FEATURE

ふくおか経済EX 2009

マリンハイドロテック㈱


船舶用油圧機械に特化したスペシャリスト集団

特殊業界の明日を拓くトータルシステムサプライヤー

船舶用油圧機械の製造・販売を手がけるマリンハイドロテック㈱。特殊業界の中でも、成長著しい同社は、船上作業の様々な場面で活躍する船舶用油圧機械の製造、販売、アフターケアを提供している。「当社の強みは、国内の主要な漁港基地に営業所を設け、場所を選ばずアフターケアを提供できる点と、システムの受注から製造、販売、さらにはアフターメンテナンスまで一貫して提供できる点。そのため顧客へのスピーディーな対応ができ、長年の実績との相乗効果でマリンハイドロテックに任しておけば大丈夫という信頼を得ている。受注が堅調なので、現在の課題は業務のペースアップと効率化をいかに実現するかということ」と話すのは同社の生え抜きで強みを最も良く理解する井手敏文社長。現在、主力の漁船用ウィンチのシェアは60%、台湾建造の海外まき網漁船に関しては100%を占めている。“技術と提案”を強みに特殊業界の中のトータルシステムサプライヤーという確固たる地位を築くまでに成長した同社。今年度は、焼津に海外巻網漁船を対象とした修理工場の開設や、関西支社の本社合併などを計画し、さらなる事業の拡大を推し進める。

同社が製造する船舶用ウィンチ

東アジアを中心に積極的に海外展開

近年は東アジアでの事業展開も積極的に進める同社。海外巻網船を対象とした事業は、同社の売り上げの半分を占めるまでに成長した。背景には、新興国を中心とした加工品の食糧事情が挙げられる。「缶詰など加工食品の需要の増加が近年堅調な海外巻網船の受注に繋がっている。また、汎用品ではなく特殊なものに特化していたという点が、グローバルな舞台でも通用する競争力の源となっている。現在、台湾の高雄や韓国の釜山、中国の大連、青島などで事業を展開しており、台湾が実績、信頼ともに一歩リードという感じ。しかし、いずれは他の地区もそれに追従するような形になるだろう。将来的にはタイミングを見計らって、駐在所なども設置していきたい」と話す井手社長。同社の描く青写真は海の向こうに広がっている。

近年は海外巻網船(上)関係の受注が好調

風通しの良い環境で人材を育成

人材育成にも独自のこだわりを持つ同社。「営業では実用的な提案型営業をできる人材の育成に力を入れている。しかし、特殊な製品を扱う業界なのですぐ現場にでて営業ができるというものではない。3年程度の下積みの先に未来がある」と語る井手社長。決して楽な仕事ではないとしながらも、社員の満足度を追求する同社では、福利厚生の充実に積極的に取り組んでいる。ソフトボールや花見など社内イベントを始め、昨年秋には支店を含めた社員120人を一同に会し、大坂、京都、奈良への慰安旅行を実施。普段は全国に散らばる社員同士のコミュニケーションを取る機会を設け、連携を確かめ合うよい機会となる一方で、お互いを支えあう絆も生まれた。

 

本社(上)と下関製造工場の外観(下)

S&P社の格付け取得、さらなる事業の拡大を

昨年、同社には新たな目標が生まれた。それはスタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)の中小企業格付け「日本SME格付け」で「aaa」を取得することだ。これは、昨秋「aa」を取得したのを機に設けた新たな目標で「aa」は、「債務を履行する能力が非常に高い」という評価で、「最上位の格付け(aaa)との差は小さい」という全7段階中上位2位。「明確な目標設定は組織をまとめる点でもプラス、社員一丸となってaaaを目指したい」と力強く語る井手社長。「aaa」取得は、海外展開だけでなく社内組織の効率化も着々と進めている同社にとって絶好の目標となった。
順風満帆な未来が広がる同社だが、既に次の一手を模索している。「現在の状況が続く保証はどこにもない。“今年よりも来年、来年よりも再来年”でさらに高みを目指したい」。と力強く語る井手社長。特殊な業界の中でキラリと光るマリンハイドロテックから今後も目が離せない。

井手 敏文 社長
長崎県西彼杵郡長与町出身、1955年8月9日生まれの53歳、同志社大学商学部卒。長崎海星高校時代は3年連続甲子園出場中レギュラーにて2年連続出場した経験を持つ。1979年、内田油圧舶用機械㈱(現マリンハイドロテック㈱)入社。2000年、関西支店長就任。2004年、営業本部長兼関西支店長就任。2005年、本社勤務、取締役営業本部長を経て、2007年、代表取締役社長就任

 

企業DATA
【所在地】〒810-0075福岡市中央区港3丁目50番1号
【TEL】092-711-1110
【FAX】092-771-5197
【創業】1962年7月
【設立】1971年12月
【資本金】3000万円
【事業内容】船舶用油圧機械の販売・修理
【年商】26億7700万円(2007年12月期)
【代表者】井手敏文(いで・としふみ)
【従業員】145人
【出先】(工場)下関(支店)福岡長崎関西(営業所)石巻焼津(他)銚子
【URL】http://www.mhtc.co.jp

(ふくおか経済EX2009年)