㈱新出光

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非石油事業を着実に育成し
時代のニーズに応える総合企業へ

15年後の100周年に向け事業ポートフォリオを変革

今年3月に創業85周年を迎えた㈱新出光は、全国450カ所のサービスステーション（ＳＳ）をはじめ、ＩＤＥＸ（イデックス）グループ15社を擁して「カーライフ」「エネルギー」「ライフスタイル」の3つの分野で地域に密着した幅広いサービスを展開してきた。「石油」という優秀な商材を強みに成長してきた同社だが、将来的な石油需要減少が予測され、エネルギー業界が大転換期を迎えた今、15年後の創業100周年を見据え、大きく変わろうとしている。
2008年4月には、その100周年に向けた『ターゲット100』プロジェクトを始動。基幹事業である石油事業を現状維持しながら、そのほかの非石油事業を拡大し、収益比率を５対５の割合にまでシフトする「事業ポートフォリオの変革」に取り組んでいる。“第2創業期”と位置付けた現中期3カ年計画（2010〜12年度）でも、石油事業でのキャッシュフロー最大化を図りながら、太陽光発電システム販売の「ソーラー事業」強化をはじめ、新規事業を続々と立ち上げ、非石油事業の拡大を推進。
石油商社から時代のニーズに応える“総合企業”へ——。同社は今、伝統と革新を両軸に未踏の領域に挑んでいる。

450カ所のＳＳ基盤に3つの分野で事業拡大

振り返ると、85年の歴史は決して平坦ではなかった。1926（大正15）年に石油販売業として産声を上げた同社は、激動の昭和史、そして日本のモータリゼーションの進展とともに歩んだ。戦争、敗戦という未曾有の困難の中に翻弄されるも、戦後は55（昭和30）年3月に新出光石油㈱として再スタートを切ると、高度成長、技術革新の中での石油需要の飛躍的増加に伴い大きく成長。89（平成元）年４月には石油業界の大きな変化に対処すべく、関係会社の新光商事㈱を吸収合併し㈱新出光を発足、マーケティング名称の「ＩＤＥＸ」を導入した。
2000年3月には業界初のISO9001認証を全社一括で取得するなど、約450カ所のＳＳを有する九州のトップディーラーとして、また産業や家庭など幅広い分野へ石油やＬＰガスを安定供給する全国有数の総合エネルギー商社として、業界をリードする存在となった。
近年は、特に３つの分野での「ソリューション（課題解決）営業」に力を入れ、グループの総合力を生かした展開を図っている。「カーライフ」分野では、全国のＳＳネットワークを中心に、新車中古車販売・買取、自動車整備・車検、ベンツ車販売、カーリース、レンタカーなどトータルでカーライフをサポート。「エネルギー」分野では、社会・産業・家庭と幅広い分野へエネルギーを安定供給するとともに、太陽光発電など地球環境を考えた新エネルギーの販売にも力を入れている。また、「ライフスタイル」分野では、保険、人材派遣、事務用品・ＯＡ機器販売などビジネス・ホーム・パーソナルの３つをキーワードに豊かな暮らしを支える提案を行っている。

非石油事業の柱としてソーラー事業強化

創業100周年に向け取り組む非石油事業拡大の中で、とりわけ力点を置くのが、太陽光発電システム販売の「ソーラー事業」だ。同社は、06年に新エネルギー課で太陽光発電システムの販売を開始。その後、順次専門要員の増員を図るとともに、09年9月には、太陽光発電システム施工で技術的評価の高い、熊本市の㈱エネルギーテクノサービスをＩＤＥＸグループに迎え、販売から施工に至る一貫体制を構築した。
同12月には、一般需要開拓を期し、大型ＳＣ「ゆめタウン行橋」（行橋市）と「ゆめタウンサンピアン」（熊本市）内に太陽光発電やオール電化のショールーム「ＥＣＯ　ＰＬＡＺＡ（エコプラザ」をオープンし、翌年1月からは太陽光発電のテレビＣＭも開始。このほか、総合リース最大手の㈱オリックスと協業で、初期投資がなくグリーン施設が導入できる「太陽光発電ＥＳＣＯ事業」を九州で初めて開始するなど、産業向けでも拡販を図っている。
昨年4月の改正省エネ法施行や国の助成金拡充などで需要拡大が見込まれる太陽光発電だが、一方で新規参入などによる競合が激化している。同社では現中計がスタートした昨年4月に新エネルギー課を「ソーラー事業課」に改称し、営業本部長直轄化。2年目の今年4月には、さらに「ソーラー事業部」を設け、効率化を図るため、専門要員の支店配置を止め、エリア制を導入。福岡、熊本、西九州の各エリアには店舗を置き、販売を一層強化していく方針だ。

新規事業を続々と開始
カーライフ事業など再編も

もちろん、拡大を図る非石油事業はソーラー事業だけではない。現中計では、①お客さま志向②地域密着③高齢化社会④エコ⑤リスクマネジメントの5つをキーワードに、新規事業を続々と開始している。昨年は、コインランドリー「ＷＡＳＨハウス」の2店舗目をオープン。ＳＳを拠点として活用する食品などの高齢者向け宅配事業「わんまいる」も福岡都市圏の2ＳＳで開始し、九州初となるコンビニ＋セルフＳＳ一体型店舗も2店舗オープンした。
新たに㈱ゼオテックと業務提携し、㈱イデックスクラリティーと共同で開始した、液体浄化装置搭載の車輌で工場などに出張して使用済みの油脂・水溶性廃液を再使用可能な状態に浄化する「ＭＲＳ事業」は、ＣＯ2を削減する環境配慮の観点からも注目を集めている。このほか、今年2月には、大牟田市の大牟田エコタウンに木質バイオマスを熱分解ガス化して水素を製造する世界初の商用プラントを着工。11年度に試運転を行い、その後、本格的に商業運転に移行する予定だ。
また、新規事業だけでなく、既存事業の改革にも着手している。特に、将来的に燃料が電池などに代わっても自動車社会は変わらないといった観点から、カーライフ事業を深く掘り下げるべく、グループ会社を含めた同事業の再編を今秋計画。時代のニーズに応える総合企業への成長は、まだ始まったばかりだ。

出光 芳秀 社長 いでみつ・よしひで／福岡市出身。1937（昭和12）年4月26日生まれ。早稲田大学商学部卒。97年6月の社長就任以来、IDEXグループを率いる

企業DATA
所在地　〒812-0036 福岡市博多区上呉服町1-10
ＴＥＬ　092-291-4134
ＦＡＸ　092-271-0958
創業　1926年3月
設立　1955年3月
資本金　1億円
事業内容　石油製品の販売
年商　2,368億円（10年3月期）
代表者　出光 芳秀 従業員　618人
出先　（支店）九州６ヵ所、東京、名古屋、大阪、広島（ＳＳ）直営135　特約店317　計452カ所
関連会社　㈱新出光バジェット・レンタリース、㈱シュテルン福岡など15社
ＵＲＬ　http://www.idex.co.jp

採用情報
募集職種　営業総合職
応募資格　全学部全学科
採用実績　09年度28人（大卒16人、高卒12人）10年度13人（大卒8人、高卒5人）11年度12人（大卒12人）
問合せ先　0120-376-182
担当　人事部 人事課

（ふくおか経済EX2011年）