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コロナ関連融資、全国トップクラスの実績   西日本FH・谷川社長


実行金額は約6千億円に

㈱西日本フィナンシャルホールディングスの谷川浩道社長(西日本シティ銀行頭取)はこのほど、本誌新年号インタビューに応じ、「(2020年は)新型コロナ対応で、地域金融機関としての使命を再認識した1年だった」と振り返り、取引先へのデジタル化対応などの支援を加速させていきたいと話した。主なやり取りは次の通り。

―2020年を振り返って。

谷川 新型コロナ対応に追われた年であり、地域金融機関としての使命を再認識した年だった。つい先ごろまで九州経済の強みとされてきた旺盛なインバウンド消費や好調な自動車関連産業が、コロナで大きなダメージを受け、地域全体に大きな影響が及んだ。ここ5年程の間、活況を呈していたインバウンド関連では、いまやクルーズ船の寄港が全く見られてないほか、空港の国際線もしばらく閉鎖され、国内線も力強さに欠ける状態が続いている。また、鉄道も本格的な回復には至っていない。

一方で、一時期は激しく落ち込んでいた自動車関連産業は回復基調に戻っている。輸出先の中国経済が回復したからで、自動車に次ぐ主要産業の半導体も底堅く推移している。年末年始のGoToキャンペーン停止によって観光関連産業が苦境に追いやられる中、製造業は何とか持ち直しているというのが現状。今回のコロナ禍で、国内のみならず、世界経済の動きも注視していかなければいけないことを改めて実感した。

―コロナ禍で新規の融資が増えたのではないか。

谷川 確かに増えた。西日本シティ銀行のコロナ関連融資の実行金額はこれまでに、6千億円近くに上っている。貸出先は1万8千先弱で、うち6千先が新規となる。メガバンクも含めて全国トップクラスだと自負している。お客さまから、中小企業融資を得意とするこれまでの実績を改めて評価していただいた証ととらえている。

―国の緊急経済対策による資金繰り支援が効果を上げているのではないか。

谷川 確かに政府の信用保証などによって、これまでは十分な資金供給ができたと思う。コロナ禍によって、どれだけ資金が焦げ付くのか見えにくい部分はあるが、下期に入っても資金繰りを原因とした倒産は少ないようだ。ただ、現状を見ると、倒産前に廃業を選ぶケースも増えているような印象も抱く。例えば高齢になった経営者が、コロナ禍で「いまさら借金などしたくない」、「これが潮時かな」と止めてしまう。技術力や収益力のある事業者までが退場していくのは地域経済にとって大きな損失だ。私たちは、そうした時代を避けるためにM&Aや事業承継、ビジネスマッチングなどを通じて、取引先の支援に最善を尽くしていきたい。

―「地域の元気を創造する」をテーマにした経営計画がスタートしている。デジタル化への対応は。

谷川 取引先のデジタル化を支援する取り組みを本格化させている。特にコロナ禍でニーズが高まっていることを背景に、10月に西日本シティ銀行のデジタル戦略部に支援チームを発足させた。また、法人向けのデジタルチャンネルとして「西日本FH Big Advance」を導入している。これは全国の参加金融機関と連携し、お客さまのビジネスマッチングを支援するほか、補助金や助成金などの情報を提供するもの。11月末現在で約1千社が契約している。12月には残高照会などの機能を備えた法人版プラットホームを発足させた。九州の金融機関では初めての取り組みで、今後、オンライン融資などさまざまなコンテンツを順次加えていく。

一方、業務革新の一環でグループ内部におけるデジタル化も着実に進めている。例えば営業店へのタブレット端末の導入によって、融資などの申し込み書類の電子化や押印の省略なども実現する。そのほか、行内業務を取り扱うグループウェア・パワーエッグの導入により、決済などの事務手続きによるペーパーレス化もかなり進んでいる。

―個人向けのスマホアプリサービスについて。

谷川 サービス開始以降、次々と機能を追加している。ローン商品の申し込み手続きをはじめ、投資信託の口座開設もアプリ上で完結出来、NISA、積み立てNISA口座の同時申し込みも可能になった。20年度中には家族見守りサービス機能も追加する予定。ATMで現金を引き出す以外、ほとんどの作業をスマホ上で完結できる点が大きな特徴だ。サービス開始時のキャッチフレーズは「スマホの中にも通帳を」だったが、今では「スマホの中に銀行を」というレベルまで機能が向上している。

―創業支援の取り組みは。

谷川 支援先数は右肩上がりで伸びている。20年度上期は前年同期の1・7倍の3623先、融資金額は約5%増となっている。福岡市と北九州市に設けているNCB創業サロンも累計で1万人近くに達している。コロナ禍でウェブを通じた融資相談尾件数も実施しており、9月にはスタートアップ企業を対象にしたオープンイノベーション型のビジネスコンテストも実施した。

―21年3月期の見通しは。

谷川 収益は全体として計画比に比べて上振れ基調だが、マイナス金利の影響や経済情勢などを総合的に勘案し、少し厳しめの予想を立てている。例えば非金利朱駅は前期比14億円減の87億円を予想している。信用コストについては、引き続き経済情勢に不透明感があることなどを考慮し、引き当てを増やす方向で検討している。

2020年12月29発行