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コロナ禍でも海外エネルギー事業など着実に推進 九州電力


マイクログリッド事業で米国ベンチャーと戦略提携

九州電力㈱(池辺和弘社長)が、コロナ禍でも海外関連事業を着実に推進していることが同社関連事業部門への取材で分かった。
現在、九電が海外展開している事業は海外エネルギー事業と都市開発事業の2つの分野。2030年におけるグループの経常利益を2018年から18年までの3カ年平均730億円の約2倍に引き上げることが盛り込まれている「九電グループ経営ビジョン2030」でも収益の大きな柱と位置付けられている。30年の持分出力としては現行の約2倍にあたる500万kWを目標に掲げている海外エネルギー事業は、各地での発電所建設や運営に参加するIPP事業、離島など基幹送電系統に接続されていない地域でディーゼルや太陽光発電などの分散電源と蓄電池を組み合わせて電力を供給するマイクログリッド事業、海外コンサルティング事業の3つに分かれているが、海外渡航が制限される現在でもオンラインなどを活用し、プロジェクトを順次進めている。IPP事業では6月1日付で、九電グループの㈱キューデン・インターナショナルと西日本技術開発㈱が地熱技術サービス事業を展開する米国・サーモゲム社を買収、海外における地熱発電事業のさらなる強化に向けた取り組みを進める。サーモゲム社は現在、九電が参画する世界最大級の地熱発電事業・インドネシアサルーラ地熱IPPプロジェクトでも井戸掘削工事中の流速測定や試験サービスなどで実績がある。マイクログリッド事業では1月8日付で、㈱キューデン・インターナショナルがフィリピンのパワーソース社がパラワン島やセブ島で実施しているマイクログリッド事業への参画を発表。九州で培ってきた離島での電力供給と再生可能エネルギー導入の知見を生かし、九電グループでは初の海外離島向け電化事業をスタートさせている。また、9月には米国のベンチャー企業・エナネット社と戦略的パートナーシップを締結、エナネット社がアジア、オセアニア、中南米カリブ海などで商工分野の顧客向けに開発を手掛けている地産地消型電力網の供給構築に取り組む。そのほか、海外コンサルティング事業では3月にキューバ、4月にはケニアのコンサル案件をJICA(国際協力機構)から受託。キューバでは政府と電力公社が進める再生エネルギー導入に向けた電力セクターマスタープランの策定、ケニアではIoTを活用した地熱発電所の運営維持能力向上を強化するプロジェクトのコンサルティングを実施する。
国際室の古賀裕之国際総括グループ長は「目標である持分出力500万kWを達成するにはコロナ禍でも投資開発を進めなければならない。オンラインなどを活用し、順次プロジェクトを進めている」とした上で、「コロナの影響で経済活動の縮小による電力需要の一時的な落ち込みはあるものの、中長期的には影響はない」としている。
現在、九電では海外駐在員12人のうち、一時退避していた一部の駐在員については現地の安全が確保されていることを条件に順次、再赴任させている。

米国・アトランタの複合開発PJは来年4月に完成

海外エネルギー事業とともに海外事業として力を入れている都市開発事業では、昨年12月に初の海外不動産事業として参画している複合開発プロジェクトが当初の計画通り進んでおり、来年4月には完成する。
同プロジェクトは九電の現地法人・Kyuden Urban Developmentが、三菱商事㈱の現地子会社・Diamond Realty Investment・inc・と共同でジョージア州・アトランタの複合開発プロジェクトに参画、開発面積4万㎡のうち、木造5階建ての賃貸住宅を設置するもの。現在、24時間体制で工事の進ちょく状況がモニタリングされており、現地との打ち合わせはオンライン会議によって行われ、建物の輪郭も見え始めているという。
都市開発事業本部開発計画グループの畠山隆登グループ長は「コロナの影響が懸念されたものの、計画通り来年4月には竣工する予定」と説明、「海外で実績を積み、福岡や九州にもフィードバックできるようなビジネスモデルを構築していきたい」と今後の展望を述べた。

2020年11月3日発行