FEATURE

ふくおか経済EX 2016

㈱アキラ水産


より一層強まる魚食普及と100年DNAの顧客第一主義

 (写真)毎月第2土曜日の「市民感謝デー」時に来場客でごった返すアキラ水産の売り場

鮮魚仲卸地場大手の㈱アキラ水産が、福岡のおいしい魚をもっと知ってもらおうと、魚食普及の一環で情報発信も兼ねたアンテナショップを新青果市場に開設した。一方、今年夏には古賀市に新加工場をオープン。大正7年の創業以来続けてきた顧客第一主義にあわせて新たなニーズを探っていく。

新青果市場に塩干物のアンテナショップ

毎月第2土曜日の午前9時前、長浜の鮮魚市場内に出来る長蛇の列。それから3時間にわたって1万人近くが新鮮な魚を求めて絶え間なく市場にやって来る。
魚食普及の一環で2008年から開催され、今やすっかり地元市民に定着した魚市場開放イベント「市民感謝デー」での風景だ。最近ではリピーターに加えて外国人客の姿も見られるようになった。イベントを主催する福岡魚食普及推進協議会の会長でもある安部泰宏㈱アキラ水産社長も「福岡のおいしい魚をもっと知ってもらうとともに、みなさんが魚を食べるような環境づくりを進めないといけない」と、取組みの必要性を語る。
アキラ水産にあっても魚食普及は重要なテーマ。上記の「市民感謝デー」においては、旬の魚がたくさん入ったセットを特価で提供。発泡スチロールで約300セットが用意されるが、提供数を超えて毎回500人以上が列をつくる人気ぶりだ。加えて、店舗横では福岡近海で獲れる魚を分かりやすく展示し、来店者の関心を集めている。
また、2月には、移転統合したアイランドシティの新青果市場「ベジフルスタジアム」内にグループ会社で塩干品の店舗を開設。同店はレストランや生産者団体などが入居する市場会館棟にあり、そこへ訪れる一般市民等へ向けた魚食普及のための情報発信をする“アンテナショップ”としての役割が期待されている。

新青果市場内にオープンしたアンテナショップ

顧客目線で業容拡大

一方、本業では創業以来98年間にわたって「顧客第一主義」を貫く。
同社のルーツは博多の台所としても知られる柳橋連合市場の前身であり、安部社長の祖父・栄次郎氏と伯父の明氏、父の篤助氏の3人が創業した「明市場」。同店では手頃な値段で魚が買えるとして連日多くの人でごった返し、店内は瞬く間に魚を入れていた箱だけが積み上がっていったという。これは「箱儲け(箱の分だけの儲け)」と言われ、後に「薄利多売」としてアキラ水産の企業信条となっていく。言うなれば、この時から薄利多売を実践することで、「顧客第一主義」が始まっていたわけだ。
戦後を経て、卸売業へ転換すると、業容を拡大することで、それぞれの時代に適合した取引先への対応で「顧客第一主義」を実現させていく。その先駆けが、安部社長がいち早く「スーパーマーケットの時代がやって来る」と読んだことで始まった量販店対応だ。品揃えを量販店向けに変更したほか、2000年代に入ってからは魚をさばいておろす1次加工や2次加工までを自社で実施。今ではパッキング等の3次加工までをこなす。またその加工場は最新の衛生管理が徹底され取引先からも好評を得ている。06年には鮮魚仲卸として全国で初めてISO9001も認証取得した。

古賀市に新加工場オープン

08年頃からはグループ会社でオリジナル加工品の開発にも着手。明太子「あきらめんたい」や「アキラの鯛茶」、鮮度抜群の「プレミアム干物シリーズ」などの人気商品が生まれている。昨年には百貨店とギフト向けアイテムを開発。また、今夏には古賀市に新たな新加工場もオープンさせる計画で、今後も小売店や飲食店などに向けた新たな顧客ニーズを追求していく考えだ。
1世紀続いてきた同社のDNAでもある「顧客第一主義」がさらに強化されていく。

安部 泰宏 社長
あべ・やすひろ/福岡市出身。1939年3月29日生まれの77歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。地場経済界に広く交流があり、04年7月から福岡城西ロータリークラブ会長。05年4月に藍綬褒章、11年6月に旭日雙光章を受章した。福岡商工会議所では議員(卸売商業部会長)など経て、14年11月から副会頭

 

企業DATA
所在地 〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
TEL 092-711-6601
FAX 092-715-3293
創業 1918(大正7)年
設立 1947年4月
資本金 4,600万円(グループ)
事業内容 (福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸全般
年商 90億円(グループ)
従業員 72人(グループ)
関連会社 ㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、㈱アキラ・トータルプランニング
URL http://www.akirasuisan.co.jp

(ふくおか経済EX2016年)