FEATURE

ふくおか経済EX 2010

㈲味の兵四郎


“食育”の促進と“日本食文化”の継承に取り組む

(写真)朝倉市安川地区にて生産者に協力してもらい米づくりを体験

博多の人々が昔から愛用している“あごだし”。その代表的な商品として知られている「あご入兵四郎だし」を博多の名産品として広めているのが㈲味の兵四郎だ。平戸沖の旬のあごに加え、北海道産の昆布や九州産の椎茸などの厳選した上質の国産素材をふんだんに使用、旨味とコクを凝縮した逸品は揺るぎない人気を誇る。国内の百貨店への卸売や通信販売のほか、香港、シンガポール、台湾など海外にも商品展開しており、国内外問わず多くの家庭の食卓に美味しさを届けている。

主力商品の「あご入兵四郎だし」

環境保護のきっかけに「兵四郎米」

同社では、美味しさへのこだわりはもちろん、食品会社として“食の安全や”“食育”の観点から自然保護への配慮も忘れない。野見山社長は「山から流れてくる水は、海に到達するまでに畑の農薬や生活排水を含んでしまう。海の浄化能力が低ければ、魚も有害物質を含んだものになる」と警鐘を鳴らす。このことをきっかけに、7年前から朝倉市安川地区の契約農家とともに、農薬や化学肥料に頼らず、有機肥料で栽培した「兵四郎米」を開発、一昨年より販売も開始した。09年には、社員とその家族が田植えから刈り取りまでを体験、生産農家や地域の人々と神社で収穫祭を実施。地域のコミュニティ再構築にも大きな貢献を果たしている。
また、本当に生命力のある無農薬の野菜には虫がつかないということから、「現代は土にミネラルが足りておらず、エネルギー不足の食物が多い。微生物を撒くことによる菌の作用で生態系を回復し、土が持つ本来の力を取り戻すことが大切」と提言する。その方法として「とにかく昔のやり方でいい。戦後の食糧難だった時代では生産性を重視するために農薬や化学肥料を使用してでも多くの食料を作ることが不可欠だった。しかし、現在は本当に良い食材を絶対量生産していくことが重要ではないか」と説明する。今後は農業へさらに力を入れていき、「兵四郎米」の生産力向上も目指していく。だが、これは利益を出すことが目的ではなく、販路の形成によって地元の農家を守ることを最大の目標としている。日本の伝統と食文化の継承のために担う役割も大きい。

筑紫野市美しが丘北の6階建ての本社外観

“志”を持った人材を育成

08年から本格的な新卒採用を開始し、人材育成にも積極的な同社。さらなる飛躍のために企業基盤の整備を重視し、そのための人材確保と社員それぞれのレベルアップを促進している。経済が停滞し、各大学では就職内定率も低迷しているが、「安易な人生を過ごしてもらいたくない。どこかで働かなければならないから働くのではなく、きちんと自分の人生を設計することが大切。一生を託すことができるかどうかを考え、情報収集すれば企業とのミスマッチも防げる」と学生への想いを語る野見山社長。さらに、「無意識に会社勤めという考えを持つのではなく、自分を見つめて考えてもらいたい。人は“志”を持たなければいけないし、“志”があるからこそ動いていける」とエールを送る。その言葉通り、同社では社員の自主性を尊重するとともに、社員の独立を推進している。独立を意識することで仕事に対する姿勢に変化が生まれ、社員同士の切磋琢磨による相乗効果が期待できるというものだ。

“食”と“人”を育てる企業へ

日本の食料自給率は41%(平成20年度)と、年々低下を続けている。これは世界の先進国と比べて非常に低い数値で「自国で自国民を食べさせることができる体制は国際社会で必要」とする野見山社長。今後、さらに農業分野への取り組みを強化していく同社。“食”と“人”を育てる企業として各分野からますます多くの注目を集めていくに違いない。

野見山 正煇 社長
のみやま・まさあき/嘉穂郡庄内町出身、1951年10月9日生まれの58歳。立教大学経済学部卒。趣味は旅行、飲み食い、読書

 

企業DATA
所在地 〒818-0035 筑紫野市美しが丘北3-1-3
TEL 092-926-2958
FAX 092-926-7168
創業 1989年(平成元年)
設立 1993年(平成5年)5月
資本金 500万円
年商 15億8000万円
代表者 野見山正煇
従業員 56人
事業内容 食品小売、卸売業
URL http://www.ajino-hyoshiro.co.jp

採用情報
募集職種 卸営業・販売、企画・広報、 商品開発、経理・総務
応募資格 専門、短大、大学、大学院新卒
問合せ先 TEL.092-926-2958
担当 総務部 世戸

(ふくおか経済EX2010年)