FEATURE

ふくおか経済EX 2011

㈱三好不動産


顧客の囲い込み図り既存事業を深耕
アジアとの交流緊密化に備え中国進出も

(写真)フランス国旗をイメージした部屋「トリコロールスタイル」。「スマイルデザインプロジェクト」の一環

今年7月で創立60周年を迎える㈱三好不動産は、第60期がスタートした昨年10月から、「深耕と進展」をキーワードに展開。既存事業を深掘りする「深耕」の部分では、“顧客の囲い込み”に主眼を置いた施策を次々に打ち出している。
「超・不動産宣言」を掲げる同社は、主要顧客でもある賃貸物件オーナーの不動産以外の分野も含めた資産全般をサポート。三好修社長は「そうすることでオーナー様との関わりをしっかり持ち、お互いの信頼関係を構築する。その延長線上にビジネスがあるという形が“囲い込み”」と語る。

「人」をキーワードに事業領域拡大

昨年5月には、従来、相続対策を柱とした資産コンサル部門として社内で運営してきた「福岡相続サポートセンター」を独立、子会社化した。相続・事業承継・資産運用・不動産活用などに関わるコンサルティングや相続手続きのサポートなど、顧客の資産に幅広く関わる事業の拡大に努めている。
また昨年秋からは、従来金融機関や企業向けに開いていた不動産投資セミナー「不動産投資塾」を一般対象に開放した。米国の不動産認定資格であるCPM(認定不動産管理士)の理論に基づいた不動産投資の成功率向上を図るもので、基礎知識から不動産投資を成功させる「分析術」の説明、不動産の購入・運用・売却から得られる利益を、実例を元に計算式で解明するなどの内容で、CPM資格を持つ同社スタッフが講師を務める。これまで昨年11月と今年2月、3月に開催しており、今後もニーズを見ながら随時開催していく予定だ。
加えて、今年新たに着手したのが「介護セミナー」。これは相続サポート事業の延長線上にあるともいえる。福岡県の要介護認定者数は約20万人に上り、年々増え続けているが、一方で介護の実態や介護保険の詳しい内容はあまり浸透していない。そういった現状を背景に、介護という「リスク」に対してどのような「ヘッジ」ができるか、講師を招いて詳しく解説する内容となっている。
たとえば、要介護申請をせずに自宅で介護を受けている場合は公的介護保険を使えない、介護施設に入所する場合の居住費は介護保険の対象外、等々、介護保険では対応できない費用を充当する具体策などを紹介。2月に開催した第1回セミナーには定員を超える申し込みがあり、急きょ席を増やすほどの盛況ぶりだったという。
こうした取り組みに関して三好社長は「これらはすべて絞り込みの対象を『人』にするという考え方。人の『生活』や『人生』における様々なリスクをどのようにクリアしていくのか。それは投資であったり、運用であったり、相続対策であったりする。そこでわれわれとしても金融サービス業の面を持つことになる。 “深耕”の方策は今後もそれを軸に派生していくだろう」と説明する。

賃貸物件の稼働率向上策も次々に

一方では“本業”である不動産分野でも、差別化・囲い込みを進めている。借り手市場で物件の空室率が全国的に上昇している賃貸住宅市場において、オーナーの運用実績を上げるための施策を展開中だ。
昨年10月からスタートした「スマイルデザインプロジェクト」は、万人に受け入れられる平均的な部屋ではなく、リノベーションでさまざまなライフスタイルに特化した内装を施して、それぞれの指向にマッチした人の入居を促すというコンセプト。改装であるため新築物件よりも低い家賃が設定できるなど、価格面での競争力が付けやすいメリットもある。「すでに入居率を上げる効果が上がっており、今後さらにオーナーへの提案に力を入れていきたい」考えだ。
また、福岡市内各エリアでそれぞれの競合環境などに合わせた対策も打ち出している。たとえば、九州大学の移転で賃貸物件の数が急激に増えつつある伊都地区では、一昨年からJR筑肥線「九大学研都市駅」前の賃貸仲介店舗で、九州大学入学者向けに賃貸物件をPRする「部屋探しイベント」を、入試時期に合わせて実施している。
今年は新築物件が急増する一方で、箱崎からの学部移転がないことも重なって借り手市場になるため、同社が管理する物件の入居対策の意味合いが強い。2月のイベントでは九州大学生協ともタイアップし、受験生本人やその父兄など多数の入居希望者を集めた。
またオーナーへのサービス強化に関連して、福岡都市圏での賃貸仲介店舗網拡充も計画している。福岡市内での未出店エリアである城南区の地下鉄七隈線沿い、加えて粕屋方面といった、これまで「手薄」だった地区に拠点を置き、エリア内の管理物件に対してより細かいフォローができる体制を構築する考えだ。

近く上海に駐在所設置

新たな領域への「進展」として、中国・上海市に駐在所を設置する。昨年秋から現地での不動産フェアに参加して福岡への不動産投資を紹介するなどの動きを始めており、6月からをめどに中国人スタッフなど1~2人が常駐し、現地の情報収集に当たるとともに現地投資家へのアプローチも進めたい考え。「今後は福岡での事業を進める上でも、アジア、特に中国の動きは無視できないものになっていく」との予測で取り組んでいく。
三好社長は「 “海外進出”という意識はあまりない。福岡とアジア、特に中国との交流は年々活発になっており、逆に国内の札幌などと比べると経済的な緊密度は高くなると思うし地理的にも近い。一昨年設置した横浜支店では首都圏の情報収集もしているが、それに近い感覚」で、現地の情報をより早くキャッチし、日本や福岡への不動産投資が加速する前に態勢を整えていくという。
また同社では、2年前から中国人社員を新卒採用しているが、「福岡の日本語学校に来る中国の学生への住居斡旋など、中国人向けの業務のためという側面もあるが、日本語が話せるので普通に賃貸営業をこなしている。基本的な仕事は同じ」という。ただ一方では、福岡とアジアのビジネスシーンでの交流が将来高まっていけば、外国人スタッフの重要性はさらに大きくなるものとみている。

中国人社員とともに。左から陳博さん、高莉娟さん、三好社長、李玥さん、葛叢さん

 

企業DATA
所在地 〒810-0054 福岡市中央区今川1-1-1
TEL 092-715-1000
FAX 092-722-1515
創業 1951年7月
資本金 5,000万円
事業内容 不動産の賃貸仲介・賃貸管理・売買仲介・土地の有効利用の企画提案
年商 29億800万円(2010年9月期)
代表者 三好修
従業員 269人(2010年10月現在)
出先 賃貸仲介店舗「スマイルプラザ」12店舗、ソリューション事業部、法人営業部福岡本部、横浜支店(計15拠点)
関連会社 ㈱ミヨシアセットマネジメント、㈱福岡相続サポートセンター、 ㈱サンコーライフサポート、 ㈱エム・サポート、㈱ベン、 ㈱サンコーマネージメント、 ㈲ミヨシツーリスト、 ㈲サンコー管理
URL http://www.miyoshi.co.jp/

(ふくおか経済EX2011年)