FEATURE

ふくおか経済EX 2009

㈱キャム


SaaS型経営管理システムのリーディングカンパニー目指す

従業員10数人ながら、さまざまな業種の地場大手企業から東京の1000人規模の会社まで数々の直納入実績を誇る経営管理システム開発の㈱キャム。しかし、そうした実績がありながらも、今年4月からは、導入企業の情報化コストを従来比4〜5割削減できるというソフトウェアの新しい利用形態「SaaS(サース)」形式によるサービス提供を本格化する。SaaS型展開、すなわち、それは同社にとって受注単価下落を意味するが、下川良彦社長は「情報化投資が経営に欠かせないものになるなか、より多くの企業の役に立ちたい」と大きく舵をきった。SaaS型経営管理システムのリーディングカンパニーへ向け今挑戦が始まる。

さまざまな業種の地場大手企業などに多彩な納入実績

同社は、地場大手医薬品卸売会社に16年半ほど勤務していた下川社長が、その株式公開事務局時代に経営管理体制整備の必要性やその価値を実感し、1996年に創業。ちょうど前年にウィンドウズ95が発売されるなどダウンサイジングが始まるなか、システムを用いるのが有効と判断し、当初から経営管理に特化したコンサルティングとシステム開発を提供する会社としてスタートした。
当初は中小・零細企業からの受注が中心だったが、システムの機能や技術者が充実してきた2000年頃から一挙に開花。石油販売会社を皮切りに、食品メーカーやスーパーマーケット、ディスカウントストア、医療関連リース会社、外食チェーンなど名立たる地場大手企業から次々に受託。さらに、東京の1000人規模の会社にも採用されるようになった。
経営管理システムというと、素人にはその違いが分かりにくいが、同社の特長は、「業務の効率と適正化」と「分析や管理に必要な機能」の両面を追求している点だ。それにより、経営管理層が原価や粗利益、在庫などをより正確かつタイムリーに捉えられ、その数値をもとに分析・管理することで、マネジメントにおいて正確な判断が可能になる。
実際、同社のユーザーは、導入前にも同様の他社システムを使っていたものの、「正しい数値がつかめない」などといった不満を抱えていた。それが導入後は解消され、例えば、ある製造業では製品別に原価が正しくつかめるようになり、それに応じた販売戦略の立案が可能になった。そうした高い評価は、同社が当時受注した企業と買収された1社を除いて現在でも取り引きしている事実からうかがい知れるだろう。下川社長は「同じように見えて、細かい点の1つひとつに差がある」と自負するが、新たなSaaS型の展開でも、従来同様そうした細かい点の改良を積み重ねていくという。

ユーザーのコスト半減するSaaS型展開を本格化

そのSaaSとは、簡単に言えば、企業が自前でシステムやハードウェアを揃えるのではなく、データセンターに構築したインフラ環境にインターネットを経由して各ソフトを「利用する」サービスだ。パソコンとインターネット接続環境さえあれば短期間で導入・運営ができ、自前でのシステム構築などの大きな初期投資が発生せず、運用や管理のランニングコストも大幅に抑制できるのが大きな特長となっている。同社の『CAM MACS』の場合、5年リースまたは償却として、初期投資とランニングコスト合計で4〜5割削減できると想定している。加えて、ユーザー側は運用にシステム管理者などの人手も不要で、人件費も含めるとさらにコスト効果は高いという。
同社では、同じ経営管理システムといえ、従来とは技術的にまったく違うため、4年前から開発に着手。その分野に強い技術者を増員し、機能やノウハウを整理・再設計するとともに、導入企業の業種や規模に左右されにくい汎用的なシステムを構築した。そして、07年11月にはSaaS型の「経費精算」ソフトを1000人規模の上場企業子会社へ提供を開始。さらに昨年1月に「財務会計」、10月に「購買・債務管理」ソフトをリリース。そして、今年4月から「販売・債権管理」「在庫管理」「原価管理」「コスト積算/見積積算」「管理会計」など10本のソフトを順次リリースし、上場企業やそれに準ずる企業、中堅企業が最低限必要なシステムをラインナップする。

株式上場も視野、3年後に全国300社導入へ

SaaSといえば、旧日本郵政公社に採用された顧客管理(CRM)や営業支援(SAF)システムのセールスフォース・ドットコム社が有名だが、経営管理システムの分野でも、ライバル企業が展開を速めたり、参入企業が増えつつある。必要な機能や操作性など細部にわたる評価やコストメリット面で絶対の自信を持つ同社だが、今後は展開を加速する方針だ。現在、東京の会計事務所や西日本地区のSI企業など3社と提携するビジネスパートナーを全国10社体制に拡大。3年後にパートナー1社あたり20〜30社と自社開拓分を合わせて計300社のユーザー獲得を目指し、従来2億円前後だった売上高を12年3月期には5倍の10億円まで伸ばす計画だ。
また、設立以来、実質無借金経営を続けてきたが、SaaS本格化に伴い、さらに信用力の向上と人材確保といった側面から将来の株式上場も視野に入れる。それは対象ユーザーが、売上高30億円〜1000億円、社員数50人以上と、いわゆる中堅以上の企業で、SaaSでは自前でソフトやハードを持たない分、提供する同社の経営の継続性が問われてくるからだ。すでに昨年12月には証券会社と資本政策などのアドバイザリー契約を締結。今夏の増資も計画している。
もちろん、今後の展開の鍵を握るのは、ほかでもない人材だ。これまでも社内教育でITと併せて財務会計や業務知識を研鑽してきたが、さらにその強みに磨きをかけていき、質・量ともにSaaS型経営管理システムのリーディングカンパニーを目指していく。同社の新たな挑戦は今始まったばかりだ。

下川 良彦 社長
飯塚市片島出身。1958(昭和33)年6月24日生まれの50歳。九州電子計算機(現KCS福岡情報)専門学校卒。大阪のソフト開発会社に1年間勤務後、地場大手医薬品卸の旧㈱ユニック( 現㈱アトル)に転職し、約16年半勤務。株式公開事務局所属時に“経営管理”の重要性を悟り、96年㈱キャム創業。「縁あって」久留米市のビデオレンタル店など展開・㈱アペックスの常務や東京都の㈱デザインフィルの非常勤監査役も務める。趣味は旅行と散策

 

企業DATA
【所在地】〒810-0041福岡市中央区大名2-4-30西鉄赤坂ビル10F
【TEL】092-716-2131
【FAX】092-726-4402
【設立】1993年6月
【創業】1996年4月
【資本金】3000万円
【事業内容】情報システムの開発・販売
【年商】1億4700万円(09年3月期見込み)
【代表者】下川良彦
【従業員】13人
【出先】(東京オフィス)東京都中央区日本橋本町1-4-12日本橋センタービルディング5F
【URL】http://www.cam-net.co.jp

採用情報
●募集職種:経営管理システムに関わる①経営コンサルタント②営業 ③システムエンジニア④プログラマー
●応募資格:第二新卒の場合大学卒業後、実務経験が2年から3年ある方。中途採用の場合、 募集する職種に関して豊富な経験があり、即戦力として弊社の業務に従事できる方
●問い合わせ先:TEL092-716-2131
●担当:松藤

(ふくおか経済EX2009年)