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㈲久松
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新工場建設でおせち業界トップ水準へ
松田健吾 社長(写真左)
まつだ・けんご/福岡市出身。1979年10月18日生まれの43歳。福岡工業大学付属高校卒。18歳の頃から家業の仕出し屋「久松」で働き、24歳でおせちのネット販売に参入。以降、販売戦略、製造設計、経営戦略を立てる同社の屋台骨。2019年5月社長就任。趣味は飲食店巡り
(写真)昨年11月の田川市への新工場進出調印式。二場公人市長(右)も新工場がもたらす効果に期待を寄せた
今年創業40周年を迎えた久松では、2024年春の稼働を目指し、田川市の白鳥工業団地におせちや食品の製造工場を建設する。毎年伸びるおせちの需要を背景に、16億円をかけて年間最大生産能力を30万個増の50万個超に引き上げ、市場全体の1割を占める生産体制を構築することで業界トップを目指す。
おせち生産能力2.5倍の最大50万個に
年末年始におせちを約20万個販売する久松では、市場の伸びを背景に田川市の白鳥工業団地におせちや食品の製造工場を建設している。
同社“念願”ともいえる新工場の敷地面積は1万1212㎡。製造機能だけでなく、商品を冷凍する倉庫やテストキッチン付きの撮影スタジオなど商品力や製品管理能力を底上げする充実した設備を併設し、パートを中心に当初50人、3年後には100人新規雇用するほか、完成後は昨年9月に設立した関連会社の㈱博多久松(本社同所、松田健吾社長)の本社機能を新工場に移すなど、田川市の発展にも寄与する取り組みとなる。
現在生産しているおせちセット20万個は本社工場でまかなえる最大の生産個数であり、「数年前から今後さらに成長、販売個数を伸ばすために新工場の必要性を感じていた」と語る松田社長。新工場での生産能力は3年以内に年間30万個を見込み、現工場と合わせると現状2.5倍の最大50万個が生産可能。おせちの年間流通数が500万個といわれる中、50万個という数値はそのうち約1割を占める形となり、業界トップの水準となる。現在は上位数社が同数程度で固まっている状況だが、当社はそこから頭一つ抜け出た位置を狙っていく。
(写真)同社主力商品のおせちセット。 写真は一番人気の「博多」(税込み15,800円) |
稼働後は返礼品開発、卸売に注力
40年前にホテルや料亭向けの高級仕出し屋として創業した同社は2004年に通販サイト「楽天市場」で「博多久松」ブランドのおせちセット販売に参入し、毎年販売個数を伸ばしてきた。以降、「食品製造業」 と 「EC事業」を主軸に据え、ITを駆使したECと人の手を必要とする食品製造を社内に置く事で、それらの連携を高める事が他社には無い久松の強みと魅力を生み出している。
新工場建設後はこの両輪をさらに飛躍させる。まず、現在受託している田川市へのふるさと納税支援事業の一貫として、同市内の事業者と連携、もしくは地場産品を使った同社オリジナルの「返礼品」を開発。今後約300種類の新商品開発を計画しており、生産機能を持たない事業者からはOEM生産を受託し、工場の稼働率を引き上げていく計画だ。
また、もう一つ伸ばす分野が法人への「卸売」。現在の卸個数は約3万個だが、今後は法人営業の人員を3~4人程度新規採用し、自社のおせちや他製品の販売を委託する営業活動を積極的に展開していく。将来的には卸売だけで10万個の販売を目指す。
新工場がフル稼働した際の売上高(2026年4月期)を約70億円と同社では試算。今期の35億円から倍増となる見込みだが、企業規模に見合った人員体制、販売チャネル、財務基盤など、経営力の向上に一層努めていく。
これまで『ハレの日』の美味しさを提供する企業として成長を続けてきた久松。「お客様に『毎日がハレの日』を感じてもらえるよう、総合食品企業の実力を磨いていきたい」と新たな歩みを進める。
(写真)田川市白鳥工業団地に建設する新工場の完成予想パース |
【DATA】
所在地/〒811-2304 糟屋郡粕屋町大字仲原2839-7
博多オフィス/〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央5-14 7F
TEL/092-260-1330
FAX/092-260-1880
創業/1982年9月
設立/1986年8月
資本金/300万円
事業内容/婚礼食材、お惣菜食材の製造・販売、おせち料理メニュー製造販売・提案、ふるさと納税運営支援事業
年商/29億円(2022年4月期)
従業員/96人(パート含む)
出先/博多オフィス
URL/https://hisamatsucorp.jp
(ふくおか経済EX2023年)