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行橋市の軍用飛行機の格納庫を県指定文化財に 県教育委員会


週刊経済2023年6月27日発行号

県の戦跡指定は初めて

福岡県教育委員会は、行橋市の「海軍築城航空基地稲童(いなどう)掩体(えんたい)」を県の文化財に指定した。県が太平洋戦争の戦争遺跡(戦跡)を文化財に指定するのは初めて。
「掩体(えんたい)」とは、戦時中の軍用飛行機を敵の空襲から守るためにつくった格納庫で、太平洋戦争中の1944年に建造された。掩体がある築城飛行場は、空母艦載機搭乗員の教育や訓練の必要性の高まりなどを受け、1939年から旧日本海軍が建設を開始。戦争の激化により各飛行場で航空機の防衛または秘匿のために掩体が建造されるようになり、築城航空基地でも掩体群が設置された。稲童地区には大型、小型、有蓋、無蓋の掩体が合わせて30基築かれたと伝えられているが、終戦後の開発に伴い消滅。貴重な戦争跡地を保存するために保存状態がよかった大型の有蓋掩体を「稲童(いなどいう)1号掩体壕(えんたいごう)」と名付けた。
今回指定を受けた同掩体は、陸上爆撃機「銀河」や、「一式陸上攻撃機」などの中型攻撃機を格納するためにつくられた大規模なもので、掩体部は丘陵を掘り下げて構築。基地内の丘を掘り下げて、幅42メートル、高さ8・5メートル、奥行き23・5メートルの鉄筋コンクリート造りで建てられた。天井や壁面にはコンクリート打設時に型枠として使用した板材やその痕跡、丘陵地帯を掘り下げた土の跡形が残っているなど築造工程がうかがえる。築城航空基地周辺は1945年8月7日に空襲を受け、発掘調査で米軍のものとされる機銃弾や、投下された爆弾の跡が確認された。また、掩体正面の壁面や周囲にも機関銃の跡が残っていることからも空襲の事実が裏付けられている。