FEATURE

ふくおか経済EX 2010

イフジ産業㈱


初のグループ展開で新境地を開く独立系最大手の液卵メーカー

(写真)千葉県市原市の日本化工食品の工場全景

老舗調味料メーカーを子会社化

独立系最大手の液卵メーカー・イフジ産業㈱は、昨年11月2日付で東京都千代田区神田北乗物町の業務用調味料メーカー・日本化工食品㈱の全株式を取得し完全子会社化した。
日本化工食品は1960年設立で、今年で創業50周年を迎える老舗メーカー。天然調味料やふりかけ原料を製造し、インスタント食品業界などに販売している。09年3月期の売上高は12億5600万円で、経常利益は4600万円。代表者が高齢なことなどからイフジ側に株式取得を含む提携の打診があり、完全子会社化に踏み切った。
イフジ側では「売上高はここ2〜3年横ばいながら優れた開発力を持ち、その商品力で大手食品メーカーに納入実績もある。グループとして事業を拡大し、新たな収益事業を構築できると考え、子会社化を決めた」と話している。

初のグループ展開でシナジー効果

同社の社長には、同日付で藤井宗徳専務が就任した。東京本社に常駐し、主に得意先開拓など営業面で陣頭指揮に当たっている。また、千葉県市原市の製造現場では、取締役工場長に原敬経営企画室長が就任。初めてのグループ経営に対応し、経理面や原価計算などの体系的な整備を進めている。
藤井専務は同社について「規模は小さいが、業暦が長く、顧客の認知度も非常に高い。メーンは粉体物と顆粒物の調味原材料で、特に粉体は業界でも珍しい特殊な技術を持っている」と説明する。
イフジ側では、共同して取引先開拓や商品開発に当たる方針で、グループとしてシナジー効果が期待される。その可能性については「液体と粉体の違いがあり、お互いの商品を使った商品の共同開発という意味では、すぐには難しいだろう。シナジー効果という意味では、それよりも得意先の共同開拓の方が大きい」と言う。実際に営業スタッフと新規開拓のために得意先を訪問してきただけに、確かな手応えを感じているようだ。
今後の可能性について、同専務は次のように語る。「大手がシェアを分け合っている液卵業界に比べ、調味料メーカーは大小様々な業者がひしめいている。M&Aの可能性も高く、展開次第では親会社よりも大きくなる可能性さえ含んでいる」。グループの第2の柱として期待が高まる同社だが、そのポテンシャルは十分に秘めているといえそうだ。

日本化工食品社長に就任をした藤井宗徳専務

高機能商品増産に向け設備増強

一方、親会社のイフジ産業では今後3年以内に約10億円を投じて、全国4カ所の液卵工場の生産設備を増強する。
製菓用凍結卵白などの高機能・高付加価値商品の増産のためで、4工場で最大の生産能力を持つ関東工場では、すでに約5億円をかけ設備増強を開始。品目別に貯蔵できるタンクや専用の充てん機などを増強し、今年中の完成を目指す。
その後は、関西工場、名古屋工場、本社工場の生産設備を順次増強。高機能・高付加価値商品の開発と増産に力を入れ、他社との商品差別化と収益性向上を図る。

養鶏場経営から液卵メーカーに

同社は、1964年に藤井徳夫社長が大学卒業後に家業の養鶏場を継承して創業。養鶏場経営は順調に推移し、2万羽近くの規模までに成長したが、その限界を感じ始めていた。ちょうどその頃、海外から輸入し始めたばかりの冷凍卵と出会い、ヒビ卵や規格外品を使った液卵加工の試作を開始。もちろん割卵機などの設備はなく、手作業の液卵製造だった。
試行錯誤の研究を重ねて、ようやく製品化。半年間通い続けた製パン大手の山崎製パン福岡工場と取引を開始した。納品量は一日160㎏。この取引開始を機に72年10月に同社を設立した。
設立後も紆余曲折が続いたが、翌73年9月には現在地に平屋建ての本社工場が完成した。徐々に受注も増え始め、原料確保のために九州内の数カ所の養鶏場と仕入れ契約を結んでいった。その一方で、早くも1年後の74年には関東営業所を開設。関東市場で販売先の開拓を進め、全国展開への布石を打った。77年には殺菌設備を導入し、品質管理面でも大きな一歩を印している。

全国制覇とジャスダック上場

その後82年には関東工場が完成。これを機に積極的にM&A戦略に乗り出し、全国4工場で年間約4万トンの液卵生産体制を確立した。同時に販売体制でも、福岡、関東、名古屋、関西の4事業部体制とSOHO体制で、ほぼ全国に販売体制を拡充。2001年8月にはジャスダック市場に上場し、全国制覇と株式上場を果たした。
2004年4月には、最先端の設備を誇る関西工場が稼働。製造ラインはもちろん、建物や内部造作までHACCP(危害分析重要管理点)の考え方に基づいた設計で、原料入荷から出荷まで徹底した安全・衛生管理体制を整えた。
さらに、粕屋郡宇美町には新本社工場の用地を確保し、将来に向けた布石も打った。工場の規模や建設時期などの詳細は未定だが、最新設備を導入して現工場の1.5倍の年間1万5,000tの生産能力を持つ工場を目指す。

利益体質確立し、新たな挑戦

前期売上高は初の100億円の大台を突破。今期第3四半期決算では売上高こそ減収だったものの、経常利益は前期比の約4倍を記録した。また、今期からの連結決算に伴い通期業績予想を修正したが、個別業績でもこれを修正。売上高の修正こそ見送ったものの、利益面では中間決算時に修正した予想をさらに上方修正した。「鳥インフルエンザの影響でここ数年間は厳しい状況が続いたが、ようやく本来の姿に戻った」と同社長。苦戦の中で原料仕入や製造体制を見直し、徹底的なコスト削減で利益を出せる体質を確立した。
業界唯一の上場企業として揺るぎない地位を確保したが、その地位に甘んずることなく、創業当初からのベンチャー精神を貫き挑戦を続けてきた同社。逆境の中でも利益体質を確立したが、子会社を加えた初のグループ展開と高機能・高付加価値商品の生産増強で新境地を開くため、また新たな挑戦が始まった。

藤井 徳夫 社長
1941年2月13日生まれの69歳。中国、天津生まれ。九州大学法学部卒業直前に父親が急死、卒業後は家業の養鶏場を継承する。養鶏場から液卵加工業への転換を進め1972年10月に同社を設立、以降積極的なM&Aなどにより全国展開を推進する。2001年にはジャスダック市場(現ジャスダック証券取引所)に株式上場。趣味は読書

 

企業DATA
所在地 〒811-2312 福岡県粕屋郡粕屋町戸原200-1
TEL 092-938-4561
FAX 092-938-5537
創業 1964年4月
設立 1972年10月
資本金 4億5,585万円
事業内容 液卵・冷凍卵の製造および販売、鶏卵加工製品全般・その他惣菜食品の販売
年商 102億3,934万円(09年3月期)
代表者 藤井徳夫
従業員 89人、パート258人
出先 (工場)福岡工場(本社)、関東工場(水戸)、関西工場(京都)、名古屋工場(安城)
URL http://www.ifuji.co.jp/

採用情報
募集職種 ①生産技術 ②営業 ③研究開発
応募資格 2011年大学卒業見込み(全学部全学科)
採用予定 11年度若干名(大卒)
問合せ先 TEL.092-938-4561(代)
担当 三宅、松林

(ふくおか経済EX2010年)