FEATURE

ふくおか経済EX 2009

イフジ産業㈱


ベンチャー精神で挑戦続ける独立系最大手の液卵メーカー

(写真)粕屋郡粕屋町の本社ビル

製菓用冷凍卵白の新製品を開発

独立系最大手の液卵メーカー・イフジ産業㈱は、昨年8月に業務用として製菓用凍結卵白の新製品2種類を開発し、年明けから本格的に販売を開始した。
当初は得意先を中心に販売していたが、好評だったため洋菓子店やメーカーの新規開拓を図り、本格的に販売するもの。ホームページを通じて、通信販売でも販売している。
2種類とも加熱殺菌した上で安全性の高い天然素材の添加物を加えてメレンゲの泡立ちを高めた製品で、商品名は「PCW00」と「PCW01」。「PCW00」は、天然糖質のトレハロースを添加して素早くしっとりした泡立ちが特徴。一方の「PCW01」は、環状オリゴ糖と安定剤として増粘多糖類を添加し、ボリュームとコシのある持続性の高い泡立ちを特徴としている。両製品ともシュー皮やスポンジケーキなどの原料に適しており、好みや製法によって使い分けができる。
藤井宗徳常務は「より安全でより泡立ちが良い製品として開発した。当社にとって久しぶりの新製品になったが、これを機に積極的に開発を進めていきたい」と抱負を語る。初年度の売り上げは3,000万円を見込んでおり、将来は1億円を目指す。

新製品を手に藤井宗徳常務

卵殻をグランドラインに有効活用

業界唯一の上場企業として揺るぎない地位を確保した同社だが、その地位に甘んずることなく、創業当初からのベンチャー精神を貫き挑戦を続けている。今回の新製品もその一例だが、同社の挑戦は製品開発だけに止まらない。本社工場と関西工場には卵殻の再利用プラントを導入し、環境への取り組みも始めた。
液卵製造過程で生じる卵殻の廃棄コストの削減と同時に有効活用を図るもので、卵殻を乾燥した上で粉砕し、特殊な処理で加工。加工した製品は、学校のグランドなどに使う白線ライン用の消石灰の代用品として利用されている。消石灰に比べ安全性が高く、環境にも優しいことから注目を集めているという。
導入に当たっては、佐賀市鍋島町の環境ベンチャー企業・㈱グリーンテクノ21(下幸志社長)と連携して進めた。すなわち、グリーンテクノ側が設置したプラントに同社が機械使用料を支払い、加工した材料をグリーンテクノ側に販売するもの。利益を生み出すまでには至っていないが、それでもコスト削減の効果は大きい。
同社では全国4工場で、年間約5,000tの卵殻を廃棄していたが、年間約8,000万円かかっていた廃棄費用を半減できるという。前期決算では早くもその効果を発揮し、原料費を含めてコストが増加する中で目に見えた効果を発揮した。
しかも、グリーンテクノ21では将来的にチョークなど付加価値の高い活用も研究しており、夢は広がっている。いわば液卵製造の副産物として厄介者だった卵殻が、環境対策に有望な資源として花開こうとしている。

本社工場に設置されたプラント。工場で破砕された卵殻(写真上)は、特殊な処理で乾燥、粉砕され加工。次々に製品として袋詰めされている(写真下)

創業当初から試行錯誤の連続

同社の挑戦は、今に始まったことではない。その挑戦は40年以上前にさかのぼる。創業者・藤井徳夫社長は大学卒業後の1964年、家業の養鶏場を継承。養鶏場経営は順調に推移し、2万羽近くの規模までに成長したが、その限界を感じ始めていた。ちょうどその頃、海外から輸入し始めたばかりの冷凍卵と出会い、ヒビ卵や規格外品を使った液卵加工の試作を開始。もちろん割卵機などの設備はなく、手作業の液卵製造だった。
試行錯誤の研究を重ねて、ようやく製品化。半年間通い続けた製パン大手の山崎製パン福岡工場と取引を開始した。納品量は一日160㎏。この取引開始を機に72年10月に同社を設立した。
設立後も紆余曲折が続いたが、翌73年9月には現在地に平屋建ての本社工場が完成した。徐々に受注も増え始め、原料確保のために九州内の数カ所の養鶏場と仕入れ契約を結んでいった。その一方で、早くも1年後の74年には関東営業所を開設。関東市場で販売先の開拓を進め、全国展開への布石を打った。77年には殺菌設備を導入し、品質管理面でも大きな一歩を印している。

全国制覇とジャスダック上場

その後82年には関東工場が完成。これを機に積極的にM&A戦略に乗り出し、全国4工場で年間約4万トンの液卵生産体制を確立した。同時に販売体制でも、福岡、関東、名古屋、関西の4事業部体制とSOHO体制で、ほぼ全国に販売体制を拡充。2001年8月にはジャスダック市場に上場し、全国制覇と株式上場を果たした。
2004年4月には、最先端の設備を誇る関西工場が稼働。製造ラインはもちろん、建物や内部造作までHACCP(危害分析重要管理点)の考え方に基づいた設計で、原料入荷から出荷まで徹底した安全・衛生管理体制を整えた。
さらに、粕屋郡宇美町には新工場用地を確保し、将来に向けた布石も打った。工場の規模や建設時期などの詳細は未定だが、最新設備を導入して現工場の1.5倍の年間1万5,000tの生産能力を持つ工場を目指す。一方、需要が急増する関東工場でも増床も計画。食に対する不安が広がるなか、より安全で安定的な供給を目指し、創業以来の“ ベンチャー精神”を忘れずに挑戦を続けている。

藤井 徳夫 社長
1941年2月13日生まれの68歳。中国、天津生まれ。九州大学法学部卒業直前に父親が急死、卒業後は家業の養鶏場を継承する。養鶏場から液卵加工業への転換を進め1972年10月に同社を設立、以降積極的なM&Aなどにより全国展開を推進する。2001年にはジャスダック市場(現ジャスダック証券取引所)に株式上場。趣味は読書

 

企業DATA
【所在地】〒811-2312福岡県粕屋郡粕屋町戸原200-1
【TEL】092-938-4561
【FAX】092-938-5537
【創業】1964年4月
【設立】1972年10月
【資本金】4億5,585万円
【事業内容】液卵・冷凍卵の製造および販売、鶏卵加工製品全般・その他惣菜食品の販売
【年商】93億7,224万円(08年3月期)
【代表者】藤井徳夫
【従業員】93人、パート219人
【出先】(工場)福岡工場、関東工場、関西工場、名古屋工場
【URL】http://www.ifuji.co.jp/

採用情報
●募集職種:①生産技術②営業③研究開発
●応募資格:2010年大学卒業見込み(全学部全学科)
●採用予定:10年度4人(大卒)
●問い合わせ先:TEL092-938-4561㈹
●担  当:三宅、松林

(ふくおか経済EX2009年)