FEATURE

ふくおか経済EX 2015

㈲久松


自社での販売急成長、ネット事業と2本柱に

(写真)昨年3月に博多駅前に移転したEC事業部。写真中央が松田健吾常務

昨年、EC事業部を博多駅前に移転開設した久松は、今年もおせちセットを11万4000個販売。楽天市場の「ショップ・オブ・ザ・イヤー」のグルメ部門ジャンル賞を2年連続で受賞した。今年度からはネット事業だけに頼らない自社販売にも注力している。

ショップ・オブ・ザ・イヤー2年連続受賞

同社の「博多美味いもの便 博多久松」が1月に受賞した「ショップ・オブ・ザ・イヤー2014」は、国内最大規模のオンラインモール楽天市場に出店する約4万2000店舗の中から、年間優秀店舗を表彰するタイトル。受賞枠は約120店舗、受賞確率は1%を切る、国内トップレベルのEC事業者を決めると言っても過言ではない、1年に一度のイベントだ。
2004年に通販ビジネスに参入した同社。松田健吾常務は10年間を振り返り、「一度受賞した店舗の4割が次の年には落選する。昨年も嬉しかったが、2年連続受賞は身が引き締まる思い」と笑顔で語る。
参入初年度90個だったおせちセットの販売個数は、昨年大台の10万個を突破。そして、今年(14年末)は前年比1万個増の11万4000個と大きく伸長した。
過去にも前年比1万個の伸びを同社は経験し、時には2万個増えた年もあった。しかし、「今回の成長要因は、これまでとは違う」と健吾常務は強調する。

年間11万個以上販売する博多久松のおせち

花開いたDM戦略が新たな道筋

13年と14年で違う点、それは同社が仕掛けたDM(ダイレクトメール)戦略の“開花”だった。
同社では、おせちセットを販売開始する9月から、過去に同社のおせちセットや惣菜を購入したユーザーに、おせちのカタログセットを送付するが、今年はその発送先を選別し、発送数を増やしたところ、前年比2倍ちかく注文が伸び、最終的にはDMによる自社販売だけで約1万個を販売した。
自社の販売先を持つことは、ネットでの販売を主戦場とする同社にとって、1つの販売チャネルに偏るリスクを回避する、大きなきっかけになる。健吾常務は新たな事業戦略の道筋に「3年以内には、自社販売を楽天市場での販売量と同規模に伸ばしたい」と期待を寄せる。

商品開発で意外な需要掘り起こす

ネットとリアル、双方での販売網を強化する同社では、おせちの中に入れる料理やその他の商品開発にも力を注いでいる。
1982年、健吾常務の父・五郎氏が博多区千代で始めた仕出し屋が原型の同社が、ネット販売で急速に成長できたのも、料理人の技術や製造ノウハウがあったからだ。現在でも、その年の購入者の声が寄せられる2月頃には、おせちのラインナップの変更や味付けの調整などを始め、社員総出で試食を重ねるのが、社内の日課となっている。
そして、同社では3月に新商品となる「久松謹製 お食い初めセット」を発売。生後100日前後の新生児の乳歯が生え始めた頃、「一生涯、食べることに困らないように」という願いを込めて行われる同儀式用に開発された同商品は、おせち同様“家庭内行事”をターゲットにした商品だ。
「核家族が増えたり、調理に手間がかかったりと、近年ではさまざまな行事やイベントが減少傾向にある。商品次第では、こうした市場を掘り起こせるはず」と語る健吾常務。
今後もお中元やお歳暮など、季節ごとのパーソナルギフト商材にも着目しながら、食を通じて“幸せ”を提供する総合食品メーカーを目指す。

同社では初となる新卒者4人が入社。事業拡大に向けて、リクルートにも力を入れている

 

企業DATA
所在地 〒811-2304 糟屋郡粕屋町大字仲原2839-7
博多オフィス 〒812-0011 福岡市博多区博多駅前2-17-1 博多プレステージ別館4F
TEL 092-260-1313
FAX 092-260-1880
創業 1982年(昭和57年)9月
設立 1986年(昭和57年)8月
資本金 300万円
事業内容 婚礼食材、お惣菜食材の製造・販売、おせち料理メニュー製造販売・提案
年商 15億1,000万円
代表者 松田久美子
従業員 15人
URL http://hisamatsucorp.jp/

採用情報
募集職種 総合職、品質管理、製造
応募資格 全学部全学科(四年制大学、短大、専門学校卒業見込み)
採用実績 4人(2015年度)
採用予定 若干名
問合せ先 TEL.092-260-1330
担当 松田健吾、田村佳子

(ふくおか経済EX2015年)