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世界初となるカラー電子顕微鏡を7月発売 九州産業大学


週刊経済2023年6月27日発行号

価格は1セット6千万円

九州産業大学(福岡市東区松香台2丁目、北島己佐吉学長)は6月8日、カラー電子顕微鏡開発の大学発ベンチャー・㈱アイエスティー(同市南区向新町2丁目、磯部信一郎社長:同大学工学部物質生命化学科教授兼医療診断技術開発センター所長)、精密機械・工作機械メーカーの㈱TCK(同市東区二又瀬、小坂光二社長)と共同で、分子レベルの解析分野で運用可能な世界初のカラー電子顕微鏡を製品化した。発売は今年7月から。
同大学は2014年10月、DNA検出や免疫組織の化学染色、疾病診断に欠かせない蛍光色素を活用した医療診断技術の向上を目的に「医療診断技術開発センター」を開設。16年3月には蛍光色素を用いて7千倍の高倍率でカラー画像が得られる世界初のカラー電子顕微鏡を開発し、以降、磯部所長を中心に自ら開発した国産初となる免疫染色用蛍光色素「Fluolid(フルオリッド)」の性能強化、それに伴うカラー蛍光電子顕微鏡の開発、がん診断などの疾病診断アプリケーションの開発を手掛け、今回実用化にこぎつけた。
カラー電子顕微鏡の名称は「FST‐1000」。同顕微鏡はカラー画像が得られる光学式顕微鏡と走査型電子顕微鏡を組み合わせ、それぞれで撮影した画像を合成処理する「相関電子顕微鏡」方式を採用しているのが特徴。また、試料搬送システムを開発・導入したことで専門オペレーターを介さず、誰でも操作可能となっている。同顕微鏡と同蛍光色素を併用することで、高倍率カラー画像の継続観察が可能となることで、「例えば病理診断において、細胞を染色し分子レベルで観察することで、がんを未病レベル同等で超早期発見ができるなど、先端医療診断領域での活用が見込める」としている。
同製品の標準価格は6千万円(光学式顕微鏡、相関顕微鏡、蛍光色素のセット価格)で、納品に要する期間は約6カ月。同大学では「今後、2万倍対応の蛍光電子顕微鏡と蛍光色素を商品化して高度な分析要求に応えるとともに、継続して機能強化を進め、基礎研究や臨床データ解析の高度化に貢献していく」と話している。