FEATURE

ふくおか経済EX 2016

㈱太平環境科学センター


高い信頼と技術力で注目集める分析業務自動化のパイオニア

環境分析業務の自動化で新たな境地を切り開いてきた。その核として注目を集めるのが自動分析装置の開発だ。高精度、かつスピーディーな分析を可能にするなど高い技術力への評価はもちろん、最近は省力化により大幅に改善した職場環境にも大きな注目が集まっている。

新連携支援による新型デモ機が今春完成

人の技術に頼ることが多い環境分析業務において、いち早く「自動化」に取り組み、今や九州を代表する分析会社へと成長した。
検体から各種水質検査機器用バイアルに自動で取り分ける「自動分注機」を皮切りに、検体の仕込みからインキュベーター搬入までを行う「細菌検査装置」、さらに水の汚染を示す指標BOD(生物化学的酸素要求量)を測定する「BOD分析装置」など、同社の高い技術力とノウハウを活かした装置を次々と開発。特許も3件取得しているほか、2014年7月には水道水質検査の優良試験所規範(水道GLP)にも認定されるなど、先端技術の画期的な装置群とともに、信用度の高い分析会社としての知名度は着実に増している。
2015年2月には、これまでの取り組みが高く評価され、自動装置メーカーの㈱テラシステム(熊本市)と、「自動細菌検査装置及び関連装置の開発・事業化」について、九州経済産業局から新連携支援事業の認定を取得。今春にはその補助金を活用した細菌検査装置の新型デモ機が完成している。垂直6軸多関節ロボットを2台有したこの装置は、従来のモデルに比べ省スペースで処理能力も格段に向上。水質や食品に関する検査機関はもちろん、医療・化粧品メーカーへの装置の提案やカスタマイズ受注にも応用展開していくことで、外販需要の掘り起こしも期待される。

2015年11月、社内に顧問弁護士から寄贈された約1500冊の本を自由に借りられるライブラリーを新設

自動化で快適な職場環境と女性活用を実現

 分析装置の自動化は、ヒューマンエラーやコンタミネーションを防ぎ、スピーディーで高精度な分析を実現。同時に分析従事者もこれまでの単純作業から解放され、その分の余力や時間をクリエイティブな仕事に回せるようになり、生産性が飛躍的にアップすることは明白だ。
また省力化による社員の労働時間の大幅な短縮によって、同社では週2日のノー残業デーや、有給休暇を利用した最大9日間のリフレッシュ休暇が制度として定着。社員旅行やさまざまなレクリエーション活動に加え、自由に読書ができるよう、約1500冊の本を置く図書ライブラリーも開設するなど、職場環境は劇的に改善している。
また技術営業として女性スタッフを配置し、ニーズに応じたきめ細かな分析と結果報告にフィードバックする試みもスタート。女性ならではの視点や気配りが顧客からとても好評で、今後も積極的に女性社員の活用を進め他社との差別化を図っていく。
労働集約型業界の中、これらの事例は残業や時間外勤務が当たり前だった数年前では、まず考えられなかったことだ。

社員のスキルアップに期待、付加価値の高い営業展開を

2年前からは外部研修を取り入れ、今秋は顧客対応をはじめとする接遇のレベルアップを目的とした実践的な社員教育が本格化する。
「ただ受注した分析業務をこなすだけではダメ。原因究明や改善策など+αの付加価値を提案していくことが重要。求められているのが何かを常に考え、使命感を持って向き合うことでお客様の信頼を得ることができる」。そう坂本社長は社員の高い次元でのレベルアップを促す。「人の成長」は大事な経営資源。それを活かしてこそ“完全自動ラボ”への道がぐっと近づく。

「BOD分析装置」で取得した3件目の特許(2015年11月20日付)の認定書を手にする坂本社長

企業DATA
所在地 〒812-0863福岡 市博多区金の隈2-2-31
TEL 092-504-1220
FAX 092-504-1523
設立 1973年7月
資本金 4,000万円
事業内容 飲料水検査、水質・土壌・大気分析、ダイオキシン類分析、土壌汚染状況調査、各種自動分析装置の開発
年商 5億6,537万円(2015年6月期)
代表者 坂本 雅俊
従業員 64人
出先 (事業所)長崎試験所(営業所)佐賀、大分、熊本
URL http://www.taihei-esc.com/

(ふくおか経済EX2016年)