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㈱ウエスト
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「お客様に喜びと感動を」の理念のもと、新業態店舗を開発
(写真)生そば専門店「あずま」の外観と店内。右下は「盛りそば」とトッピングの「かき揚げ」
うどん店で本格生そばを提供開始
「本当に美味しいそばを味わってもらいたい」—
県内最多を誇る69店舗のうどん店を展開する㈱ウエスト。その同社が10年10月、本格的なそばの提供を開始した。まず取り組んだのは、うどん店の“そば”を強調するためのそばの質の向上だ。店内に設置した機械での自家製麺に切り替えたことに加え、3玉まで同じ価格で麺の増量サービスを開始。現在県内の店舗では久留米諏訪野店、春吉店、次郎丸店、志免店の4店でサービス展開している。また、12月からは順次関東にも出店しており、現在は2店(千葉旭町店、東寺山店)で生そば提供を開始、そば文化の本場で大きなインパクトを与えている。
「九州の人々に本物のそばを提供したい」という想いから始まった手打ちそばだが、その本物の味を認められたことで売り上げは現在4割増という結果を記録。しかし、「人件費との兼ね合いや、機械設置の初期投資でコストも増えている。これからの売り上げ状況がどうなるかが大きな判断材料」と気持ちを引き締める。
南区西長住に手打ちそば専門店「あずま」出店
既存のうどん店での生そば提供のほかに、昨年11月には福岡市南区に手打ちそば専門店「生そば あずま」もオープンした。ここでは、浅草の有名店で修業した社員を店長に据え、そば粉から自家製麺した手打ちの生そばを提供している本格派店舗だ。上質な味の追求はもちろんだが、内製化によってコストが低減できたことで、「盛りそば」(650円)というそば専門店としては破格の値段、そしてこちらも3玉までの同一価格を実現させた。また、外観や内装にもこだわり、割烹のような佇まいの落ち着いた雰囲気の店内には、カウンター席、テーブル席のほかに座敷も備えている。加えて「3玉注文の際は、麺が伸びてコシが弱くなるのを防ぐため、2玉を食べ終えた後に残り1玉を出すようにしている」と、食を味わう環境にも心を配る。
つゆはかつお節と濃い口しょうゆがベースの関東風で、一般的なつゆのほかに石焼きの器に注がれた汁にそばを浸して食べる「石焼きつけそば」シリーズでは、鶏ごぼう汁、豚しゃぶ汁、もつ香味汁、(すべて780円)、辛ネギ香味汁(750円)、もつ鍋汁(720円)をラインナップし、好評を得ているという。
生そばを提供している「生そばうどんウエスト春吉店」 |
新業態「うどん居酒屋」が好調
うどん店の進化系として展開するもう1つの新業態に「うどん居酒屋」が挙げられる。昼間は通常のうどん店営業だが、夜間になると居酒屋メニューが登場するというものだ。最大の特長はその価格にある。フードメニューは190円、290円、390円の3パターンに統一し、ドリンクも生ビールやハイボールが一杯290円と非常にリーズナブルだ。なかでも、うどんだしを使用した「もつ鍋」(1人前290円)は人気ナンバーワンで、食後にうどんを入れて締めるウエスト流の利用者も多い。
この「うどん居酒屋」は飲酒運転の危険性を防ぐ意味合いから主に都市部への出店となり、天神西店、天神店、祇園店の3店を展開している。「うどんや焼肉、中華、和食店で培っている食べ物のベースがあることで、低価格でも料理の質を落とすことなく提供できる」という強みが人気の秘訣と言えるだろう。通常のうどん店と違い24時間営業ではないが、深夜時間帯の売り上げを昼夜間に集中させることに成功している。今後ますます新業態での展開を加速する方針だ。
17時から居酒屋メニューを提供する「ウエストうどん居酒屋祇園店」 |
生活スタイルの変化とともにさらなる進化
2つの新業態店舗が好調の同社だが、既存店の売り上げアップに対しての課題もあるという。その対策として随時店舗のリニューアルを進めている。特に、焼肉店に関しては個室感を出した内装や、需要の高いサラダバー面積の拡大、また各店舗の地域性に合わせた座席レイアウト、設備の導入といった施策で顧客獲得に努める。「直近の改装店では改装前と比較して売り上げが3割増まで伸長した。女性客の割合も増えてきており、2、30代の女性層が新たな顧客となっていくのではないか」と予測する。
1966年、福岡市郊外の福間町(現福津市)に1号店を開店してから45年。焼肉、うどん、中国料理、和食、そして生そばと、さまざまな角度から美味しさを届けてきた同社。決して一つの固定観念に捉われることなく、各種店舗の集合体「味の街」や、カフェレストランオープンなど、顧客ニーズをいち早く感じとり、チャレンジを続けてきた。そして何よりも「お客様に喜びと感動を」の理念のもとに、脈々と受け継がれてきた「味」へのこだわり。それは、時代の流れに伴う生活スタイルの変化とともに、さらなる進化を遂げていく。
若山 和夫 社長 わかやま・かずお/千葉県銚子市出身、1948年5月16日生まれの62歳、YMCAホテル専門学校卒 |
企業DATA
所在地 〒812-0887 福岡市博多区三筑1丁目5-8
TEL 092-582-3911
FAX 092-574-0699
設立 1966年3月
資本金 3億790万円
事業内容 飲食店(「焼肉ウエスト」、「うどん屋ウエスト」等)の経営
年商 133億円(2010年2月期)
代表者 若山和夫
従業員 2500人(パートアルバイト含む)
関連会社 ㈱西文、㈲河津ウエスト、㈲稲垣ウエスト
URL http://www.shop-west.jp/
(ふくおか経済EX2011年)