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100万都市復活へ、「北九州市にはポテンシャルしかない」 北九州市


週刊経済2023年8月8日発行号

武内市長「表紙の人」インタビュー抜粋

2月に就任した北九州市の武内和久市長は、本誌8月号「表紙の人」のインタビューに応え、公約に掲げた「人口100万都市の復活」に挑戦する上での戦略を語った。以下、インタビューを抜粋。
―選挙戦で掲げた最大の公約である「人口100万人都市の復活」への挑戦に向けて、市のどのような部分を伸ばしていく考えか。
武内 私は北九州市にはポテンシャルしかないと思っている。かつて九州で最多の人口を有した北九州市にもともと備わっていた「場」のポテンシャル、そしてまちの発展を支えてきた「人」のポテンシャル、「企業」のポテンシャルなど、北九州市には他都市に負けない、さまざまな価値がすでに備わっており、しかしそれらが現状では真価を十分に発揮できていないと見ている。これらのポテンシャルを最大限に引き出して形にしていくことで、再び北九州市を人と企業に選ばれるまちとして成長軌道に乗せ、その結果としての人口増加、100万都市の復活を目指していきたいと考えている。
―ポテンシャルを引き出していくための、具体的な戦略は。
武内 6月の市議会で、私の市政にとって初となる2023年度の当初予算案、総額6092億円が全て可決された。この予算には、「北九州ポテンシャルを呼び醒ませ!『成長への再起動』予算」というテーマを設けており、私が描いてきた成長戦略をしっかりと盛り込むとともに、それに基づき必要となる「未来への投資」に重点的な予算を割り振った。「100万人都市」の実現を目指す上での第一歩目となる具体策と捉えていただきたい。
―予算に盛り込んだ成長戦略について、具体的な重点分野は。
武内 「メガリージョン」「未来産業」「バックアップ力」という三つのキーワードを重点分野に掲げた。まず「メガリージョン」というのは「大都市圏」を指す言葉。北九州市単体で成長を目指していく上では、さまざまな弱点や課題があり、どうしてもやれることに限界があるので、もっと大きな圏域で連携して、共に成長を目指していく発想が必要になる。北部九州圏全体で、世界で戦っていく人材を輩出し、モノやヒトやお金を回していくモデルをイメージしている。
―北九州市がそのハブとなる役割を担っていくと。
武内 それだけのポテンシャルが北九州市には備わっていると見ている。私たちの大きな武器として強化を目指していきたいのが、北九州空港を軸とした「ゲートウェイ機能」。同空港は、九州で唯一の24時間空港であり、東九州、西九州、西中国地方などを結ぶ要の位置に置かれた交通・物流の要衝です。24時間365日、いつでも利用することができる拠点としての強みを一層引き出し、産業や物流の活性化に結び付けていきたい。実際に、今後はさらなる機能強化が計画されており、今年3月に検討されてきた滑走路の延長が決定し、6月末に国土交通省から正式に告示を受けた。供用開始日も2027年8月31日に定まり、かなりスピーディに計画が進んでいるところ。
―二つ目のキーワードの「未来産業」については。
武内 モノづくりのまちとして栄えてきた歴史を持つ北九州市には、未来産業の種となるインフラや可能性がたくさん備わっています。今回の予算では、大きく2分野の未来産業に対し、重点的に振興する戦略を示している。まずは、「宇宙産業」の振興。宇宙産業市場は2040年頃には100兆円規模を超えるとの予測がある。本市の強みを生かして、この大きな産業分野の可能性にチャレンジし、宇宙を通じて得られる「ビッグデータの利活用」と「人工衛星の開発製造拠点化」を中長期戦略として目指していくつもり。二つ目は、北九州市のアイデンティティであり代名詞でもある「環境グローバルシティ」。直近では、総事業費1700億円もの大型プロジェクト「北九州響灘洋上ウインドファーム」の工事が3月にスタートした。これを弾みに、風力発電の総合拠点化に向けた企業誘致に、本腰を入れていきたい。
―最後のキーワードは。
武内 今後の重要なテーマになるのが、「バックアップ力」を強みとした企業誘致の戦略。太平洋側を中心に甚大な被害が予測される南海トラフ巨大地震が30年以内に70%の確率で発生すると言われている中、少しでも災害リスクが少ない都市にバックアップ機能を設けるBCP対策は、首都圏をはじめとする国内企業にとって重要なテーマになっている。北九州市は、政令市の中で統計的に地震の発生回数は群を抜いて少ない。さらに、周辺自治体に多くの水を供給できるほどの水資源の豊富さ、有事の際に頼りになる再生可能エネルギーの発電量の多さ、陸海空にわたる交通インフラの充実度など、バックアップ拠点を検討する際の要件となる多くのアドバンテージを備えている。また良くも悪くも、進出コストの低さも大きな強みで、商業地、工業地ともに政令市の中で低水準に留まっている地価の上昇率が、企業誘致面では武器にもなる。地域のバックアップ力の強みを今後はより戦略的に打ち出し、日本を救う、日本を守る北九州市としての都市ブランドを形づくっていく。