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㈱アキラ水産
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復興のカギでもある水産業活性化のため魚食普及に邁進
創業94年のアキラ水産は顧客ニーズに合わせて業容を拡大してきた。今春から新たなヒット商品を生むべく加工分野を強化する。同時に安部社長は業界全体への貢献で昨年、旭日雙光章を受章。今後も魚食普及に邁進していく。
(写真)一般市民に市場を開放する「市民感謝デー」でのアキラ水産の売り場。来場客が殺到し300個用意した鮮魚のセットが10分たたないうちに完売した
今年で創業94年を迎える鮮魚仲卸の㈱アキラ水産(安部泰宏社長)。地場トップを走り続けているが、これまで顧客ニーズへ対応するためその都度、業容を拡大してきた。「加工」への参入もそのひとつだ。同社は06年頃からオリジナルの加工品開発をスタートさせた。そこから名物品となったものが天然鯛を使った「アキラの鯛茶」と明太子の「あきらめんたい」だ。特に「アキラの鯛茶」は、元々は本社事務所を訪れる来客者向けに“お土産”として渡していたものだが、予想以上に好評だったため商品化したという経緯がある。その後、国内大手航空会社の機内誌にも紹介されるなどして、全国的に知られるようになった。
同社は現在、その加工品において新たな強化策に取り組んでいる。福岡市内の有名ホテルから開発担当者として新たな人材をスカウト。この春から新商品開発を更に進めていくという。安部社長も加工品への思い入れは強く、数年以内に「アキラの鯛茶」「あきらめんたい」に続く第3、第4のヒット商品を世に送り出したい考えだ。
オリジナル明太子の「あきらめんたい」。パッケージを福岡出身の童画家・西島伊三雄さんのデザインに一新した(右写真・有川公雪) |
新副社長2人が就任へ
加工品に限らず、全社での組織強化にも着手。上田浩祐専務を営業統括責任者を兼ねる取締役副社長に、また、坂田英治顧問を管理統括責任者を兼ねる取締役副社長にそれぞれ昇格させる計画だ。6月の株主総会後に正式決定する。これにより、社内でこれまで以上に営業、管理の言わば“両輪”の役割分担と位置付けを明確化させる。
昨春に旭日雙光章を受章
安部社長は昨年春の叙勲で旭日雙光章を受章した。高校卒業翌日から鮮魚店での2年間無休の修行を経て前身の「明商店」に入社。以来約50年にわたり先頭に立って会社を引っ張ってきた。また、それは何もアキラ水産の中だけではなく業界全体でも同様に言えることで、今回の受章は地元福岡の水産業への貢献が評価されたものだ。受章記念祝賀会でも安部社長は「これからも魚食普及に邁進していきます」と高らかに宣言している。
「アキラの鯛茶」 |
全国から注目集まる市場開放
その魚食普及活動の最たるものが、安部社長が福岡魚食普及推進協議会会長として陣頭指揮をとる長浜魚市場の開放イベント「市民感謝デー」だろう。毎月第2土曜日の午前9時から3時間、普段入れない市場を一般市民に開放し、新鮮な魚または色々な種類の加工品を仲卸業者約40店舗が一斉に売り出す。活気ある様相は市民にもお馴染みとなり、毎回約1万人が訪れる恒例イベントとしてすっかり定着した。中でも最近は地元に限らず全国区のテレビ・新聞からの取材依頼が多く、業界内外から注目を集めている。
安部社長は言う。「市場開放を通して東日本大震災の被災地、ひいては日本全体に元気を発信している。東北は水産業が盛んなところ。その水産業が活性化すれば復興にもつながるはず。我々の仲間を救うためにも、魚食普及は最重要課題として続けていく」。
安部 泰宏 社長 あべ・やすひろ/福岡市出身。1939年3月29日生まれの73歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。福岡商工会議所議員。地場経済界に広く交流があり、04年7月から福岡城西ロータリークラブ会長。05年4月に藍綬褒章、11年6月に旭日雙光章を受章した |
企業DATA
所在地 〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
TEL 092-711-6601
FAX 092-715-3293
創業 1918年(大正7年)
設立 1947年4月
資本金 2000万円
事業内容 (福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸 全般
年商 90億円(グループ)
代表者 安部泰宏
従業員 約90人(グループ)
関連会社 ㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、㈱博多ハクヨー
(ふくおか経済EX2012年)