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トップ交代新体制で独自ビジネスを全国拡販

4月に就任した鶴久博幸新頭取のもと、新中期経営計画をスタートさせた筑邦銀行。預貸金業務を通した既存のビジネスの深堀を図りながら、電子通貨システムの提供や「誰でもDCプラン」（企業型確定拠出年金）など、同行独自のサービスを全国に展開し、新たな分野で収益を確保する道筋を立てる。

鶴久新頭取のもと構造改革

4月1日付で就任した鶴久博幸頭取は営業畑を歩んだ生え抜き。頭取就任時の抱負では「佐藤前頭取が築いてきた経営基盤をしっかり継承し、自身の持ち味を発揮していきたい」と語るなど、営業基盤の強化に意欲を燃やす。
同行のトップ交代は実に15年ぶり。佐藤清一郎代表取締役会長が頭取時代に築いた、アライアンス戦略による新規ビジネスの強化路線を引き継ぎ、鶴久新頭取のもと経営の若返りを図りながら、「既存ビジネスの深化」と「新たなビジネスモデルの確立」を掲げて構造改革を進めていく。
また、同行では4月から3カ年の新中期経営計画がスタート。九州電力、SBIホールディングスと共同で設立した「㈱まちのわ」（福岡市中央区薬院、入戸野真弓社長）による自治体や商工会が発行するプレミアム付き商品券への電子通貨システムの提供と、企業型確定拠出年金制度(DC)の｢誰でもDCプラン｣の全国展開を重点的に取り組むポイントとして挙げる。
㈱まちのわが提供するシステムは九州電力のシステム基盤を使用し、SBIホールディングスの協力のもと、ブロックチェーン技術を活用し、自治体や地元商工会が発行するプレミアム付き電子商品券を、申し込みから精算までスマートフォンから一貫して行えるサービスだ。福岡県内60自治体のうち約8割超が導入しており、23年12月末現在全国では累計90カ所、発行総額は910億円、アプリダウンロード数145万人、加盟店は4万2000店舗を超えるなど、事業開始3年で大きな基盤を築くことに成功した。今後は同システムを全国各自治体、商工会に拡販するフェーズを迎えることになる。
もう一つの「誰でもDCプラン」は、少人数の中小企業も利用できる企業向け年金サービス。年金の記録管理業務を手がけるSBIベネフィット・システムズ㈱（東京都）と共同で企業型確定拠出年金プランを設立し、2021年6月に提供を開始した。同サービスは、従来の主流だった大手運営管理機関が提供するプランでは対応が難しかった少人数規模の事業所でも利用でき、1人からでも利用可能で部分加入にも対応することから、中小・零細企業の顧客のニーズを上手く取り込み、24年2月末現在の契約済件数は660件、同意書ベースでは1,355件と着実に販路を拡大している。
拡販で重要となるのが、福岡ひびき信用金庫などの金融機関以外の企業とのパートナーシップ戦略である。また、一般社団法人DC推進機構（東京都中央区日本橋、小川幸紀代表理事）からの事務面でのサポートも重要だ。自行だけでなく、対象となる中小・零細企業を顧客に持つ金融機関などとのと販売協業を結ぶことで、全国展開を推し進めていく。

人的資本経営に積極投資

独自の新規ビジネスで得た利益を人材確保や人材育成など「人的資本経営」に投資していくことが、新中計の大きな軸だ。
具体的には初任給を24年4月と25年4月の2カ年で最大5万円超、段階的に引き上げる計画で、大卒総合職の初任給は26万円とメガバンク並みとなる。また、コンサルティング能力を引き上げるため、ファイナンシャルプランナー2級以上の資格取得率を70％超に上げるほか、九州大学ビジネススクールのMBA取得者を段階的に増やし、資格取得者が専門的業務を担う体制、同行の新たな経営理念の一つでもある「動かす人が活躍する組織」づくりに向けて、まい進していく。「全国初」「九州初」の事例を多数輩出するなど、地銀のビジネスモデル転換のモデルケースとして注目が集まる。

鶴久博幸　頭取 つるく・ひろゆき／1963年7月7日生まれの60歳｡明善高校‐西南学院大学商学部卒。86年同行入行。19年取締役常務執行役員営業本部長､23年同企画本部長。24年4月に頭取就任

採用情報
募集職種／総合職、特定総合職
応募資格／2025年3月卒業予定者（学部制限なし）、2022年3月から2024年3月に卒業し就職未経験者（学部制限なし）
採用実績／2023年度27人
問合せ先／TEL.0942-32-5357
担当／早田、野田

（ふくおか経済EX2024年）