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「令和ブーム」享受もコロナ響き減収減益  西日本鉄道・倉富純男社長


2福ビル街区3棟一体開発本格化

西日本鉄道㈱(福岡市博多区博多駅前3丁目、倉富純男社長)は本誌9月号のインタビューに応じ、新型コロナウイルスによる業績面の影響や天神エリアの再開発などについて次のように話した。
―新型コロナウイルス感染症拡大による各事業の影響について。
倉富 当社は人が動いてこその事業ばかりですので、全てのセグメントで大きな打撃を受けています。コロナ禍となった3月から約3カ月はバス、鉄道など運輸業の収益は移動需要が縮小した影響などで対前年の半減といった状況です。
このほか、ホテル関連は対前年同期比9割減という壊滅的な打撃です。一方、在宅需要もありスーパーマーケットの西鉄ストアはなんとか踏み止まっています。物流は当初は完全に止まっていた部分もありますが、コロナの中でも物は動くため、思ったほどの影響はありませんでした。住宅事業はモデルルームを一時閉館していたこともあり、分譲販売区画数の減少に繋がりました。
福岡空港は民営化から2年目ですが、こちらも壊滅的な状況で、我慢の時期が続きます。福岡空港に活気がないときは福岡の経済そのものがダメな時ともいえるでしょう。これから少しずつビジネス需要が動き出すのではないかと期待しているところです。
―このような危機的状況は初めての経験では。
倉富 もちろんです。3月には創業後かつてない危機になるかもしれないと予測し、今年度の投資計画を急きょ見直しました。安全面に関わる設備投資や「福ビル街区建替プロジェクト」など計画発表済みの大型プロジェクトへの投資を除き、約300億円の投資を「凍結」しました。
さらに、今年度の予算を見直し、約150億円規模のコストカットを行う予定です。今後のコロナウイルス感染の状況により、更なる投資の抑制や年度内の予算を改めて見直す必要があると考えています。
―資金調達などは。
倉富 5月上旬に200億円の無担保社債を発行し、コミットメントライン(融資枠)を250億円に設定しました。今後も感染流行の第2波、第3波と広がれば、その都度資金調達が必要になりそうです。
―今後、コロナとどのように向き合っていきますか。
倉富 今回のような感染症が広まると、事業の多くがほとんど機能しなくなります。その中で当社が生き残るにはどうしたらいいか。3密にならない環境で、福岡ならでは新たな取り組みができればと思います。
その中で例えば、リゾート地など環境のよい場所で休暇を兼ねリモートワークを行う労働形態「ワーケーション」向けの住宅、オンラインで仕事をする人向けに住居併用型、ビジネス利用向けのロングステイ型など、新様式に対応した新種のホテルなど十分可能と考えています。
―5月にはタイ・バンコクで「ソラリア西鉄ホテルバンコク」(263室)をオープンされました。稼働状況は。
倉富 日本人観光客をターゲットにしたホテルですので、国際便が飛んでいない今、ほとんど宿泊客がいない状況です。
それでも、タイは7月1日から入国制限が一部緩和されました。入国の際には一部を除き、タイ政府代替検疫施設(ASQ)で14日間の隔離が義務付けられていますが、このASQに当ホテルが日系ホテルで初めて認定されました。隔離となった人の受け皿として、現在多くのご予約を頂いています。
―「福ビル街区建替プロジェクト」では、天神ビブレ、天神コアが閉館。いよいよ3棟一体開発へ工事が本格化します。
倉富 当初の計画通りホテル、オフィス、商業を兼ねた地上19階、地下4階建て、延べ床面積約13万8千㎡の天神では最大級の複合ビルを建設します。2024年夏に開業予定で計画しているので、ちょうどフランス・パリ夏季五輪が開幕するタイミングになればと考え、コロナからの復興需要を取り込んでいきたいです。
―コロナの影響もあり在宅勤務のニーズが高まる中、特にオフィスはその在り方が見直されています。
倉富 各種設備に最先端機能を取り入れコロナにも対応したビルにしたいと考えています。そうすることで既存のオフィスよりも新たなオフィスビルに入居する方がチャンスと思ってもらいたいです。
コロナ感染拡大によって価値観が多様化しています。特に在宅勤務が世に浸透してからは「必ずしも東京に住まなくてもよいのでは」いう雰囲気が国内でより強まり、ローカルに視線が集まる時代になっているように感じています。だからこそ、コロナ時代において福岡・天神を国内で最も選ばれる街にしなければなりません。
―4月には天神エリアの再開発を担う専門部署「天神開発本部」を新たに立ち上げました。その狙いとは。
倉富 これまで「都市開発事業本部」が天神を含めたさまざまなまちづくりを担ってきました。今回、天神に特化した部署として分離させることで、さらに天神全体のまちづくりを推進させる狙いです。
天神では現在、福ビル街区建替プロジェクトの隣接地で「天神ビジネスセンター」の建設が進んでおり、そのほか「ヒューリック福岡ビル」など複数のオフィスビルの建替や、正式発表されていない再開発案件もありますが、それらはいずれも明治通りを中心としたものになりそうです。まずはこの明治通り沿いを中心に天神のまちづくりを新しい部署でより加速させたい考えです。
―来年4月には、福岡市博多区東光2丁目で「博多国際展示場&カンファレンスセンター」が開業します。予約状況は。
倉富 コロナ禍で予約の受付が始まりましたが、まだ若干程度ですね。予定通りあと半年以上先の開業予定ですが、出鼻をくじかれている状況です。展示場は密になりがちです。現在工事は中盤ですが、できるだけ対策をできるようにしているところです。

2020年9月1日発行