FEATURE

ふくおか経済EX 2015

㈱太平環境科学センター


自動分析装置の開発ノウハウを強みに多角化を推進

(写真)自動化の皮切りとなった国内初の自動分注機。卓越した技術とネットワークの結集が分析工程の自動化を実現した

高精度、かつスピーディーな分析が可能な自動分析装置の自社開発で注目を集める。同業他社や公的研究機関からの評価も高く、今後は装置の販売を中心とした新ビジネスも本格化。「完全無人ラボ」の実現を目指し、これからも革新的な技術への挑戦が続く。

2つの特許と支援事業認定で高まる期待

労働集約型産業の中でも、常に高い精度と速さが求められる環境分析業務。同社ではその自動化に果敢に取り組み、2011年には分析する検体をポリ容器からシャーレなどに自動で取り分ける国内初の「検査水分注装置」を、そして2012年秋には検体の仕込みからインキュベーター(恒温培養器)搬入までの完全自動化を実現した「細菌検査装置」を開発し、受注数を飛躍的にアップさせている。
2014年には細菌検査装置で2つの特許(第5495453号、第5563637号)を取得したのに続き、水の汚染を示す指標BOD(生物化学的酸素要求量)の測定を完全自動で行う装置も新たに開発。今年2月には自動化装置メーカーの㈱テラシステム(熊本市、寺本力人社長)と、これらの自動分析機の開発に伴う新連携が高く評価され、九州経済産業局から支援事業として認定されている。
この画期的な分析装置群の登場には、同業他社はじめさまざまな研究機関も着目。動画サイトの紹介などで同装置の存在が広く知られたこともあり、最近は全国からアライアンスなどの引き合いが急増。水質や食品に関する検査機関、医療・化粧品メーカーへの装置の提案やカスタマイズの受注など、今後本格化させる多角化に向け大きな弾みとなった。

水道GLPの認定証授与式に参加した関係者ら。同認定は水道水質検査の精度と信頼性保証を確保するため、自治体の水道局など大規模な水道事業体が取得している資格認証で、民間企業における九州での認可は2例目となる

省力化で大きく改善した職場環境

自動分析装置の導入は同社の職場環境も大きく変えた。様々な工程を同装置に任せることで、ヒューマンエラーやコンタミネーションを防ぎ、さらなる分析精度の向上に成功。また分析従事者はこれまでの単純作業から解放され、よりクリエイティブな仕事にシフトすることで、生産性の向上に繋げている。
さらに以前は当たり前だった残業や時間外労働も激減するなど、自動化による省力化は社員の労働時間も大幅に短縮させた。今では週二日のノー残業デーや、有給休暇を利用した最大9日間のリフレッシュ休暇を制度化。社員旅行はじめ社内のさまざまなレクリエーションを通じてコミュニケーションを促進することで、組織としての結束力は強まり、活気ある職場へと生まれ変わった。
「分析工程の自動化によるメリットを肌で感じることで、作業のさらなる高効率化へ向けた改善案を寄せるなど、社員は自動化への気概を持ちながら高い意識で仕事に取り組んでいる」。こう胸を張る坂本社長は、自動分析装置に対する社員の満ち溢れた自信と誇りに、分析屋としてのさらなる飛躍への手応えを感じている。

2014年春にはふくおか経済選抜チームとのソフトボール大会を実施し、親睦を深めた

施設拡張で目指すは完全無人ラボ

近年は長崎大学と遺伝子技術によるレジオネラ菌検出技術の迅速化を目指した共同研究に加え、佐世保高等専門学校とは、プラズマによる殺菌・滅菌技術の実用化に向けた開発にも着手するなど、産学連携を通じた新技術の開発にも積極的に取り組む。また2014年7月には、本社と長崎試験所が水道水質検査の優良試験所規範(水道GLP)認定を取得。分析会社としての社会的信用力も年々高まっている。
今後5年内には検体の仕分けから仕込み、測定までの自動化に対応するために施設の拡張を計画している。まさに坂本社長がかねてから目標としてきた“完全無人ラボラトリー”が現実となる日はそう遠くなさそうだ。

坂本 雅俊 社長
さかもと・まさとし/久留米市出身、1957年8月30日生まれの57歳。久留米工業高等専門学校卒、趣味は山登り、読書

 

企業DATA
所在地 〒812-0863 福岡市博多区金の隈2-2-31
TEL 092-504-1220
FAX 092-504-1523
設立 1973年7月
資本金 4,000万円
事業内容 飲料水検査、水質・土壌・大気分析、ダイオキシン類分析、土壌汚染状況調査、各種自動分析装置の開発
年商 5億5,102万円(2014年6月期)
従業員 67人
出先 (事業所)長崎試験所(営業所)佐賀、大分、熊本、山口
URL http://www.taihei-esc.com/

(ふくおか経済EX2015年)