嶽部屋の力士らも祝いに駆けつけ、会場を盛り上げた。地元政財界をはじめ様々な業界から集まった老若男女の多彩な顔ぶれを見ると、その歴史の重みと幅広い人脈が垣間見える。

マンション専業から総合不動産業に

木庭社長の言葉にあるように、同社は創業40周年を機に大きな路線転換を打ち出した。すなわち従来のデベロッパー専業の展開を改め、総合不動産業を目指すもので、収益確保の観点から不動産賃貸や管理事業を積極的に進める。
すでに、福岡市の都心では大名の商業ビル、長浜のワンルームマンションとファンド系のビルを購入。両ビルとも13〜15%の高い利回りで、入居率も高い物件だが、さらにマンション管理で培ったノウハウを生かすことで入居率をアップさせた。
加えて、昨年暮れには熊本市城東町の店舗付立体駐車場を取得。飲食店などが入居する3階建てビルと併設する207台収容の機械式立体駐車場を取得したもので、名称は「ライオンパーキング」。24時間営業で、ハイルーフ車やRV車も駐車できる。同市で一番の繁華街の上通りや下通りの近くに位置するファンド系の物件で、買い物客などが利用することから高い稼働率を誇る。
同社では、今後もこうした物件の買い付けを積極的に進め、収益事業として展開していく。管理物件は現行の5,000戸から1万戸まで増やし、安定収入を確保するとともに大規模改修やリフォーム事業など新たな可能性を探る考え。また、新しい経営形態に合わせて組織のスリム化を図り、経営体質を強化した。
福岡でも不動産業者の経営破たんが続き、まるでかつてのバブル崩壊期を見るように淘汰が進んだ。バブル崩壊を生き抜いてきた経験豊かな猛者らしく、こうした市況を確かな目でとらえた上で、積極的な経営革新を図ったといえよう。

取得した福岡市中央区大名2丁目の商業ビル

住宅不況のなかで在庫一掃

もちろん、路線転換といっても、今後もマンション開発を軸にした展開に変わりはない。3〜5年後には売上ベースで、デベロッパー事業50億〜60億円、収益事業10億円、管理事業10億円の割合を目指し、年間供給戸数を200〜300戸に絞り込んだ展開を図る。
そのマンション開発では、ここ数年は新規物件の供給を控え、在庫販売に力を入れてきた。住宅不況といわれる市場で、いち早くキャッシュバックをはじめとするキャンペーンを積極的に展開。同業他社が苦戦を強いられるなかで、一人勝ちともいえる展開で在庫を一掃した。
もちろん、この背景には価格戦略だけでなく、40年間で培った安心と信頼がある。09年9月現在で、139棟、8,824戸を供給してきた同社。その95%以上が福岡経済圏で占められ、地元密着の展開を図ってきた。開発される物件の大半はデザイナーズマンションで、ミセスの視点で極めた先進性能と、洗練されたデザイン、加えて、時代が求める『信頼性』に対する高い評価も得て、「アンピール」ブランドとしてステータスを確立した。
その集大成ともいえる「アイランドタワースカイクラブ」が、2010年度国際コンクリート工学連盟賞の最優秀作品賞賞に選定された。世界で最も権威のあるfib(国際コンクリート連盟)が4年に1度開催される国際会議に合わせて選考するもので、本年度は世界で2作品が受賞した。同マンションは、福岡市東区のアイランドシティ内に建設された42階建ての超高層トリプルタワーマンション。08年にはグッドデザイン賞も受賞しており、今回の受賞で構造面でも国際的に高い評価を受けたことになる。
また、バブル崩壊の教訓を生かしてコツコツと地道に自己資本を積み上げ、ミニバブルと呼ばれた地価の高騰にも目を向けることはなく、愚直なほどに堅実経営を貫き続けた。今では地元業界でトップクラスの財務内容を誇り、地元福岡で安心と信頼を確立した。住宅不況になかで在庫一掃できたことは、こうした”安心”と”信頼”を抜きには語れない。

新規開発に新たなビジネスモデル

一方、在庫を一掃したことで、新たな開発に乗り出す日も近い。ただ、住宅市場は住宅ローン減税や低金利、建設コスト下落など好材料は揃ってきたものの、消費の冷え込みから十分に回復したとはいい難い。
買い手市場のなかで従来手法の展開に限界があるため、地域ニーズを十分に調査した上で開発を進める。例えば、病院の併設など新しい可能性も研究。現在福岡市内を中心に未着工分の5つの用地を確保しているが、規模などを含め新たなビジネスモデルを構築した上で展開する方針という。
不滅のブランドと堅実経営で、地元福岡の地に築き上げてきた”安心”と”信頼”。地場マンション業界を常にリードしてきた同社だが、40年の節目を機に大きく生まれ変わろうとしている。マンション開発についても、新たなビジネスモデルの構築を図る。「市場は過去に経験がないほど変化しており、生き残るには当社も変わらなければならない」と木庭社長。バブル崩壊を生き抜いてきた猛者だけに、次の一手に注目が集まる。

木庭 兌 社長
こば・とおる/1935年11月9日生まれの74歳。福岡県山門郡瀬高町出身、県立山門高校卒。東峰住宅産業から独立し、70年新栄住宅㈲を設立。80年から「アンピールマンション」の販売を開始。02年9月に早良区城西から現在地に本社を移転。県内供給実績トップを誇る企業に成長させた

 

企業DATA
所在地 〒810-0041 福岡市中央区大名2-11-25
TEL 092-762-7711
FAX 092-762-7710
創業 1970年2月
設立 1970年2月
資本金 4億8,000万円
事業内容 マンション分譲・販売、不動産・住宅の流通・仲介、ビル事業・賃貸管理
年商 125億2,141万円(09年9月期)
代表者 木庭兌
従業員 35人
出先 (賃貸事業物件)福岡市中央区、博多区、南区、北九州市、筑紫野市、熊本市
関連会社 ㈱新栄地建、新栄総合管理㈱
URL http://www.empire-mansion.com

(ふくおか経済EX2010年)