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ふくおか経済EX 2022

㈲久松


県内自治体向けふるさと納税運営支援が飛躍

松田健吾 社長
まつだ・けんご/福岡市出身。1979年10月18日生まれの42歳。福岡工業大学付属高校卒。18歳の頃から家業の仕出し屋「久松」で働き、24歳でおせちのネット販売に参入。以降、販売戦略、製造設計、経営戦略を立てる同社の屋台骨。2019年5月社長就任。趣味は飲食店巡り

 

創業30周年を迎えた久松では、新たに始めたECコンサルティング事業が大きく飛躍。特に県内自治体を対象とした「ふるさと納税」サイトの運営支援が伸長し、今期は過去最高となる売上高29億円を見込む。今後も『毎日がハレの日』を提供する総合食品企業として、さらなる成長を遂げようとしている。

業務拡大、今期売上高29億円

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要、EC市場の拡大が追い風となり、昨年末は前年比1万個増の17万個のおせちセットを販売した久松。
同社では長らく主力のおせちが売り上げの大半を占めてきたが、近年はおせちに続く人気商品の発掘・開発に注力。新商品で獲得した顧客に対して年末のおせち販売も案内することで事業間同士のシナジー効果を高めている。また、おせちセットの販売を委託する協力会社の拡大、中途社員の採用による人員の再構築、製造現場での生産性向上など、EC事業を支える課題にも積極的に取り組んでいる。
EC参入以降、近年は販売個数や売上高で安定した結果を残してきた同社。しかし、一昨年に本格稼働させた受注管理システムが機能して以降は既存業務を約2〜3割削減し、人員やリソースを注力する事業に集中させる環境が整った。その結果、売上高は22億円(19年度)、27億円(20年度)と伸長し、今期は約29億円を見込むなど、“踊り場”を脱出して拡大期に入っている。

(写真)同社主力商品のおせちセット。写真は一番人気の「博多」(税込み15,800円)

EC通じて福岡の魅力、全国に発信

増収増益の大きな要因には、一昨年から本格的に開始した、ECコンサルティング事業の飛躍がある。前述した自社開発の受注管理システム導入後、一日あたりに受注できる業務量が飛躍的に向上したことで、大幅な人員増を実施することなく、主力のおせち事業と並行してコンサルティングで受注した業務を実施できるようになった。
「当初コンサルティング受注を視野に入れたシステム運用ではなかったが、結果的に事業を拡大するきっかけになった」と経緯を話す松田社長。同システムは食品メーカーとしてEC事業に進出し、販売を伸ばしてきた同社のノウハウが詰まっており、コロナ禍で事業転換を図るためにEC参入を目指す、伸び悩んでいる企業との相性も良いため、今後も同様の仕組みを生かして企画・デザイン・管理を請け負っていく。
コンサルティング事業の中でも「ふるさと納税」サイトの運営支援は、近年大きく伸長した事例の一つだ。企画提案、返礼品開発、ページ制作、物流、受発注をトータルサポートする成果報酬型のサービスで、これまでに県内3自治体への支援を受託し、当初予想を上回る寄付を集めてきた。認知度や理解を高めるため、専用のふるさと納税サポートサイトを開設したほか、2022年度も県内3自治体の支援が決定している。
「寄附者様との強いつながりを持つために必要なのは、その地域性を熟知した会社でなくてはならない。そのため当社では支援対象は福岡県内の自治体のみに絞っている。自治体の皆様がお困りの際、最初にご相談の相手として思い出すのが私たちの顔であると願っている」と語る松田社長。“とことん地元ファースト”のECコンサルティングで課題解決をサポートし、福岡の魅力ある商品や文化を県外に発信していく。

(写真)同社社員と松田健吾社長(後列中央)。現在は人材育成に注力するため新卒採用を停止しているが、数年後をめどに再開する予定

 

【DATA】
所在地/〒811-2304 糟屋郡粕屋町大字仲原2839-7
博多オフィス/〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央5-14 7F
TEL/092-260-1313
FAX/092-260-1880
創業/1982年9月
設立/1986年8月
資本金/300万円
事業内容/婚礼食材、お惣菜食材の製造・販売、おせち料理メニュー製造販売・提案
年商/25億円
従業員/96人(パート含む)
出先/博多オフィス
URL/https://hisamatsucorp.jp

 

(ふくおか経済EX2022年)